ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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お盆

いちにちめ、なな

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深い赤色の蝋がポタッと太腿に落ちる。褐色肌に赤い斑点模様が描かれていく。

「熱っ、ぅあっ……あっ」

料理中に手や顔に飛んでくる油の飛沫の方が温度は高いかもしれない。けれど、一滴の油の熱はすぐに消えてしまう。一塊の蝋は違う、皮膚にしばらく熱を与え続ける。

「んんっ……! 熱っ、ぅう……」

蝋は冷えると固まって肌に張り付き、熱を失っても形を残す。

「文字書けそうだなぁこれ……やっぱり膝立ちで縛るの失敗だったかも。仰向けとかうつ伏せも試したい……一日ごとに縛り方変えるようにしようか」

「ユキ、様の……御心のままに」

「ふふっ、うん、ポチならそう言ってくれるって信じてたよ。ねぇポチ、蝋燭……どんな感じ?」

皮膚は熱を与えられた記憶を引きずる。ずっとジンジンと熱く痛み、もっと欲しいと焦がれるのだ。

「じんじんします……気持ちいいです、でも物足りない……イけません」

「ふーん? ちょうどいい感じだね。にしても……太腿大怪我したみたいだねぇ、ポチ」

「え……? あぁ、蝋が血に見えますか」

「色んな色買ってあるからポチの身体をキャンバスにポチをアート作品にしてあげたりも出来るわけだけど……今日は初めてだから、深い赤色で鮮度の悪い血を表現してみたよ!」

初めてだから──とはセリフが繋がらない気がする。

「鮮度悪いんですね……」

「流れたての血の色ってあんまり血感ないでしょ?」

「まぁ、確かに……そうかもしません。こんなに大量の血を流すことはまずありませんし……このくらいの色の方がグロいですね」

「ねー、ポチが血まみれになってるのを疑似体験出来るんだよ。手を上にして縛ってあるから何かこう……敵対組織に捕まって拷問中! みたいな感じあるよね」

誘拐未遂や暗殺未遂に遭った子供が言っていい冗談じゃないな。

「熱っ……! ひぅっ……!」

「正直に全て話せば解放してやると言っているんだ。さぁ、吐け!」

突然ロールプレイが始まった。合わせなくては。

「俺は……吐かない。忠誠を誓ったんだ。好きなだけ痛めつけるといい、あんたの体力と時間の無駄だがな……」

「……ふふふっ! かぁっこいーい! イイねイイね、すっごくイイよポチぃ。ご褒美に、もっと気持ちいいとこに垂らしてあげるね」

褒めてもらえて浮かれた気持ちは、俺の前に膝立ちになった雪兎が俺の陰茎を握ったことで沈む。いや、期待と恐怖がむくむくと膨れ上がる。

「ユ、ユキ様……そこは流石にっ」

ポタッ……と亀頭に蝋が落ちた。腹への鞭打ちも太腿への蝋燭責めも全て忘れてしまうほどの熱い痛みが与えられた。

「あっ……つぅっ!? 熱いっ、痛いっ、ひぃいいっ……! ぅうっ…………はぁっ、はぁっ……んひぃいいっ!?」

熱が冷めてジンジンと痺れるような痛みだけが残り、それに耐えつつ息を整えていると二滴目がまた亀頭に落ちる。三滴目、四滴目──亀頭が深い赤色に覆われていく。

「ぁああっ! い、だっ……ひぃいっ! 熱いっ、熱い、ぅうぅ…………ぅあぁっ!?」

「……ねぇポチ、これ、コーティングしちゃおっか」

裏筋を撫でながら雪兎は「いいことを思いついた」と表情で話した。俺の返答は決まっている、さっきと同じだ。

「ユキ様、の……御心のままに」

痛みによる悦びで緩んだ顔で忠誠を誓うと、雪兎はまた蝋を俺の陰茎に垂らした。
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