ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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雪の降らない日々

おとーさんと、よん

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雪風は死んだ妻と俺を重ねてなんかいなかった。暴力的な一面を見て「嫁に似てる」と俺に惚れた最初はともかく、少なくとも今は俺自身を愛してくれている。

「ごめん……雪風、ごめん、ごめんなさい……」

叔父なんかに唆された自分が許せない。あまりにも申し訳なくて雪風の顔を見ることが出来ずに俯いていると、雪風は俺の頭を両手で掴んで無理矢理顔を上げさせ、唇を重ねた。

「んむっ……ん、ん…………雪風?」

「気にすんなよ真尋、麻紘のこと今まで黙ってて悪かったな。気にすると思ってて……実際気にしたみたいだし。俺はお前が好きだ、麻紘のことも……まぁ、そりゃな。でも別だ、別々に好き」

「…………うん、ごめん……不安になっちゃって」

死んだ妻と俺のことが別々に好きだという言葉を聞いて、俺そのものを見てくれているのだと喜ぶと同時に死者に嫉妬した。死ぬことで雪風からの愛情を永遠にし、俺に勝つことを許さないその女を妬み、恨んだ。

「お前が謝ることなんか何もねぇんだよ」

わしゃわしゃと俺の髪を掻き混ぜるように撫で回した雪風の笑顔を見て救われた気になる。俺の仄暗い感情になんて気付いていないのだろう──いや違う、雪風は心が読める。

「…………ぁ」

雪風は目を合わせることで相手の心を読める力を持っている、それを失念していた。あまりにも美しい笑顔に思わず目を合わせてしまった。
どうしよう、彼にとっての最愛の妻を、死者を憎んでしまった。どうしよう、失望されてしまう。

「愛してるぞ、真尋」

「え……?」

失望どころか、少しも嫌な顔をしていない? 目が合ったというのは俺の勘違いだったのか? 心を読まれなかったのか?
混乱する俺の両肩を掴んでベッドに押し倒した雪風は淫らな笑顔を浮かべて俺の腹にまたがり、俺の頬を撫でた。

「抱いてくれよ」

「ぁ……う、うん」

「…………あのさ、真尋」

「ん……?」

思考がまとまらず、ろくな返事が出来ない。

「俺は、嫉妬とか……いいと思うぞ? 可愛いし。お前の嫉妬深くてねちねちしたとこ好きだ。だからあんま気にすんなよ」

心を読まれていた。その上で失望されなかった。

「あぁ……敵わないなぁ」

「あれ、半勃ち? しょうがねぇなぁ」

雪風は一旦立ち上がって俺の足の上に跨り、俺の太腿を撫で、中途半端に勃っている陰茎にちゅっと唇を吸いつかせた。刺激自体は大したことはなかったが、雪風の仕草と姿に興奮し、俺の陰茎はむくむくと膨らんで起き上がった。

「んだよ勃つの早いぞ、フェラしてやろうと思ったのに」

拗ねたように言いながらも雪風の声には喜びが滲んでいる。完全に勃起した俺の陰茎に顔を寄せている雪風の鼻息がくすぐったい、匂いを嗅いでいるのか呼吸が荒い。

「……してくれよ」

腹筋に力を込めて上体を起こし、猫のように擦り寄っている雪風の頭を撫でる。

「一発くらい大丈夫だし……俺はこっちしてやるからさ」

首元からシャツの中に手を入れて胸をまさぐり、乳首を探り当ててきゅっとつまむ。

「んっ……! いいぜ、じゃあ勝負な。先にイった方が負けだ」

俺も雪風も互いに快感を与え合うのだから、気が散って愛撫に集中出来なくなっていくだろう。確かにこれは勝負だ、与えられる快感に耐えて相手に快感を与えることに集中する、忍耐力と集中力の勝負。
勝負となれば負けていられない。
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