武器屋のエレン

月島ウェッジウッド

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勇者はみんなお得意様(カモ)

第三話:武器屋と鍛冶屋と勇者(3)

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「『初めて戦うモンスター、HPもそれなりにある。だから多少てこずっても仕方がない』

あんたがそう思うであろうことは、あんたの仲良しの鍛冶屋にはお見通しだったんだよ。あんたら勇者は、武器を手に入れたり、鍛えたりした時、決まって”腕試し”とばかりに少しばかり強い敵と戦おうとするからな」

屈強な体躯を誇る勇者と、およそいかなる武器も持ち上げられないのではないかと思われる優男。この世界にいるあらゆる人々の目に”強者”と映るのは、間違いなく前者だろう。

しかし、今この瞬間、圧倒的強者であるはずの勇者は、目の前の優男に気圧され始めていた。

20万ゼニーで売ろうと思っていた武器に、数分眺めただけでわずか2万ゼニーの値を付けたこの優男を信用するつもりは毛頭ない。しかし勇者は、優男が発する言葉のひとつひとつに筆舌し難い説得力があることを認めざるを得なかった。

「そして、少々てこずった戦いの後、勇者であるあんたたちは、”勇者”らしく、自らを鍛える。そうやって、HPや腕力といった基本能力を向上させる。『鍛冶屋に預けた武器に、支払った対価に見合った鍛錬が施されていない』なんて、微塵も考えずにな」

勇者は、相変わらず破裂しそうなほど血管を膨張させながら、右手で武器を強く握り締めている。しかし、直情的に行動しがちな彼であっても、文字通り怒りの矛先を向けるべき相手が目の前の優男ではないことは理解していた。だからこそ、彼は発するべき言葉を持たなかった。

「もう一度言う、あんたの仲良しの鍛冶屋は商売人だ。そして、あんたはその鍛冶屋に”カモられた”んだ。そして、俺がこの武器に出せるのは2万ゼニーまでだ。

それで売る気がないのなら、悪いがお引き取り願いたい」

日が傾き、薄暗くなった店内。1日の終わりが、迫っていた。夕闇を背にしている男の方に選択権が無いことは、誰の目にも明らかだった。
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