ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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郊外の一軒家

はっぴーはろうぃん、じゅうご

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俺の陰茎を踏み躙って楽しんだ後、雪兎は着替えを用意しておくからと言って俺を風呂に押し込んだ。

「はぁ……ぁ、あっ……は……」

何時間も玩具で嬲られ、絶頂を繰り返した身体は酷く敏感だ。シャワーを浴びるだけで息が上がる。神経が剥き出しになったように過敏な肌は水滴による愛撫に快感を覚え、身体の熱が冷めない。

「……ふぅ」

とりあえず汗は流せただろうからシャワーを止める。一息ついてから頭と身体を洗う。

「着替え……」

汗臭い髪と身体を石鹸の香りに変え、満足して脱衣所に出る。脱衣所の冷たい空気に晒されて、シャワーを浴びている最中引く気配すらなかった絶頂の熱が冷めていくのを感じた。

「トランクケース……? これかな」

雪兎が用意してくれていた着替えはトランクケースに入っていた。おそらく俺達二人きりでのハロウィンパーティのために作った衣装なのだろう。

「…………うわぁ」

露出度が高い衣装にすると衣装考案の際に言っていたし、ある程度は覚悟していた。しかし、これ程とは……俺はひょっとして俺の知らない間にSMクラブにでも勤務していたのだろうか?

「風呂上がりに着るのは、なんか……嫌だな、これ」

一番に目に入ったのは黒い革製のグローブにブーツ、どう見てもSMの衣装だ。普段なら特に疑問も不満もなく着るだろうが、湯上がりの濡れた肌に革製品というのは、どうも気が進まない。

「あー……肌にべったり張り付く」

革製品の光沢や頑丈さは好きだ、拘束具なんて最高だ、あの頑丈さからくる安心感、絶望感、たまらない……! しかし肌に張り付く感覚はあまり好きじゃない。

「ふぅ……ヒールか、まぁ家の中だけなら……」

高いヒール付きのブーツは長く、膝を超えて太腿の真ん中辺りまで覆った。しかしゴム製ではなく革製なので、一般的な靴下のように締め付けてはくれない。ずり落ちてくる。そんな時に有用なのが──

「お、やっぱりあった」

──ガーターベルトだ。

「でもパンツが先……」

トランクス丈の黒い革製のこれが下着に当たる物だろう、尻の部分にアナルプラグらしきものが縫い付けられており、外側には犬の尻尾のような飾りがぶら下がっている。

「……っ、ん、ぅ……んんっ! んっ、はぁ……入った……? 履けた……」

アナルプラグは大したサイズではないが、前立腺にくい込む形をしている。見た目は単なる短パン、尻尾飾り付き。このベルトがガーターベルトを兼任しており、靴下を吊るすことが出来るようだ。ガーターベルトが丸見えとは流石雪兎、革新的で下品な誰にも真似出来ないデザイン。

「上は……まぁ、普通か」

小さ過ぎるシャツのような形状で、ボタンはない、代わりに紐がある。袖のない穴に腕を通して着てみると、前が閉じないことが分かった。

「……なるほど」

ボタン代わりの紐はスニーカーの紐のように使うようだ、コルセットの方が近いか? 機能的には前側が開くブラジャーに近いかもしれない。胸筋をぎゅっと締め付けて、寄せて上げて谷間を目立たせる……雪兎は俺の胸筋をなんだと思ってるんだ?

「こんな服前にも着たような……わざわざ作り直す意味あったのかな。いや、俺案外育ってるしなぁー……こんだけギッチギチの服なら測り直しは必要か」

ぶつぶつと独り言を呟きながら着替えを終えた。いや、もう一つ大切なものが残っていた。

「……やっぱり似合いはしないな」

犬耳カチューシャ、こればかりは新調する意味が全くないと思う。何個も与えられたがほぼ全て同じデザインだし、三角の可愛らしい犬耳は俺に似合わない。

「はぁ……犬である自覚はあるけど、あんまり……なぁ、やっぱり……厳つい男だよ俺は……こういう衣装はやっぱ似合わない……」

そもそもハロウィンに無関係じゃないか、黒革のSMもどきに犬耳と犬尻尾なんて。手足は肘上膝上まで隠すのに、臍も胸の谷間も見せ付けるようなこんな服を着せて、雪兎は何がしたいんだ?

「似合わない……俺なんか、なんで、こんな」

「ポーチー? まだー?」

「俺なんか、俺……ぁ? あっ、ゆき、さま……ユキ様、すいません……着替えは終わりました」

「……うんうん! やっぱりポチは黒革似合うねぇ。カッコ可愛くってセクシー! はぁあ……最高」

脱衣所にやってきた雪兎は恍惚とした笑みを浮かべている。

「…………似合い、ますかね」

鏡を振り返ってみるも、そこに立つ強面の男は似合わない衣装に身を包んでいる。俺の目と雪兎の目は別の景色を見ているのだろうか。

「とっても似合うよ! 可愛い……!」

「そうですか……ユキ様がそう仰るならそうですよね」

俺の澱んだ三白眼、いや四白眼に映る景色と、赤紫色の美しい瞳に映る景色のどちらが正しいか、それは考えるまでもない。
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