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プロローグ
前夜 . The clown in the bird cage
しおりを挟む時は現代。
売春が合法化されている日本において。
外界とは隔絶された独自の法と掟を持つ『吉原』はすべての男の憧れの場所であった。
多くの男たちが夢と快楽を求め、美しき遊女と一晩限りの仮初めの関係を築き上げる。
”大人の男の終着点”などとも揶揄され、高位の人間のみならず、結婚生活に倦怠感を抱いた男、俗世界に疲弊した男なども多く集まった。
しかし、これは『吉原』のオモテの顔に過ぎない。
時を同じくして、とある場所に。
『吉原』と同等か、或いはそれ以上の規模を誇る遊郭が存在していた。
───『黒吉原』。
女人禁制の法のもと、美しく気高い男娼たちが毎夜男客を相手に身体を売る。
一見邪道な行為にも思えるが、人にはとても語れぬような様々な理由から此処を訪れる男は後を絶えなかった。
また、この国において世間一般的には同性愛への偏見が強いという理由から、『黒吉原』は『吉原』よりも規律が厳しく、それを犯した際の罰が重い場所でもあった。
その中でも代々男娼に言い伝えられてきた掟。
『人何たりとも客に恋慕の情を抱く可からず』。
『如何なる理由があろうとも、楼主の許可なく此処を去る可からず』。
この絶対的な掟により、夢を見ることも逃げることも許されず、『黒吉原』に縛られる男は多かったという。
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