8 / 30
辺境地にて2
しおりを挟む
裏路地にあったアパートを出て、知らない街をフラフラと歩く。
方向はめちゃくちゃで、今自分がどこにいるのかもわからない。
どんな平和な街でも、危ない場所はある。頭ではわかっていても、足は止まらない。きっと、そんな事どうでもいいと思うくらいには混乱しているのだろう。
あれは……イザークの言葉はどういう意味なのか。二人はどういう関係なのか。
いえ、まさか。でも。違う。でも。
頭の中で、希望と真実が交互に目まぐるしく動く。
だがどれほど自分に、勘違いだと言い聞かせても、自分の目で見た真実は覆らない。
答えは一つ。現実も一つ。
そしてそれは、どれほど否定しようと、自分の望んだものではない。
「…………」
認めてしまうと同時に、彼の言葉が耳に戻る。
『いい加減にして欲しいよな。子供のままごとに付き合っただけで、こんなに粘着されるとは思っていなかったよ』
いい加減にして欲しい。彼はそんな風に思っていた?うっとおしいとも……。
そんな事一度だって、言われた事はない。
ずっと一緒にいたい。エルーシアが一番可愛い。エルーシアの側にいると、ほっとする。そんな事ばかり言ってくれていたのに。
けれど、あれが彼の本音だったのだろう。いつからそんな風に思っていた、ではない。きっとずっとそう思っていた。
「そう……なのね……」
彼が言っていた通り、確かに彼の立場なら断ることなんてできなかっただろうし。
上司の娘と、部下。貴族と平民。そんな立場の違いを理解していなかった。
本当に小さな頃ならいざ知らず、ある程度になった時にはきちんと理解して、私の方から解放してあげなくてはいけなかった。
なのに、考えなしの私は彼の言葉を本気と思い込んで、付きまとってしまった。何年も、何年も。しつこく。しつこく。
男の人の十代の後半なんて、自由に遊んだり、同じくらいの年の女の事楽しい時間を過ごしたりしたかったころなのに。
彼に無駄な時間を押し付けてしまった。
その上、こんな所まで来て……。
ローレインに行けば、帰ってきた時に優遇される。少し出世もできる。
これは本当なのだと思う。彼の中にも、きっとそう言う気持ちはあったのだと。
「エルーシアに苦労かけさせたくないんだ」
でも、これは嘘だった。きっと距離を置く事で、私の興味を自分から他所に向けようとしたかっただけ。最初から彼の中に、私との未来なんてなかった。
ないから、あの女性と……。
頭の中に、先ほど身を一つに重ねる彼と彼女の姿が浮かぶ。
「酷い……」
思わず声に出してしまった後、すぐに頭を振り、酷いのは自分の方だと思い直す。
そう。彼が悪いのではない。
彼はずっと嘘を重ねるしかなかったし、こうする他なかったのだろうし、そうさせたのは私だ。
こんな遠くの地に。友人も知人もいないような場所に来させてしまうほど、追い詰めてしまった。
王都からローレイン。自分がアレクと一緒に通って来た道のりを思い出し、本当に申し訳なくなる。
『もう、うんざりだ』
耳に残る彼の本音。
それはそうだろう。好きでもない子供に執着されて、将来を強要されて。
彼がそう思うのも無理はない。
悪気がなかった、そんなつもりではなかったと言っても、許されるわけでもない。
きっと周囲もわかっていた。思い返せば、お父様からも何度も注意を受けていたし、周囲の人もそれとなく、彼との距離を離そうとしてくれていた。
きっと皆、彼の負担を思っての行動だったのだろう。
なのに。それらの言葉を、私は聞こうとしなかった。
「ごめんなさい……」
謝罪の言葉が、自然に口から零れ落ちる。
同時に涙が溢れてきた。
彼に対する申し訳なさと、自分が分別のない子供だったという恥ずかしさから。
「ごめんなさい」
『元気だった?』『もうこっちには慣れた?』『怪我とか病気とかしていない?』『大好きだよ』彼に伝えたかった言葉は沢山あったけれど、今、言いたいのはこの一言だけ。
「ごめんなさい」
何も気がつかなくて。追い詰めてしまって。貴方の時間を無駄に使ってしまって。今もこうして、こんな場所にまで押しかけて来てしまって。
思い込みが激しいとは、言われていた。その言葉を聞いていたのに、自覚がなかったと今ならわかる。その自覚のなさが、結果的に彼や周囲に多大な迷惑をかけてしまった。
彼自身はもちろんの事、彼がローレインに来る事で、後を引き継いだ彼の同僚や上司にも迷惑をかけた事だろう。お父様も、彼の負担がわかっているだけに、私との間で悩んだだろうし、アレクだって……必要のない旅に同行させてしまった。
「もう、ダメダメじゃん……」
いくら子供だったとしても、程度があるだろうに。
考えれば考えるほど、本当に申し訳なくて、自分が情けなくて、恥ずかしくて涙が止まらなくなる。泣いてすむ話でもないのに。
グズグズと鼻を啜り、溢れる涙をそのままに歩く。
今は少しでも、一歩でもイザークと離れていたくて。
本当は今すぐにでも彼の元へ行き、面と向かって彼に謝って、一刻も早く彼の前から姿を消さなくてはと頭では理解できているのに。
「だって…どんな顔して会えばいいのかわからない……」
大好きだった人に、あんなに疎まれて。あんなに嫌われて。
『うっとうしい』
あんな言葉まで言わせて。
「自業自得ってわかっているのに……」
振られて悲しいとか、辛いとかなんて誰にも言えないし、言ってはいけない。全部自分の行動が自分に返ってきているだけだから。
何が騎士の妻になるには、だ。
私がイザークの為に、と思ってやってきた行動は全て、彼の迷惑になっていたというのに。彼の為を思うなら、私こそが彼の前から消えなければならなかったのに。
そんな事にも気が付かず、一方的に気持ちを押し付けて……。
零れ落ちる涙をぐいっと乱暴に拭き、そういえば、思う。
あの人にも迷惑をかけてしまった。
前を歩いていた彼女。何という名前かは知らないけれど、イザークの恋人。
イザークが本当に望んだ人。
彼女も断れないストーカーがやってくる。しかも彼氏のストーカー。という事態に困惑しただろう。
きっと嫌な気分にさせてしまった。
「ごめんなさい……」
もう、世界中の全てに謝りたい。溶けてなくなってしまいたい。
どうして、こうなってしまったのか……。
溢れる涙を手で拭う。
と、その時。
「お嬢ちゃん、どうしたの?迷子?」
軽い口調と共に肩に手が置かれた。
振り返ると、あまり良くない風体の男たちがいる。
彼らに驚いて辺りを見回すと、あたりまえだけれど、そこは見知らぬ場所。しかも治安が良くない場所という事は、道のあちこちや、建物の壁をみるだけでもわかる。
泣きながら歩いている内に、どうやら入ってはいけない、と宿屋の主人に注意されていた場所に来てしまったようだ。
「あの……」
「俺たちが連れて行ってあげるよ」
「そうそう。ここいらは物騒だからさー」
私を取り囲むように、男が五人。どの人も風体はよくない。
彼等は口元にニヤニヤとした笑いを貼り付けて、親切そうに「連れて行ってあげる」と言うがどこへ、とは言わない。
「いえ、結構です……」
「遠慮するなって!」
ジリ……と後ずさるけれど、肩に手を置いた男が、私が逃げ出さないようにと力を込めてくる。
どうしよう。
どうしよう。
明らかに、ついて行ってはいけない類の人たちなのに。
「な、行こうぜ?」
寄せられる顔。その体から何らかの薬の匂いがした。
「体は小さいけど、顔は可愛いし、いいんじゃね?」
「ああ、こういうのが好きな奴もいるしな」
「違いねぇ」
他の男の声が耳に届く。
「てか、俺先に試したいなー」
「あ、じゃあ俺も。先にこれからどうなるか知っておいた方が、この子だっていいだろうし」
ふざけた男の声に、下品な笑いが続く。
肩に置かれた手は、いよいよ力が入れられ、痛いほどだ。
どうしよう。逃げられない。
助けて……誰か……。
そう思った瞬間、唇から自然に彼の名前が零れ落ちた。
「アレクぅ」
小さな、本当に小さな呟きだった。けれど、無意識だっただけに、自分でも驚いてしまった。
ほんの一週間の旅の連れ。ただそれだけの相手のはずなのに。
困った時、無意識に呼んでしまったのが、長年想ってきたイザークでなくて、アレクだったなんて。
なんで……。そう思ったその時。
肩にかけられた手から、急に力が抜けた。それまでは逃げ出せないよう、結構強い力が加わっていたのに。
同時に周囲に絶叫が走る。
何事かと思えば、今まで私の肩に手を置いていた男が、絶叫を上げながら地面に転がっていた。
男は片方の自分の手首を庇うように持ち……持ち……。だが、その手首から下はない。
「え!」
血は、出ていなかった。場所が場所なだけに、切られたのなら相当な血が噴き出すはずなのに。
私はほぼ無意識に自分の肩に触れ、そこにまだある何かを何気なく払い落とした。
ポトリ。
ある程度の重さを持ち、石畳に手が落ちる。
え?手?
ぎょっとして二度見するけれど、やはり手だ。
五本しっかりと揃っている指。露になる肉と骨の断面。けれど、やはり血はながれていない。それが余計に、その手はすでに『人の一部』ではなく、ただの『物』でしかない事を思い知らせる。
一体……何が起こったの?
人間、ショックが大きいと嫌悪も感じないし、言葉もなくすものらしい。
予想外の事に、私も、私を囲んでいた男達も言葉を失いただ茫然と、絶叫し地面でのた打ち回る男と、私の足元に転がった彼の手を見ていた。
が、次の瞬間。
目の端を何かが動いた。黒い影みたいな、何か。けれど、それが何かはわからない。
そして、気づいてそちらに注意が行った時には終わっていた。
地面に何かが落ちる音が、いくつも重なる。
先ほど聞いた音と似ている音。
それが何だったのか、思い出している内に、辺りに先ほどまでとは比べ物にならないくらいの絶叫が響く。
恐らく元々の治安の悪さからだとは思うけれど、先程の男の絶叫には何も反応しなかった人々が、窓という窓から顔を覗かせるくらいの音量。
同時に複数の人が走って来る足音がして、待つほどのこともなく、見たことのない制服を着た人々がこちらにやって来る。
「え?」
突然の展開に頭が付いてこない。
ついてこないままに、何気なく視線を地面に落とそうとした時、背後から片手で目を塞がれた。
「見なくていい」
少し低めの男の声が耳元でする。これは……聞きなれてないけれど、一度聞けば耳に残る美声。
「アレク?」
「……回収を急げ」
「はっ!」
私の問いかけに彼は返事を返さず、声は他の誰か……恐らく先ほどの制服を着た人たちに向けられる。
回収?一体何を?
見えない私の周囲で、皆が何かを拾う気配がする。絶叫は相変わらずだったが、少ししてくぐもったものに変わったから、どうやら口を塞がれたらしい。
激しく抵抗する様子と、それを数で圧倒していく気配。
それらは、僅かの間に遠ざかり……。その音が完全に無くなったのを確認したタイミングで、私の瞼からアレクの手が外された。
急に明るくなる視界。
そこには何もない。
落ちていたはずの手も回収されたのか、周囲を見回しても見当たらない。
勿論、血痕なんてものもない。
夢でもみたのかしら?それとも、今が夢の中なのか?
疑問に思いながら、自分の頬をつねる。しっかり痛い。なら、これは……。
状況を説明してもらおうと、斜め後ろにいるアレクを振り返る。
彼は私の目を塞いでいた方の手のひらを見て、何故だか不機嫌そうに眉を潜め、それから改めて手を伸ばして私の頬に指先で触れた。
「?」
何だろう。
壊れ物に触れるような、慎重で優しい触れ方。
綺麗な形の唇が、何かを告げたいことがあるのか、何度か小さく開いては閉じ。
そして。
「……すまない」
少しの間の後、彼の唇から謝罪の言葉が漏れる。悔しそうな表情と一緒に。
「アレク?」
彼が謝るような事があっただろうか?
むしろ助けてくれたのに。
「一緒に行くつもりだった」
言葉と同時に引き寄せられ、頭を抱かれる。
どこかで……。ああ、あの時と同じだ。私が頬に傷を作った時と。
「大丈夫。助けてくれてありがとう」
今回は前回のように傷もない。本当に無傷で助けてもらったのだ。
だからそう言ったのに、彼は私の頭を自分の胸に強く押し付けた。
微かなコロンの香りが鼻孔に広がる。清涼感のある……ティートゥリーみたいな香り。気持ちをほっとさせるようなそれに、自然に体から力が抜けていく気がした。
安全な場所に戻ってきたみたいに。
そんな私とは反対に、彼の声は硬い。
「……守るっていった」
「だから、ケガなんてしていないわよ?」
ほら、と見せたいのに、強くだきしめられているからそれもできない。
どうしようかしら、と困っていると、頭の上から言葉が降ってきた。
「傷を負うのは、体だけじゃない」
告げられた言葉に、驚きから目を瞠る。
体だけじゃない?
だったらそれは……。
『うっとおしい』
先ほどまで頭の中で何度も繰り返されていた、イザークの言葉が蘇る。
ずっと好きだっただけに、彼の本音は胸に痛い。
痛くて、痛くて。見開いた目から、また自然に涙が溢れて来る。
「でも、私が悪いの……」
「うん」
アレクは否定しない。
彼は知っていたの?私の愚行も、イザークの本音も。
腕の中で彼を見上げると、優しい目が私を見返す。
「私……。周りが見えていなくて……」
「うん」
「馬鹿だったの……」
馬鹿だから。私が傷つくのは違うの。傷をつけたのは、多分私で。
だからあんなに嫌われて。でもそれは自業自得だから、私には傷つく権利もなくて……。
頭の中では色々な言葉が巡る。
けれど、それらは声にならないものばかりで。
「馬鹿じゃない。それだけ、そいつの事が好きだった、ってだけだろう?」
「でも、でも」
その事でイザークにも、周りの人たちにも沢山迷惑をかけてしまった。
アレクにまで。
「ごめんなさい……」
泣く資格なんてないと思うから、せめてもと短く伝えた後は、嗚咽を堪えて唇を噛み締める。
アレクは小さくため息を吐いた後、私の頭の後ろに回していた腕を外し、両手で私の頬を包み込んだ。
想像していたより、ずっと大きい手。泣いた事で熱を持った頬に、少しひんやりした感触が心地いい。
長身の腰を折り、アレクが私の顔を覗き込む。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を。
そうして目が合うと、平素無表情な彼は、嘘みたいに優しい笑みを浮かべた。
「悪いのは、あんただけじゃない」
綺麗な顔が近づき、生え際と旋毛にキスをされる。
性的なもののない、慰めのキス。
泣きわめく頑是ない子供にするような。
親や友人が送ってくれる、慈愛の表現。……彼がしてくれるとは思わなくて。
嬉しいでも哀しいでもない。ただ安心を揺り動かして柔らかく続けられるそれに、私はより泣きじゃくりながら彼の胸に顔を隠した。
方向はめちゃくちゃで、今自分がどこにいるのかもわからない。
どんな平和な街でも、危ない場所はある。頭ではわかっていても、足は止まらない。きっと、そんな事どうでもいいと思うくらいには混乱しているのだろう。
あれは……イザークの言葉はどういう意味なのか。二人はどういう関係なのか。
いえ、まさか。でも。違う。でも。
頭の中で、希望と真実が交互に目まぐるしく動く。
だがどれほど自分に、勘違いだと言い聞かせても、自分の目で見た真実は覆らない。
答えは一つ。現実も一つ。
そしてそれは、どれほど否定しようと、自分の望んだものではない。
「…………」
認めてしまうと同時に、彼の言葉が耳に戻る。
『いい加減にして欲しいよな。子供のままごとに付き合っただけで、こんなに粘着されるとは思っていなかったよ』
いい加減にして欲しい。彼はそんな風に思っていた?うっとおしいとも……。
そんな事一度だって、言われた事はない。
ずっと一緒にいたい。エルーシアが一番可愛い。エルーシアの側にいると、ほっとする。そんな事ばかり言ってくれていたのに。
けれど、あれが彼の本音だったのだろう。いつからそんな風に思っていた、ではない。きっとずっとそう思っていた。
「そう……なのね……」
彼が言っていた通り、確かに彼の立場なら断ることなんてできなかっただろうし。
上司の娘と、部下。貴族と平民。そんな立場の違いを理解していなかった。
本当に小さな頃ならいざ知らず、ある程度になった時にはきちんと理解して、私の方から解放してあげなくてはいけなかった。
なのに、考えなしの私は彼の言葉を本気と思い込んで、付きまとってしまった。何年も、何年も。しつこく。しつこく。
男の人の十代の後半なんて、自由に遊んだり、同じくらいの年の女の事楽しい時間を過ごしたりしたかったころなのに。
彼に無駄な時間を押し付けてしまった。
その上、こんな所まで来て……。
ローレインに行けば、帰ってきた時に優遇される。少し出世もできる。
これは本当なのだと思う。彼の中にも、きっとそう言う気持ちはあったのだと。
「エルーシアに苦労かけさせたくないんだ」
でも、これは嘘だった。きっと距離を置く事で、私の興味を自分から他所に向けようとしたかっただけ。最初から彼の中に、私との未来なんてなかった。
ないから、あの女性と……。
頭の中に、先ほど身を一つに重ねる彼と彼女の姿が浮かぶ。
「酷い……」
思わず声に出してしまった後、すぐに頭を振り、酷いのは自分の方だと思い直す。
そう。彼が悪いのではない。
彼はずっと嘘を重ねるしかなかったし、こうする他なかったのだろうし、そうさせたのは私だ。
こんな遠くの地に。友人も知人もいないような場所に来させてしまうほど、追い詰めてしまった。
王都からローレイン。自分がアレクと一緒に通って来た道のりを思い出し、本当に申し訳なくなる。
『もう、うんざりだ』
耳に残る彼の本音。
それはそうだろう。好きでもない子供に執着されて、将来を強要されて。
彼がそう思うのも無理はない。
悪気がなかった、そんなつもりではなかったと言っても、許されるわけでもない。
きっと周囲もわかっていた。思い返せば、お父様からも何度も注意を受けていたし、周囲の人もそれとなく、彼との距離を離そうとしてくれていた。
きっと皆、彼の負担を思っての行動だったのだろう。
なのに。それらの言葉を、私は聞こうとしなかった。
「ごめんなさい……」
謝罪の言葉が、自然に口から零れ落ちる。
同時に涙が溢れてきた。
彼に対する申し訳なさと、自分が分別のない子供だったという恥ずかしさから。
「ごめんなさい」
『元気だった?』『もうこっちには慣れた?』『怪我とか病気とかしていない?』『大好きだよ』彼に伝えたかった言葉は沢山あったけれど、今、言いたいのはこの一言だけ。
「ごめんなさい」
何も気がつかなくて。追い詰めてしまって。貴方の時間を無駄に使ってしまって。今もこうして、こんな場所にまで押しかけて来てしまって。
思い込みが激しいとは、言われていた。その言葉を聞いていたのに、自覚がなかったと今ならわかる。その自覚のなさが、結果的に彼や周囲に多大な迷惑をかけてしまった。
彼自身はもちろんの事、彼がローレインに来る事で、後を引き継いだ彼の同僚や上司にも迷惑をかけた事だろう。お父様も、彼の負担がわかっているだけに、私との間で悩んだだろうし、アレクだって……必要のない旅に同行させてしまった。
「もう、ダメダメじゃん……」
いくら子供だったとしても、程度があるだろうに。
考えれば考えるほど、本当に申し訳なくて、自分が情けなくて、恥ずかしくて涙が止まらなくなる。泣いてすむ話でもないのに。
グズグズと鼻を啜り、溢れる涙をそのままに歩く。
今は少しでも、一歩でもイザークと離れていたくて。
本当は今すぐにでも彼の元へ行き、面と向かって彼に謝って、一刻も早く彼の前から姿を消さなくてはと頭では理解できているのに。
「だって…どんな顔して会えばいいのかわからない……」
大好きだった人に、あんなに疎まれて。あんなに嫌われて。
『うっとうしい』
あんな言葉まで言わせて。
「自業自得ってわかっているのに……」
振られて悲しいとか、辛いとかなんて誰にも言えないし、言ってはいけない。全部自分の行動が自分に返ってきているだけだから。
何が騎士の妻になるには、だ。
私がイザークの為に、と思ってやってきた行動は全て、彼の迷惑になっていたというのに。彼の為を思うなら、私こそが彼の前から消えなければならなかったのに。
そんな事にも気が付かず、一方的に気持ちを押し付けて……。
零れ落ちる涙をぐいっと乱暴に拭き、そういえば、思う。
あの人にも迷惑をかけてしまった。
前を歩いていた彼女。何という名前かは知らないけれど、イザークの恋人。
イザークが本当に望んだ人。
彼女も断れないストーカーがやってくる。しかも彼氏のストーカー。という事態に困惑しただろう。
きっと嫌な気分にさせてしまった。
「ごめんなさい……」
もう、世界中の全てに謝りたい。溶けてなくなってしまいたい。
どうして、こうなってしまったのか……。
溢れる涙を手で拭う。
と、その時。
「お嬢ちゃん、どうしたの?迷子?」
軽い口調と共に肩に手が置かれた。
振り返ると、あまり良くない風体の男たちがいる。
彼らに驚いて辺りを見回すと、あたりまえだけれど、そこは見知らぬ場所。しかも治安が良くない場所という事は、道のあちこちや、建物の壁をみるだけでもわかる。
泣きながら歩いている内に、どうやら入ってはいけない、と宿屋の主人に注意されていた場所に来てしまったようだ。
「あの……」
「俺たちが連れて行ってあげるよ」
「そうそう。ここいらは物騒だからさー」
私を取り囲むように、男が五人。どの人も風体はよくない。
彼等は口元にニヤニヤとした笑いを貼り付けて、親切そうに「連れて行ってあげる」と言うがどこへ、とは言わない。
「いえ、結構です……」
「遠慮するなって!」
ジリ……と後ずさるけれど、肩に手を置いた男が、私が逃げ出さないようにと力を込めてくる。
どうしよう。
どうしよう。
明らかに、ついて行ってはいけない類の人たちなのに。
「な、行こうぜ?」
寄せられる顔。その体から何らかの薬の匂いがした。
「体は小さいけど、顔は可愛いし、いいんじゃね?」
「ああ、こういうのが好きな奴もいるしな」
「違いねぇ」
他の男の声が耳に届く。
「てか、俺先に試したいなー」
「あ、じゃあ俺も。先にこれからどうなるか知っておいた方が、この子だっていいだろうし」
ふざけた男の声に、下品な笑いが続く。
肩に置かれた手は、いよいよ力が入れられ、痛いほどだ。
どうしよう。逃げられない。
助けて……誰か……。
そう思った瞬間、唇から自然に彼の名前が零れ落ちた。
「アレクぅ」
小さな、本当に小さな呟きだった。けれど、無意識だっただけに、自分でも驚いてしまった。
ほんの一週間の旅の連れ。ただそれだけの相手のはずなのに。
困った時、無意識に呼んでしまったのが、長年想ってきたイザークでなくて、アレクだったなんて。
なんで……。そう思ったその時。
肩にかけられた手から、急に力が抜けた。それまでは逃げ出せないよう、結構強い力が加わっていたのに。
同時に周囲に絶叫が走る。
何事かと思えば、今まで私の肩に手を置いていた男が、絶叫を上げながら地面に転がっていた。
男は片方の自分の手首を庇うように持ち……持ち……。だが、その手首から下はない。
「え!」
血は、出ていなかった。場所が場所なだけに、切られたのなら相当な血が噴き出すはずなのに。
私はほぼ無意識に自分の肩に触れ、そこにまだある何かを何気なく払い落とした。
ポトリ。
ある程度の重さを持ち、石畳に手が落ちる。
え?手?
ぎょっとして二度見するけれど、やはり手だ。
五本しっかりと揃っている指。露になる肉と骨の断面。けれど、やはり血はながれていない。それが余計に、その手はすでに『人の一部』ではなく、ただの『物』でしかない事を思い知らせる。
一体……何が起こったの?
人間、ショックが大きいと嫌悪も感じないし、言葉もなくすものらしい。
予想外の事に、私も、私を囲んでいた男達も言葉を失いただ茫然と、絶叫し地面でのた打ち回る男と、私の足元に転がった彼の手を見ていた。
が、次の瞬間。
目の端を何かが動いた。黒い影みたいな、何か。けれど、それが何かはわからない。
そして、気づいてそちらに注意が行った時には終わっていた。
地面に何かが落ちる音が、いくつも重なる。
先ほど聞いた音と似ている音。
それが何だったのか、思い出している内に、辺りに先ほどまでとは比べ物にならないくらいの絶叫が響く。
恐らく元々の治安の悪さからだとは思うけれど、先程の男の絶叫には何も反応しなかった人々が、窓という窓から顔を覗かせるくらいの音量。
同時に複数の人が走って来る足音がして、待つほどのこともなく、見たことのない制服を着た人々がこちらにやって来る。
「え?」
突然の展開に頭が付いてこない。
ついてこないままに、何気なく視線を地面に落とそうとした時、背後から片手で目を塞がれた。
「見なくていい」
少し低めの男の声が耳元でする。これは……聞きなれてないけれど、一度聞けば耳に残る美声。
「アレク?」
「……回収を急げ」
「はっ!」
私の問いかけに彼は返事を返さず、声は他の誰か……恐らく先ほどの制服を着た人たちに向けられる。
回収?一体何を?
見えない私の周囲で、皆が何かを拾う気配がする。絶叫は相変わらずだったが、少ししてくぐもったものに変わったから、どうやら口を塞がれたらしい。
激しく抵抗する様子と、それを数で圧倒していく気配。
それらは、僅かの間に遠ざかり……。その音が完全に無くなったのを確認したタイミングで、私の瞼からアレクの手が外された。
急に明るくなる視界。
そこには何もない。
落ちていたはずの手も回収されたのか、周囲を見回しても見当たらない。
勿論、血痕なんてものもない。
夢でもみたのかしら?それとも、今が夢の中なのか?
疑問に思いながら、自分の頬をつねる。しっかり痛い。なら、これは……。
状況を説明してもらおうと、斜め後ろにいるアレクを振り返る。
彼は私の目を塞いでいた方の手のひらを見て、何故だか不機嫌そうに眉を潜め、それから改めて手を伸ばして私の頬に指先で触れた。
「?」
何だろう。
壊れ物に触れるような、慎重で優しい触れ方。
綺麗な形の唇が、何かを告げたいことがあるのか、何度か小さく開いては閉じ。
そして。
「……すまない」
少しの間の後、彼の唇から謝罪の言葉が漏れる。悔しそうな表情と一緒に。
「アレク?」
彼が謝るような事があっただろうか?
むしろ助けてくれたのに。
「一緒に行くつもりだった」
言葉と同時に引き寄せられ、頭を抱かれる。
どこかで……。ああ、あの時と同じだ。私が頬に傷を作った時と。
「大丈夫。助けてくれてありがとう」
今回は前回のように傷もない。本当に無傷で助けてもらったのだ。
だからそう言ったのに、彼は私の頭を自分の胸に強く押し付けた。
微かなコロンの香りが鼻孔に広がる。清涼感のある……ティートゥリーみたいな香り。気持ちをほっとさせるようなそれに、自然に体から力が抜けていく気がした。
安全な場所に戻ってきたみたいに。
そんな私とは反対に、彼の声は硬い。
「……守るっていった」
「だから、ケガなんてしていないわよ?」
ほら、と見せたいのに、強くだきしめられているからそれもできない。
どうしようかしら、と困っていると、頭の上から言葉が降ってきた。
「傷を負うのは、体だけじゃない」
告げられた言葉に、驚きから目を瞠る。
体だけじゃない?
だったらそれは……。
『うっとおしい』
先ほどまで頭の中で何度も繰り返されていた、イザークの言葉が蘇る。
ずっと好きだっただけに、彼の本音は胸に痛い。
痛くて、痛くて。見開いた目から、また自然に涙が溢れて来る。
「でも、私が悪いの……」
「うん」
アレクは否定しない。
彼は知っていたの?私の愚行も、イザークの本音も。
腕の中で彼を見上げると、優しい目が私を見返す。
「私……。周りが見えていなくて……」
「うん」
「馬鹿だったの……」
馬鹿だから。私が傷つくのは違うの。傷をつけたのは、多分私で。
だからあんなに嫌われて。でもそれは自業自得だから、私には傷つく権利もなくて……。
頭の中では色々な言葉が巡る。
けれど、それらは声にならないものばかりで。
「馬鹿じゃない。それだけ、そいつの事が好きだった、ってだけだろう?」
「でも、でも」
その事でイザークにも、周りの人たちにも沢山迷惑をかけてしまった。
アレクにまで。
「ごめんなさい……」
泣く資格なんてないと思うから、せめてもと短く伝えた後は、嗚咽を堪えて唇を噛み締める。
アレクは小さくため息を吐いた後、私の頭の後ろに回していた腕を外し、両手で私の頬を包み込んだ。
想像していたより、ずっと大きい手。泣いた事で熱を持った頬に、少しひんやりした感触が心地いい。
長身の腰を折り、アレクが私の顔を覗き込む。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を。
そうして目が合うと、平素無表情な彼は、嘘みたいに優しい笑みを浮かべた。
「悪いのは、あんただけじゃない」
綺麗な顔が近づき、生え際と旋毛にキスをされる。
性的なもののない、慰めのキス。
泣きわめく頑是ない子供にするような。
親や友人が送ってくれる、慈愛の表現。……彼がしてくれるとは思わなくて。
嬉しいでも哀しいでもない。ただ安心を揺り動かして柔らかく続けられるそれに、私はより泣きじゃくりながら彼の胸に顔を隠した。
131
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~
吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。
ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。
幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。
仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。
精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。
ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。
侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。
当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!?
本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。
+番外編があります。
11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。
11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】初恋の人に嫁ぐお姫様は毎日が幸せです。
くまい
恋愛
王国の姫であるヴェロニカには忘れられない初恋の人がいた。その人は王族に使える騎士の団長で、幼少期に兄たちに剣術を教えていたのを目撃したヴェロニカはその姿に一目惚れをしてしまった。
だが一国の姫の結婚は、国の政治の道具として見知らぬ国の王子に嫁がされるのが当たり前だった。だからヴェロニカは好きな人の元に嫁ぐことは夢物語だと諦めていた。
そしてヴェロニカが成人を迎えた年、王妃である母にこの中から結婚相手を探しなさいと釣書を渡された。あぁ、ついにこの日が来たのだと覚悟を決めて相手を見定めていると、最後の釣書には初恋の人の名前が。
これは最後のチャンスかもしれない。ヴェロニカは息を大きく吸い込んで叫ぶ。
「私、ヴェロニカ・エッフェンベルガーはアーデルヘルム・シュタインベックに婚約を申し込みます!」
(小説家になろう、カクヨミでも掲載中)
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる