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雪の降らない日々
おとーさんと、いち
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叔父と共に怪異討伐の仕事をした翌朝、雪風からメールがあった。どうやら昨日の一件を聞いて俺に会いたくなったらしい、祖父には既に話を通して車も用意してくれているようなので、俺は朝食を食べた後すぐに雪風が居る会社へ向かった。
「相変わらずの厳重さだな……」
地下深くに置かれた社長室と地上を繋いでいるだけのエレベーターに乗り、長い移動時間の暇を潰すように呟いた。
昨日、仕事のすり替えによって命を狙われたのは叔父なのだろうか。いや、叔父は一般の住宅街で普通に暮らしているのだから殺そうと思えばいつでも殺せるはず、自分のパソコンを使ってアクセスしていただろう祖父の命を狙ったのだろうか。
どちらにせよ雪風も狙われがちな身の上であることは間違いないのだから、知った当初は大袈裟とも思えた地下深くの社長室を非難する気はもうないな……なんて考えているうちに到着した。
「ゆっきかぜ~、ひーくん来ちゃったぞー……?」
扉を開けて満面の笑みを作ってみたものの、雪風は居ない。座面はひんやり冷たい黒革が張られたソファ、片付けられた上等な木製の作業机、電源が入っていないパソコン……俺は社長室に隣接した寝室に入った。
「……雪風?」
大きなベッドに座った雪風はボーッと虚空を見つめていたが、声をかけるとふにゃりと笑った。
「真尋ぉ、もう来たのか……早いな。ふわ……やばい、寝ぼけてた……」
下半身はまだ毛布にすっぽり包まれている。
「眠いのか? ちゃんと寝てるんだろうな。ったく、割とホワイト企業のくせに社長のお前だけブラックな勤務しやがって」
ベッドに腰掛けて頬を撫でると雪風は俺の手に擦り寄り、嬉しそうに微笑む。
「……クソ兄貴と仕事頑張ったんだってな」
「あぁ」
「怪我したんだって?」
「治してもらったよ」
すっかり目を覚ました様子の雪風は「そういう問題じゃない」と俺の額を指で弾いた。
「まぁ、今回は親父が詐欺に引っかかったのが悪かったっぽいからな。お前に無茶なことすんなとか言っても仕方ない。無茶しなきゃいけない状況だったんだろ? 頑張ったな、真尋」
主人である雪兎とは違い、雪風は対等な恋人だ。しかし縮めようのない歳の差が、義父と養子という関係性が、子供にするような褒め方を産む。
「……なぁ、今回命狙われたのっておじい様かな、雪凪じゃないよな」
「命狙うってほどの怪異じゃねぇだろ。クソ兄貴が結界真面目に作ったり、手巻きタバコ人数分持ってりゃどうにかなったはずだ。だからまぁ多分、嫌がらせだな。ジャブとも言う……かもな」
共に死線を超えて浅くなった気がしていた叔父との溝が深まった気がする。
「……そういえばさ、雪凪が追放されてるのって目が片方青いからなんだよな? 雪兎ちょっと目紫っぽいけど……若神子的には大丈夫なのか?」
「兄貴が家追い出されたのは金の使い込みとか麻薬作りとか俺への虐待とか単純に無能とかそういうのの積み重ねで、霊力がちょっと弱めなのはあんまり関係ねぇぞ。目がどうこうってのは会社を引っ張る力には関係ねぇからな、親父は最初兄貴に表家業を任せて俺は裏稼業専門にするつもりだったらしい」
叔父に同情したのが馬鹿らしくなってきた。
「そ、れ、よ、りぃ……そんな話しに来たんじゃないだろ真尋ぉ」
甘えるような声を出した雪風は毛布を蹴り飛ばし、スラリと長い生脚を晒した。どうやら下半身には下着以外の布をまとっていないらしい。
「今日は会議とかの仕事入れてねぇんだ。分かるだろ? 真尋ぉ」
「……あぁ」
くねくねと俺を誘った雪風の案外としっかりした肩を抱いて唇を重ねる。舌を絡めながら太腿を撫でると雪風の手は俺の股間をズボンの上からさすった。
「相変わらずの厳重さだな……」
地下深くに置かれた社長室と地上を繋いでいるだけのエレベーターに乗り、長い移動時間の暇を潰すように呟いた。
昨日、仕事のすり替えによって命を狙われたのは叔父なのだろうか。いや、叔父は一般の住宅街で普通に暮らしているのだから殺そうと思えばいつでも殺せるはず、自分のパソコンを使ってアクセスしていただろう祖父の命を狙ったのだろうか。
どちらにせよ雪風も狙われがちな身の上であることは間違いないのだから、知った当初は大袈裟とも思えた地下深くの社長室を非難する気はもうないな……なんて考えているうちに到着した。
「ゆっきかぜ~、ひーくん来ちゃったぞー……?」
扉を開けて満面の笑みを作ってみたものの、雪風は居ない。座面はひんやり冷たい黒革が張られたソファ、片付けられた上等な木製の作業机、電源が入っていないパソコン……俺は社長室に隣接した寝室に入った。
「……雪風?」
大きなベッドに座った雪風はボーッと虚空を見つめていたが、声をかけるとふにゃりと笑った。
「真尋ぉ、もう来たのか……早いな。ふわ……やばい、寝ぼけてた……」
下半身はまだ毛布にすっぽり包まれている。
「眠いのか? ちゃんと寝てるんだろうな。ったく、割とホワイト企業のくせに社長のお前だけブラックな勤務しやがって」
ベッドに腰掛けて頬を撫でると雪風は俺の手に擦り寄り、嬉しそうに微笑む。
「……クソ兄貴と仕事頑張ったんだってな」
「あぁ」
「怪我したんだって?」
「治してもらったよ」
すっかり目を覚ました様子の雪風は「そういう問題じゃない」と俺の額を指で弾いた。
「まぁ、今回は親父が詐欺に引っかかったのが悪かったっぽいからな。お前に無茶なことすんなとか言っても仕方ない。無茶しなきゃいけない状況だったんだろ? 頑張ったな、真尋」
主人である雪兎とは違い、雪風は対等な恋人だ。しかし縮めようのない歳の差が、義父と養子という関係性が、子供にするような褒め方を産む。
「……なぁ、今回命狙われたのっておじい様かな、雪凪じゃないよな」
「命狙うってほどの怪異じゃねぇだろ。クソ兄貴が結界真面目に作ったり、手巻きタバコ人数分持ってりゃどうにかなったはずだ。だからまぁ多分、嫌がらせだな。ジャブとも言う……かもな」
共に死線を超えて浅くなった気がしていた叔父との溝が深まった気がする。
「……そういえばさ、雪凪が追放されてるのって目が片方青いからなんだよな? 雪兎ちょっと目紫っぽいけど……若神子的には大丈夫なのか?」
「兄貴が家追い出されたのは金の使い込みとか麻薬作りとか俺への虐待とか単純に無能とかそういうのの積み重ねで、霊力がちょっと弱めなのはあんまり関係ねぇぞ。目がどうこうってのは会社を引っ張る力には関係ねぇからな、親父は最初兄貴に表家業を任せて俺は裏稼業専門にするつもりだったらしい」
叔父に同情したのが馬鹿らしくなってきた。
「そ、れ、よ、りぃ……そんな話しに来たんじゃないだろ真尋ぉ」
甘えるような声を出した雪風は毛布を蹴り飛ばし、スラリと長い生脚を晒した。どうやら下半身には下着以外の布をまとっていないらしい。
「今日は会議とかの仕事入れてねぇんだ。分かるだろ? 真尋ぉ」
「……あぁ」
くねくねと俺を誘った雪風の案外としっかりした肩を抱いて唇を重ねる。舌を絡めながら太腿を撫でると雪風の手は俺の股間をズボンの上からさすった。
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