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お盆
せんじょう、なな
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前歯、犬歯、奥歯……それらの歯の隙間はもちろん、裏側から歯茎まで精液を染み込ませたブラシで磨かれた。
「……っ、ふ……ぅ、あっ、ぁ」
「下顎の歯は全部綺麗になったね、真っ白だよ」
歯の色の話か? 雪兎の精液と俺の唾液の混合物である泡立った白濁液の話か?
「下唇の裏、もう少し磨いておこうか」
絶妙な力加減で唇の裏から歯茎との境目まで擽るように擦っていく。
「ぁ、うっ……うぅ」
「上やるよ」
コップに注いだ精液を絡め直したブラシが上顎の歯を磨く。前歯、犬歯、奥歯……丁寧に丁寧に、お気に入りの石を磨く子供のように夢中な瞳が俺の口内を見つめている。
「歯茎と唇の裏と……うん、綺麗になったね。横やるよ」
頬の内側を歯ブラシで擦られる。この刺激は懐かしい、子供の頃は意味もなく歯ではないところを歯ブラシで擦ったものだ。
「痛くない?」
「ぁう」
「そっか……ふふ、可愛いね。僕ね、ポチのお世話するの好きだなぁ」
サディストは人を虐げるのが好みの性悪というイメージがあるかもしれないが、プレイを楽しむ程度の軽いSはむしろ世話好きで気遣いの出来る社交的な人間だ。
マゾヒスト……つまり俺はその逆、Mは尽くす側だというイメージがあるが、虐げてもらっていると思えば尽くされる側。事実俺は世話されるのが好きだ。
「ぉえ、ぇわ……ぁえぅぉ、うぃ、えぅ」
「ん? ごめんね、よく分かんないや。僕も雪風みたいな力がよかったかな……ううん、それじゃさっき滝壺に引っ張り込まれかけたポチ助けられなかったもんね、僕の力はこれでいいんだ」
「ぅ」
雪兎に世話をされると雪兎に生かされていると実感出来る。彼が居なければ俺は何も出来ない、彼に支配されている、自分の主導権が自分にない感覚に安らぐのは全ての人間が無意識に持つと言われる胎内回帰願望が満たされるからだろうか。
「……うん、ほっぺたの裏も綺麗になったよ。次は上顎かな? キスの時とかここ舐めてあげるとポチぴくぴくするよね、性感帯? ふふ……優しくしてあげるから、気持ちよくなっていいよ」
拘束され、口を開かされ、注がれる愛情に身を任せる。
狭い胎の中で丸まり、栄養を送られながらまどろむ。
ほら、今の状況と母の胎内は似たようなものだろう?
「ぁ、うっ……んぅっ、ん、んんっ……」
ブラシが上顎を擦る、ゾクゾクとした快感に身体が勝手に震える。上顎の微かな凹凸まで丁寧に擦るのは俺の中に他人の血を残さないためだろう、雪兎の独占欲が嬉しい。
「……目のとろん具合が増してきたね、やっぱりここ性感帯なんだね。可愛い顔してるの自分じゃ分かってないでしょ、こんな顔他の人に見せちゃダメだよ」
「ゆぃ、ぁ……ぁえ、ぇよ」
「…………ユキ様だけ? って言った? ふふっ、そうだよ、僕だけ。僕だけ……ふふふっ」
俺に欲情するような異常性癖を持っているのは雪兎だけだろうと言ったのだが、まぁ、たとえ今開口具が外されても訂正はするまい。
「上顎……完了! よし、次はベロだね。ポチって確か舌も性感帯だったよね?」
粘着質な精液は歯ブラシが口内から出た後も上顎にへばりついたまま、匂いによる圧倒的な存在感を放つ。
「ぇんぶ……」
「全部? 何が?」
「ゆぃ、あ……ぃ、ぁえぅおこ……れんぶ、ひもひぃ」
「…………えへへへへ、ポチは本当に可愛いなぁ……好き、ポチ、大好きだよ」
目を細めて頬をほんのり赤く染めて、緩んだ笑顔を浮かべるあなたの方が可愛らしいですよ──
「ふふふ……ほら、舌出して」
「ぇう」
──なんて言えたらいいのに。
舌先をつままれて舌を引っ張り出されながら、言葉を封じる開口具を疎ましく思った。
「……っ、ふ……ぅ、あっ、ぁ」
「下顎の歯は全部綺麗になったね、真っ白だよ」
歯の色の話か? 雪兎の精液と俺の唾液の混合物である泡立った白濁液の話か?
「下唇の裏、もう少し磨いておこうか」
絶妙な力加減で唇の裏から歯茎との境目まで擽るように擦っていく。
「ぁ、うっ……うぅ」
「上やるよ」
コップに注いだ精液を絡め直したブラシが上顎の歯を磨く。前歯、犬歯、奥歯……丁寧に丁寧に、お気に入りの石を磨く子供のように夢中な瞳が俺の口内を見つめている。
「歯茎と唇の裏と……うん、綺麗になったね。横やるよ」
頬の内側を歯ブラシで擦られる。この刺激は懐かしい、子供の頃は意味もなく歯ではないところを歯ブラシで擦ったものだ。
「痛くない?」
「ぁう」
「そっか……ふふ、可愛いね。僕ね、ポチのお世話するの好きだなぁ」
サディストは人を虐げるのが好みの性悪というイメージがあるかもしれないが、プレイを楽しむ程度の軽いSはむしろ世話好きで気遣いの出来る社交的な人間だ。
マゾヒスト……つまり俺はその逆、Mは尽くす側だというイメージがあるが、虐げてもらっていると思えば尽くされる側。事実俺は世話されるのが好きだ。
「ぉえ、ぇわ……ぁえぅぉ、うぃ、えぅ」
「ん? ごめんね、よく分かんないや。僕も雪風みたいな力がよかったかな……ううん、それじゃさっき滝壺に引っ張り込まれかけたポチ助けられなかったもんね、僕の力はこれでいいんだ」
「ぅ」
雪兎に世話をされると雪兎に生かされていると実感出来る。彼が居なければ俺は何も出来ない、彼に支配されている、自分の主導権が自分にない感覚に安らぐのは全ての人間が無意識に持つと言われる胎内回帰願望が満たされるからだろうか。
「……うん、ほっぺたの裏も綺麗になったよ。次は上顎かな? キスの時とかここ舐めてあげるとポチぴくぴくするよね、性感帯? ふふ……優しくしてあげるから、気持ちよくなっていいよ」
拘束され、口を開かされ、注がれる愛情に身を任せる。
狭い胎の中で丸まり、栄養を送られながらまどろむ。
ほら、今の状況と母の胎内は似たようなものだろう?
「ぁ、うっ……んぅっ、ん、んんっ……」
ブラシが上顎を擦る、ゾクゾクとした快感に身体が勝手に震える。上顎の微かな凹凸まで丁寧に擦るのは俺の中に他人の血を残さないためだろう、雪兎の独占欲が嬉しい。
「……目のとろん具合が増してきたね、やっぱりここ性感帯なんだね。可愛い顔してるの自分じゃ分かってないでしょ、こんな顔他の人に見せちゃダメだよ」
「ゆぃ、ぁ……ぁえ、ぇよ」
「…………ユキ様だけ? って言った? ふふっ、そうだよ、僕だけ。僕だけ……ふふふっ」
俺に欲情するような異常性癖を持っているのは雪兎だけだろうと言ったのだが、まぁ、たとえ今開口具が外されても訂正はするまい。
「上顎……完了! よし、次はベロだね。ポチって確か舌も性感帯だったよね?」
粘着質な精液は歯ブラシが口内から出た後も上顎にへばりついたまま、匂いによる圧倒的な存在感を放つ。
「ぇんぶ……」
「全部? 何が?」
「ゆぃ、あ……ぃ、ぁえぅおこ……れんぶ、ひもひぃ」
「…………えへへへへ、ポチは本当に可愛いなぁ……好き、ポチ、大好きだよ」
目を細めて頬をほんのり赤く染めて、緩んだ笑顔を浮かべるあなたの方が可愛らしいですよ──
「ふふふ……ほら、舌出して」
「ぇう」
──なんて言えたらいいのに。
舌先をつままれて舌を引っ張り出されながら、言葉を封じる開口具を疎ましく思った。
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