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郊外の一軒家
すりっぷ、ご
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冷たい椅子に肌が直接触れるのが嫌で下着をくれと頼んだのに、雪兎に渡されたのはTバック。やはり椅子の座面に直接肌が触れた。
「ひぅっ……!」
ゾクッ、と悪寒が尻から背筋を通って脳天まで突き抜ける。
「大丈夫? 今度クッション用意するよ」
「布面積の多い下着やズボンを履かせてくださるという選択肢は……?」
「ポチ、お尻大きくてセクシーで可愛いくて形も肌も綺麗なんだから出してた方がいいよ」
「……タイトなズボンというのもアリだと思いますが」
「そうだね、でも今日はその気分じゃない」
気分じゃないなら仕方ないな。俺が座る時にビックリするとか腹が冷えるとかよりも、雪兎の気分が大切だ。
「美味しい?」
「はい」
「ご飯食べたらちょっとお散歩しようか」
「……へっ? あの……セッ…………いえ、何でもありません」
てっきり朝食を終えたら昼過ぎまでこのスリップを着たまま雪兎と愛を営むものだと思っていたが、散歩とは……犬耳カチューシャと首輪だけを付けて四つん這いで散歩するよりも、今の中途半端な女装のような格好で散歩する方が恥ずかしい。
「楽しみだなぁ……ふふふ」
どこをどう散歩するのだろう。街には出ないだろう、おそらく庭を一周する程度──という俺の予想は外れ、朝食を終えた俺に雪兎は黒い着物を渡した。
「一人で着れるんだよね? 僕も着替えるから一人で着てね」
戸惑いつつも白いスリップの上から黒い着物を着た。一人で帯を締め、羽織を羽織って羽織紐を結んだ。
「……肩紐大丈夫かな」
着物からスリップの肩紐がはみ出さないかと不安になり、肩をさする。鏡で確認したところ余程はだけない限り見えはしなさそうだが……それでも気になる。
「…………すごい変態だな」
黒い着流しだけなら普通の男性、その下に性的な意図を持って作られた女性物の下着が隠れているとなれば、それはもう下着だけだった頃よりも変態度合いが高い。
「お待たせ、ポチぃ」
「ユキ様……ぁ、ユキ様も和服ですか」
雪兎は白い着流しを着ていた、うっすらと若神子家の家紋が入っている。
「うん、僕和服あんまり似合わないけど……」
「そんなことありませんよ、ユキ様は何を着たって似合います。お美しいですよ」
お世辞ではない。顔立ちや体型や肌の色に合った服装なんて俺には分からない、俺にとってのファッションは顔だ。俺好みではない顔をした俺は何を着ても似合わないし、俺好みの顔をした雪兎や雪風は何を着たって似合う。あくまでも、俺にとっては。
「ありがとう。ポチも着物似合ってるよ、贈ってよかった。やっぱりポチには黒い服が似合うね」
「……今朝は白いのが似合うって言ってませんでした?」
以前は白い服には嫉妬するとも言っていたな。雪兎は気分屋だという結論をさっさと出すべきだろうか。
「赤い首輪も似合ってるよ。赤い縄で縛った時も綺麗だった、ポチは何色でも似合うの」
「それはどうも……ところで、こんな服に着替えて一体どこへ散歩するんです?」
「前にポチがこっちに来た時にさ、街に行ったでしょ? ほら、若神子グループの人達だけで運営してる街」
「あぁ……はい」
「前に行ったとことは別のところなんだけど、似たようなところ。僕が自由に出歩けるのなんてそのくらいしかないから……いいよねぇ、遊園地、動物園、水族館……一度でいいからそういうところに行ってみたいよ」
深いため息をつく雪兎に「いつか行きましょう」なんて無責任なことは言えない、犬好きの仲間だなんて言って集めた大学の者達にすら雪兎の命を狙う者が居たのだ。閉じたコミュニティすら危ういのに、そんな公共施設になんて行ける訳がない。
「………………買収しちゃう、とか」
「あははっ! 面白いこと言うねぇ、ふふふ……割といいかもね、それ」
貸切だけでは安心出来ない、職員を全て若神子グループの関係者にしても物足りない。今から向かう散歩コースだって安全かどうか分からない。万全を期すなら若神子家の者はあの山奥の邸宅を出ない方がいいのだ。
「俺をお傍に置いてくだされば、俺がお守り致しますよ」
「ポチは愛玩犬だからだーめっ」
いくら格好付けたところで着物の下にシースルーの女性物の下着を着ている変態だということに変わりはない。玩具なんて使われていないのに、羞恥心だけが膨らんで朝食の間に萎んでくれた陰茎がぴくりと震えた。
「ひぅっ……!」
ゾクッ、と悪寒が尻から背筋を通って脳天まで突き抜ける。
「大丈夫? 今度クッション用意するよ」
「布面積の多い下着やズボンを履かせてくださるという選択肢は……?」
「ポチ、お尻大きくてセクシーで可愛いくて形も肌も綺麗なんだから出してた方がいいよ」
「……タイトなズボンというのもアリだと思いますが」
「そうだね、でも今日はその気分じゃない」
気分じゃないなら仕方ないな。俺が座る時にビックリするとか腹が冷えるとかよりも、雪兎の気分が大切だ。
「美味しい?」
「はい」
「ご飯食べたらちょっとお散歩しようか」
「……へっ? あの……セッ…………いえ、何でもありません」
てっきり朝食を終えたら昼過ぎまでこのスリップを着たまま雪兎と愛を営むものだと思っていたが、散歩とは……犬耳カチューシャと首輪だけを付けて四つん這いで散歩するよりも、今の中途半端な女装のような格好で散歩する方が恥ずかしい。
「楽しみだなぁ……ふふふ」
どこをどう散歩するのだろう。街には出ないだろう、おそらく庭を一周する程度──という俺の予想は外れ、朝食を終えた俺に雪兎は黒い着物を渡した。
「一人で着れるんだよね? 僕も着替えるから一人で着てね」
戸惑いつつも白いスリップの上から黒い着物を着た。一人で帯を締め、羽織を羽織って羽織紐を結んだ。
「……肩紐大丈夫かな」
着物からスリップの肩紐がはみ出さないかと不安になり、肩をさする。鏡で確認したところ余程はだけない限り見えはしなさそうだが……それでも気になる。
「…………すごい変態だな」
黒い着流しだけなら普通の男性、その下に性的な意図を持って作られた女性物の下着が隠れているとなれば、それはもう下着だけだった頃よりも変態度合いが高い。
「お待たせ、ポチぃ」
「ユキ様……ぁ、ユキ様も和服ですか」
雪兎は白い着流しを着ていた、うっすらと若神子家の家紋が入っている。
「うん、僕和服あんまり似合わないけど……」
「そんなことありませんよ、ユキ様は何を着たって似合います。お美しいですよ」
お世辞ではない。顔立ちや体型や肌の色に合った服装なんて俺には分からない、俺にとってのファッションは顔だ。俺好みではない顔をした俺は何を着ても似合わないし、俺好みの顔をした雪兎や雪風は何を着たって似合う。あくまでも、俺にとっては。
「ありがとう。ポチも着物似合ってるよ、贈ってよかった。やっぱりポチには黒い服が似合うね」
「……今朝は白いのが似合うって言ってませんでした?」
以前は白い服には嫉妬するとも言っていたな。雪兎は気分屋だという結論をさっさと出すべきだろうか。
「赤い首輪も似合ってるよ。赤い縄で縛った時も綺麗だった、ポチは何色でも似合うの」
「それはどうも……ところで、こんな服に着替えて一体どこへ散歩するんです?」
「前にポチがこっちに来た時にさ、街に行ったでしょ? ほら、若神子グループの人達だけで運営してる街」
「あぁ……はい」
「前に行ったとことは別のところなんだけど、似たようなところ。僕が自由に出歩けるのなんてそのくらいしかないから……いいよねぇ、遊園地、動物園、水族館……一度でいいからそういうところに行ってみたいよ」
深いため息をつく雪兎に「いつか行きましょう」なんて無責任なことは言えない、犬好きの仲間だなんて言って集めた大学の者達にすら雪兎の命を狙う者が居たのだ。閉じたコミュニティすら危ういのに、そんな公共施設になんて行ける訳がない。
「………………買収しちゃう、とか」
「あははっ! 面白いこと言うねぇ、ふふふ……割といいかもね、それ」
貸切だけでは安心出来ない、職員を全て若神子グループの関係者にしても物足りない。今から向かう散歩コースだって安全かどうか分からない。万全を期すなら若神子家の者はあの山奥の邸宅を出ない方がいいのだ。
「俺をお傍に置いてくだされば、俺がお守り致しますよ」
「ポチは愛玩犬だからだーめっ」
いくら格好付けたところで着物の下にシースルーの女性物の下着を着ている変態だということに変わりはない。玩具なんて使われていないのに、羞恥心だけが膨らんで朝食の間に萎んでくれた陰茎がぴくりと震えた。
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