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お盆
せんじょう、じゅうに
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浴室に置かれたマットの上に四つん這いになる。マットは適度に柔らかく、硬い床に四つん這いになった時のように膝が痛くはならない。
「お尻もっと上げられる?」
「はい……」
肘を曲げて顎をマットに触れさせ、腰を高く持ち上げる。猫が伸びをするような姿勢だ。雪兎が持ったシャワーヘッドからお湯が降り注ぎ、敏感になった肌を叩く。
「苦しくなったらすぐ言ってね」
「は、はい……ひっ……ぁ、うっ…………入って、きてるっ……」
後孔にチューブが挿入され、ゆっくりとお湯が流し込まれる。雪兎はチューブの固定を確認するとシャワーヘッドを右手に持ち直し、俺の髪をぐっしょりと濡らした。
「……っ、あっ……」
腹に流れ込むお湯の温さ、不快さ、重さ、それに加えて小さな手で頭を洗われる快感。声を出さずにはいられない。
「ポチ、僕ね……九月になったらアメリカに行かなきゃいけないんだ。そろそろ僕と同じ大学の学生達の思想調査が終わるんだって言ってた」
「え……もう、ですか?」
「帰ってくる時嫌だって駄々こねたけどさ、また行けって言われるのもやだった。ワガママだね、僕って」
深いため息をついた雪兎は俺の頭を洗う手を止め、蛇口を閉めてチューブからゆっくりと俺の体内に注がれるお湯を止めた。
「……着いた後、二ヶ月くらいはポチ呼んじゃダメって。一人に慣れろ、友達作れって」
雪兎は再び深いため息をつくと気だるげに俺の尻を撫でた。触れられたところからゾワゾワと快感が広がり、泡まみれのまま放置された髪から垂れてくるシャンプーに関係なく目を閉じる。
「…………ムカつく」
「んっ……!」
小さな手では俺の大きな尻を鷲掴みにしても掴める肉は僅かなものだ。そのせいで雪兎に強く尻を揉まれると少し痛くて、気持ちいい。俺達は体格差すら相性がいいらしい。
「なんで一人に慣れなきゃいけないの」
尻から手が離れたかと思えば、パンっと尻を叩かれる。
「ひぁんっ!?」
痛みで下腹に力が入ったのか、後孔から白濁液混じりのお湯がぴゅっと吹き出す。
「雪風みたいに会社に泊まらせる気なんだろうね、でもポチもずっと一緒に居てくれるよね、僕のペットなんだから一緒に泊まってくれなきゃやだよ」
「はいっ、俺はユキ様といつでも一緒に……んぁんっ! ひぁっ!? ゃあんっ!」
雪兎の留学には着いて行けないのだから、俺は今嘘をついたことになる。それを咎めるように強く三発の平手打ちを受け、マットに爪を立てて痛みと快感に抵抗する。
「…………友達なんか出来る訳ない」
「ゆ……ユキ様、なら、出来ますよ。犬好きの方達とだって仲良くしていたじゃありませんか」
「みんな将来のために僕に媚びたいだけだよ」
雪兎は俺の尻を叩くのをやめ、唐突に自分の右足首から下だけを洗った。指で足の裏をなぞり、顔を近付けて匂いを嗅いだ後、雪兎は右足を俺の顔の横に置いた。
「……こんなふうに足を差し出して舐めろって言ったらみんな舐めるよ。でもね、僕、媚びられるの嫌いなんだ。反吐が出る。気色悪くて仕方ない」
雪兎の爪先が頬に沈む。顔を踏まれるという屈辱的な行為に俺は静かに興奮し、お湯に侵された腸を震わせた。
「ポチは違うよ? ポチに媚びられるのは好き、大好き、可愛くって仕方ない。なんでだろ……求めてるものの違いかなぁ、大切だもんねそういうの」
雪兎は俺の頬を踏むのをやめて俺の口元に爪先を浮かせた。求めを察し、足の指を口に含む。
「他の連中が欲しいのは自分の利益で……ポチもまぁそうだけど、ポチは僕に可愛がって欲しくて媚びてるんだもんね。揉み手する人間は不愉快だけど、お腹見せて撫でてアピールするワンちゃんは可愛いの、当たり前だよね」
足の親指をちゅうちゅうと吸い、足の指の股に舌を這わせ、足の裏にキスをする。シャンプーを嫌って目を閉じたまま雪兎の足を慈しみながら、不意に思い出す。映画などで見るマフィアのボスは愛犬家や愛猫家が多いことを。
「……他の人に足舐められたら消毒するし、そいつは絶対いい扱いなんてしてやらない。でもポチはいいよ、僕の足舐めてるの自体がご褒美みたいなものなんだろ? 本当に可愛いね」
人間の悪意を散々見てきて辟易して、犬や猫の本能的な生き様が純粋に思えるのだろう。欲のままに生きているとも言えるのに、人間と違って可愛らしいのだ。
雪兎はマフィアのボスなんかじゃないけれど、きっと同じなのだろう。金も地位も名誉も求めず愛と性欲と忠誠心だけに生きる俺がペットとして好きなのだ。
「お尻もっと上げられる?」
「はい……」
肘を曲げて顎をマットに触れさせ、腰を高く持ち上げる。猫が伸びをするような姿勢だ。雪兎が持ったシャワーヘッドからお湯が降り注ぎ、敏感になった肌を叩く。
「苦しくなったらすぐ言ってね」
「は、はい……ひっ……ぁ、うっ…………入って、きてるっ……」
後孔にチューブが挿入され、ゆっくりとお湯が流し込まれる。雪兎はチューブの固定を確認するとシャワーヘッドを右手に持ち直し、俺の髪をぐっしょりと濡らした。
「……っ、あっ……」
腹に流れ込むお湯の温さ、不快さ、重さ、それに加えて小さな手で頭を洗われる快感。声を出さずにはいられない。
「ポチ、僕ね……九月になったらアメリカに行かなきゃいけないんだ。そろそろ僕と同じ大学の学生達の思想調査が終わるんだって言ってた」
「え……もう、ですか?」
「帰ってくる時嫌だって駄々こねたけどさ、また行けって言われるのもやだった。ワガママだね、僕って」
深いため息をついた雪兎は俺の頭を洗う手を止め、蛇口を閉めてチューブからゆっくりと俺の体内に注がれるお湯を止めた。
「……着いた後、二ヶ月くらいはポチ呼んじゃダメって。一人に慣れろ、友達作れって」
雪兎は再び深いため息をつくと気だるげに俺の尻を撫でた。触れられたところからゾワゾワと快感が広がり、泡まみれのまま放置された髪から垂れてくるシャンプーに関係なく目を閉じる。
「…………ムカつく」
「んっ……!」
小さな手では俺の大きな尻を鷲掴みにしても掴める肉は僅かなものだ。そのせいで雪兎に強く尻を揉まれると少し痛くて、気持ちいい。俺達は体格差すら相性がいいらしい。
「なんで一人に慣れなきゃいけないの」
尻から手が離れたかと思えば、パンっと尻を叩かれる。
「ひぁんっ!?」
痛みで下腹に力が入ったのか、後孔から白濁液混じりのお湯がぴゅっと吹き出す。
「雪風みたいに会社に泊まらせる気なんだろうね、でもポチもずっと一緒に居てくれるよね、僕のペットなんだから一緒に泊まってくれなきゃやだよ」
「はいっ、俺はユキ様といつでも一緒に……んぁんっ! ひぁっ!? ゃあんっ!」
雪兎の留学には着いて行けないのだから、俺は今嘘をついたことになる。それを咎めるように強く三発の平手打ちを受け、マットに爪を立てて痛みと快感に抵抗する。
「…………友達なんか出来る訳ない」
「ゆ……ユキ様、なら、出来ますよ。犬好きの方達とだって仲良くしていたじゃありませんか」
「みんな将来のために僕に媚びたいだけだよ」
雪兎は俺の尻を叩くのをやめ、唐突に自分の右足首から下だけを洗った。指で足の裏をなぞり、顔を近付けて匂いを嗅いだ後、雪兎は右足を俺の顔の横に置いた。
「……こんなふうに足を差し出して舐めろって言ったらみんな舐めるよ。でもね、僕、媚びられるの嫌いなんだ。反吐が出る。気色悪くて仕方ない」
雪兎の爪先が頬に沈む。顔を踏まれるという屈辱的な行為に俺は静かに興奮し、お湯に侵された腸を震わせた。
「ポチは違うよ? ポチに媚びられるのは好き、大好き、可愛くって仕方ない。なんでだろ……求めてるものの違いかなぁ、大切だもんねそういうの」
雪兎は俺の頬を踏むのをやめて俺の口元に爪先を浮かせた。求めを察し、足の指を口に含む。
「他の連中が欲しいのは自分の利益で……ポチもまぁそうだけど、ポチは僕に可愛がって欲しくて媚びてるんだもんね。揉み手する人間は不愉快だけど、お腹見せて撫でてアピールするワンちゃんは可愛いの、当たり前だよね」
足の親指をちゅうちゅうと吸い、足の指の股に舌を這わせ、足の裏にキスをする。シャンプーを嫌って目を閉じたまま雪兎の足を慈しみながら、不意に思い出す。映画などで見るマフィアのボスは愛犬家や愛猫家が多いことを。
「……他の人に足舐められたら消毒するし、そいつは絶対いい扱いなんてしてやらない。でもポチはいいよ、僕の足舐めてるの自体がご褒美みたいなものなんだろ? 本当に可愛いね」
人間の悪意を散々見てきて辟易して、犬や猫の本能的な生き様が純粋に思えるのだろう。欲のままに生きているとも言えるのに、人間と違って可愛らしいのだ。
雪兎はマフィアのボスなんかじゃないけれど、きっと同じなのだろう。金も地位も名誉も求めず愛と性欲と忠誠心だけに生きる俺がペットとして好きなのだ。
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