ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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お盆

いちにちめ、さん

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低周波治療器を改造したような、弱い電流を流して内臓を直接刺激する機械。箱型のそれと黒いコードで繋がった貼るカイロのようなものは俺の下腹に左右対称に二枚貼られている。

「じゃあ僕もう寝るね、おやすみ」

「……おやすみなさい」

雪兎はベッドへ向かう前に機械を弄り、貼るカイロのようなものから俺の内臓へ弱い電流を送った。

「……っ、ん……」

細い針が身体を貫くような感覚と共に筋肉が勝手にぴくぴくと動く。電流は前立腺を貫いてはいるが、威力も頻度も俺を絶頂へ導いてくれるような刺激ではない。

「は、ぁ……」

生物の身体は電気信号で動いているのだと聞く。俺自身はやったことはないが学校では解剖したカエルに電気を流して足を動かす実験をやるのだと聞く。
俺の下腹が勝手に痙攣するのはそういうことなのだろう、自分の身体が自分の意思に関係なく動くのは気分が悪い。

「んっ……!」

俺の身体が一部とはいえ俺のものでなくなっている。雪兎が用意した機械に支配されている。雪兎に拘束され雪兎に微弱な快感を与えられ続けている。

「は、ぁ……ユキ様、ユキ様ぁん……ふ、ふふ……」

車と山道という心身共に疲れるものを乗り越えて帰ってきたのに、上等なベッドで同衾させてもらえず拘束されて電流責め。酷い扱いに興奮してしまう。

「はぁーっ……ぁあ……はぁ……」

俺の暗所恐怖を気遣って雪兎はオレンジ色の弱い灯りをつけっぱなしにしてくれている。その光が俺の濡れた陰茎をてらてらと淫靡に輝かせる。

「んっ……! く……ふ、ぁ……」

眠いのに眠れない、眠ってしまえそうな微弱な快楽なのに、興奮してしまって眠れない。

「はぁ……はぁっ、ぁ……イき、たい……」

もっと強い電流でも、陰茎を扱く手でも、後孔を掘削する玩具でも、何でもいいから絶頂させて欲しい。腰を揺らしても足首を拘束され膝立ちを強要されている今では壁に腰をぶつけて振動の快感を得ることすら出来ない。

「ん、く、ぅう……! はぁっ、はぁ……無理だ……」

太腿を擦り合わせようと力を込めるも、足首の拘束具に繋がった鎖は短く、足を閉じることは出来ない。手首の拘束も同様に、肘を曲げることは不可能だ。

「イきたい……イきたいぃっ……ユキ様、ユキ様ぁ……」

無意味な努力に疲れると次は迷子の子供のようにすすり泣きながら絶頂を懇願した。雪兎が寝息を立てていると知っていながら、雪兎を起こさない程度の小さな声で、雪兎に聞こえていないと分かりながら雪兎好みにねだる俺はとても忠実な犬だと自画自賛した。



翌朝、雪兎にぺちぺちと頬を叩かれて目を覚ました。いつの間にか疲れが興奮に勝っていたらしい。

「おはよう、ポチ」

「ユキ様……おはよう、ございますっ……ん、ぅう……! くっ……ユキ様、ユキ様ぁ……お願いします、イかせてくださいっ……!」

眠っている間もずっと前立腺を刺激され続けたのだ、溜まった快感は絶頂するほどではないが寝起きの頭には過剰だ。

「お願いしますユキ様ぁっ、あぁんっ!」

 寝起きの目は視点すら覚束ないのに、欲は素直に絶頂を求めた。そうすると雪兎は俺の乳首をぎゅっとつねったが、絶頂はさせない絶妙な力加減だった。

「僕が昨日言ったこと覚えてるよね?」

「は、はい……」

「懇願は自由だよ、僕は受け入れないけどね」

涙ながらの懇願を却下されてこそ、懇願した意味があるというもの。俺の本気の願いを平気で踏み躙る雪兎の顔が見たくて叫んでいる節もあるのだから、焦らしてくれなくては困る。

「お腹すいたよね、ご飯持ってきてもらうね。内線かけるからちょっと待ってて」

雪兎は服も寝間着から変わっているし、髪も整えられているように見える。朝食も含め朝支度は終わっているのだろう。
主人の後に食事を許される犬扱い、たまらない。
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