ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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郊外の一軒家

はっぴーはろうぃん、じゅうろく

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指先から肘上まで包むグローブ、爪先から膝上まで包むヒール付きブーツ、そのブーツを吊るすガーターベルト、短パン、胸の谷間を強調し臍を丸出しにする丈のシャツ型の上着、犬耳カチューシャと犬の尻尾飾り、耳と尻尾のふさふさとした毛以外は全て黒い革製だ。

「よく似合う~! 可愛い! カッコいい、綺麗でセクシー!」

はしゃぐ雪兎もまた吸血鬼をイメージした服を脱ぎ、新しい衣装に身を包んでいた。

「ポチは何着ても似合うねぇ、考え甲斐があるよ!」

「似たような服持ってる気がしますが……」

「特にこの胸元がイイ!」

「あぁ、このスニーカーみたいな……」

ボタン代わりに空いた小さな穴に交互に紐を通し、いくつものX字を描く紐の留め具。黒革の衣装に寄せて上げて深められた胸の谷間を強調する、俺でなければ扇情的な衣装。

「最高! ポチの胸、やっぱり最高だよぉ……えっちぃ、可愛い、最高!」

最高と一気に三度も言われた。照れてしまう、顔が熱い。

「ユキ様の衣装もお可愛らしいです」

「そう? ちょっと恥ずかしいんだよね」

雪兎の衣装はミイラ男とウサギをモチーフにしたものだ。バニーガールのようなウサ耳のカチューシャを付けた雪兎はまさにウサギ。首から下は包帯に包まれている。ソーシャルゲームの期間限定キャラクターの衣装のような、SNSに蔓延るセンシティブなイラストのような、際どい包帯姿だ。

「めちゃくちゃセクシーじゃないですか……」

サラシのように胸にぐるぐると包帯を巻き、鎖骨も臍も丸出し。袖なんてなくて、胸に巻いてある包帯が少し腕に絡んでいるだけだから、脇も丸見え。

「包帯……これ本当に包帯だけなんですか?」

腰周りなんてもっと危ない、重ねて巻かれているから包帯の隙間なんてものはなく、タイトなミニスカートのような見た目だが、丈が短過ぎてもう、もう……! 見え……!?

「……下着は履いてますね。履いてなかったら、ユキ様のその丈じゃ……ほら、はみ出ちゃいますから」

「ポチのえっちー、変な目で見ないでよ」

「そんなビキニ並の格好しておいて!」

「ちなみにね、包帯いちいち巻くのは大変だから、筒状の布に包帯縫い付けてある感じなんだよ」

「あー……コスプレでよくある手法。ベージュの肌着を下に着てる感じですね」

雪兎の肌にはよくあるベージュの素材では色が合わないから、包帯とほとんど同じ色の素材を使っているようだ。どうせ包帯で見えなくなっているから問題ないのだろう。

「端っこは縫わずに垂らしてあるから、これを腕とか太腿にくるくるってして……あっ、足のほどけてる」

「……トイレ行った後、トイレットペーパー尻に挟んで気付かないままズボンからヒラヒラさせてるおじさん稀に居ますよね」

「何見て思い出してるの!」

「すいません、ユキ様のミイラウサギ衣装めちゃくちゃ可愛くってセクシーですよ」

「えへへっ……でしょー? 傷メイクとかもしようと思ってたんだけど」

「ダメですダメですユキ様に傷なんて特殊メイクだろうが許されません俺の心が死にますダメです」

「もー、過保護~。ふふふ……」

雪兎を抱き締めて気が付いた、俺も彼も露出度の高い衣装を着ている今、このようなスキンシップをすると肌が擦れ合い互いの体温がよく分かる。こんなの裸で抱き合ってるのとあまり変わらないじゃないか。

「……ポチ」

雪兎も同じ気持ちなのだろう、抱き締めた直後は無邪気に微笑んでいたのに今は頬が赤い。

「このグローブはめてちゃ晩ご飯食べにくいよね、外しちゃえ」

「ぁ……はい」

黒革のグローブを外して改めて雪兎を抱き締める。腕全体で雪兎の感触を味わい、しおらしい表情で見上げられ、理性が飛びそうになる。

「…………早く晩ご飯食べちゃおっ?」

パッと俺から離れ、いつもの笑顔で取り繕う。雪兎の意志をくみ取った俺もまた普段通りに振る舞い、食事の席に向かった。
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