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一章 幽世へ
九話 デパ地下
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龍穴神社を出てデパートへと向かった美桜は、まずはおつかいをすませようと、二階の化粧品売場で真莉愛の化粧水を買った。
香水の香りが漂う化粧品売場を歩いていると、美しい販売員たちが声をかけてきて、美桜は尻込みして、逃げるようにフロアを後にした。
それから階を上がり、洋服を見て回った。流行の洋服は可愛らしかったが、
(私にはお金がないし、そもそも似合わないものね……)
と、ブティックの中に入ることはしなかった。きっと真莉愛なら堂々と入って行って、おしゃれな販売員から接客を受けるのだろう。
その後も何の買い物もせずにフロアをまわると、美桜は一階へと戻った。婦人用品売場でハンカチを眺める。まわりにレースの付いたハンカチに心を惹かれたが、
(うーん、ちょっと高い……)
やはり贅沢かもしれないと、買うのはやめた。
(あと、見ていないのは地下だけ……)
美桜は、デパートの地下――デパ地下が大好きだ。おいしそうな惣菜やケーキなどは、見ているだけでも心が弾む。
エスカレーターで地階へと下りると、惣菜の良い香りが漂っていた。思わず、鼻をひくひくさせてしまう。
(あのヒレカツ大きくって食べ応えがありそう! こっちはサラダ屋さん。トマトとモッツァレラチーズのサラダかぁ。今度、作ってみようかな)
献立の参考にしようと、フロアを回遊魚のように歩く。
(あっ、海鮮丼だ)
昨日、隆俊が食べたいと言っていたことを思い出し、美桜は足を止めた。生活費用の財布も持ってきている。一瞬、買って帰ろうかと思ったが、へたにデパートで買い物をしたら怒られるかもしれないと考え、やめておいた。
惣菜コーナーをまわり終えると、今度は洋菓子コーナーへと向かった。冷蔵ショーケースの中には、宝石のようなケーキが並んでいる。
(メロンのショートケーキ、桃のレアチーズケーキ、ミルクレープ……ああ、どれもおいしそう)
「食べてみたい……な」
思わず、本音が漏れる。けれど、買って帰るわけにはいかない。
ふぅと溜め息をついた時、ふと、マドレーヌが目に入った。
「おいしそう」
近づいて見ていると、女性店員が、
「お一つからでもお買い上げいただけますよ」
と声をかけてきた。
(一つか……)
一つだけなら、それほど高くはない。美桜はトートバッグから財布を取り出し、
「じゃあ、そのマドレーヌを一つ下さい」
と、注文をした。
「かしこまりました」
女性店員は手早く包装をすると、美桜に紙袋を差し出した。一つしか買っていないのに、仰々しく包んでもらい、代金を払った後、恐縮をしながら受け取る。
(叔母様たちには見つからないようにしなきゃ)
トートバッグの中に大切に菓子を入れる。
(そうだ。帰りに本屋さんに寄ろう。それで、お菓子の本を買うんだ。そうしたら、翡翠様にマドレーヌを作って差し上げられる)
簡単なドーナツでも「うまい」と言ってくれた翡翠だ。凝った菓子を持って行けば、もっと喜んでもらえるかもしれない。
我ながら良い案だと思い、美桜は、うきうきとした足取りで、デパ地下を後にした。
香水の香りが漂う化粧品売場を歩いていると、美しい販売員たちが声をかけてきて、美桜は尻込みして、逃げるようにフロアを後にした。
それから階を上がり、洋服を見て回った。流行の洋服は可愛らしかったが、
(私にはお金がないし、そもそも似合わないものね……)
と、ブティックの中に入ることはしなかった。きっと真莉愛なら堂々と入って行って、おしゃれな販売員から接客を受けるのだろう。
その後も何の買い物もせずにフロアをまわると、美桜は一階へと戻った。婦人用品売場でハンカチを眺める。まわりにレースの付いたハンカチに心を惹かれたが、
(うーん、ちょっと高い……)
やはり贅沢かもしれないと、買うのはやめた。
(あと、見ていないのは地下だけ……)
美桜は、デパートの地下――デパ地下が大好きだ。おいしそうな惣菜やケーキなどは、見ているだけでも心が弾む。
エスカレーターで地階へと下りると、惣菜の良い香りが漂っていた。思わず、鼻をひくひくさせてしまう。
(あのヒレカツ大きくって食べ応えがありそう! こっちはサラダ屋さん。トマトとモッツァレラチーズのサラダかぁ。今度、作ってみようかな)
献立の参考にしようと、フロアを回遊魚のように歩く。
(あっ、海鮮丼だ)
昨日、隆俊が食べたいと言っていたことを思い出し、美桜は足を止めた。生活費用の財布も持ってきている。一瞬、買って帰ろうかと思ったが、へたにデパートで買い物をしたら怒られるかもしれないと考え、やめておいた。
惣菜コーナーをまわり終えると、今度は洋菓子コーナーへと向かった。冷蔵ショーケースの中には、宝石のようなケーキが並んでいる。
(メロンのショートケーキ、桃のレアチーズケーキ、ミルクレープ……ああ、どれもおいしそう)
「食べてみたい……な」
思わず、本音が漏れる。けれど、買って帰るわけにはいかない。
ふぅと溜め息をついた時、ふと、マドレーヌが目に入った。
「おいしそう」
近づいて見ていると、女性店員が、
「お一つからでもお買い上げいただけますよ」
と声をかけてきた。
(一つか……)
一つだけなら、それほど高くはない。美桜はトートバッグから財布を取り出し、
「じゃあ、そのマドレーヌを一つ下さい」
と、注文をした。
「かしこまりました」
女性店員は手早く包装をすると、美桜に紙袋を差し出した。一つしか買っていないのに、仰々しく包んでもらい、代金を払った後、恐縮をしながら受け取る。
(叔母様たちには見つからないようにしなきゃ)
トートバッグの中に大切に菓子を入れる。
(そうだ。帰りに本屋さんに寄ろう。それで、お菓子の本を買うんだ。そうしたら、翡翠様にマドレーヌを作って差し上げられる)
簡単なドーナツでも「うまい」と言ってくれた翡翠だ。凝った菓子を持って行けば、もっと喜んでもらえるかもしれない。
我ながら良い案だと思い、美桜は、うきうきとした足取りで、デパ地下を後にした。
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