23 / 33
禁欲生活が鬼すぎる 1日目
しおりを挟む
その夜。つまり禁欲生活1日目。
「糸川さん、帰んないんですかー?」
「……いや……もう帰る、お疲れ」
柏木がぺこりと頭を下げて帰って行くのを見送る。それからパソコンを閉じて、俺はふーっと長く息を吐いた。今日の俺は鬼のように働いた。いや、鬼に憑かれたように働いた。性的な感情なんて、この世界に存在しないかのように。
5日間禁欲。
颯と交わした、あの地獄のような誓い。
「別に……余裕、余裕!颯と付き合う前はそれこそ週1で……いや、下手したら10日とかも全然……なかったし……あ、そうだジム行こっかな、ドラマも溜まってるし!……」
ぶつぶつ言いながら帰路を急ぐ。気を紛らわせるように。
だが、家に着いてすぐだった。
気付けばスマホの通知が10件以上。
全部、颯の写真。
「……確信犯だなあの野郎」
キメ顔。笑顔。上目遣い。ちょっとあざといやつ。しかも1枚、Tシャツがずり上がって腹筋がチラ見えしてる写真とかあって、煽られ耐性ゼロの俺は天井を向く。
「……いやいやいやいやいや。だめ。だめだ。これに負けたら……負けたら……さすがに……だめ…」
大体最近ヤりすぎてたんだよ。
ほぼ毎日だったし。
感覚狂ってるだけ。
5日間くらいちんこもケツも触んなくたって別に俺は…
スマホを伏せて、息を整えて、シャワーで冷水を浴びて、耐えた。が……下半身はすでにギンッギン。
「……つら」
頬を抑え、壁に額をつけて呻く。
でもここで負けるわけにはいかない。これは我慢チャレンジなのだ。
そして、ふいにスマホが鳴った。
「……!?」
「……あ、侑成さん。お疲れさまです」
「え?あ、ああ、颯こそ……おつかれ、もう終わり?」
「はい。撮影早く終わって、今ホテルです」
少し眠そうな声。でも、どこか甘さの含まれた響き。ちょっとの電波の悪さが切なくなる。
「侑成さん……」
「ん?」
「触りたくなってます?」
「なってないけど!?」
反射的に叫んだ俺に、くすっと笑う声が返ってくる。
「……でも、侑成さん、今ギンッギンですよね?」
「……」
「だって、分かりますもん。声で分かります。あとさっきカメラ見たらめちゃくちゃ勃ってたんで」
「お前は国越えてまで何を観察してるんだよ……」
「だって、寂しいし」
なんて言う颯が可愛すぎて気がおかしくなる。
「……ちょ、やめて……可愛いのずるい……」
「我慢できなくなってる侑成さんのが可愛い」
「うるさ……」
「昨日もさ、騎乗位しながら勝手に腰振って、お尻叩かれたらイっちゃうの可愛すぎましたよ。雑魚いイき方してんなーって下から見て思ってました」
「…………やめろって、ほんとに」
「あと、最近挿れてる時下腹押すとすぐイっちゃいますよね。どこまで僕のが挿入ってんのかも丸分かりだし。あーっほんと可愛い」
「かわいくねーよバーカ、てかもう寝ろよ!明日も朝早いんだろ!」
「……はい…そろそろ寝なきゃ」
「…………うん、寝ろ寝ろ」
「そうやって僕を寝かせて抜くつもりですね」
「しねーよ、これ以上抜きたくなるのを防ぐために切るんだよ…」
スマホを握りしめたまま、ベッドに突っ伏した俺は叫びたい気持ちを必死に抑えながら、全身が熱くなるのをなんとか堪えている。
もうほんとにどうしてくれんのこいつ
別にヤりたいだけってわけじゃないのに……
床に横たわりながら、俺は天井を見つめたまま、ぐっと唇を噛んだ。触りたくて仕方がない。抱かれたくてたまらない。けれどそれが、ただの性欲みたいで、なんだか自分でも情けなくなる。
身体目当てみたいじゃん、俺……
好きだから触れたい。
好きだから近づきたい。
でもヤれないことで、ここまでストレスが溜まるなんて、想像してなかった。
颯は本当のところ、どうなんだろう。
向こうでも俺のこと、思い出したりしてるんだろうか。それとも、撮影やら人付き合いやらで忙しくて、俺のことなんて考える暇もないかもしれない。
あー、やだな……俺、こんなに颯のこと考えてんのに
おやすみとか、愛してるとか、そんなん言い合って、電話が切れたあと、頭に浮かぶのは、やっぱり颯のことばかりだった。溜め息と一緒に思いを胸の奥に押し込んで、俺はベットに潜る。
なんとか眠りにつこうとするけれど、心は不安と渇望でぐちゃぐちゃのまま。
それでも1日目は無事達成された。
続く4日間、果たして俺は耐えられるのか?
「糸川さん、帰んないんですかー?」
「……いや……もう帰る、お疲れ」
柏木がぺこりと頭を下げて帰って行くのを見送る。それからパソコンを閉じて、俺はふーっと長く息を吐いた。今日の俺は鬼のように働いた。いや、鬼に憑かれたように働いた。性的な感情なんて、この世界に存在しないかのように。
5日間禁欲。
颯と交わした、あの地獄のような誓い。
「別に……余裕、余裕!颯と付き合う前はそれこそ週1で……いや、下手したら10日とかも全然……なかったし……あ、そうだジム行こっかな、ドラマも溜まってるし!……」
ぶつぶつ言いながら帰路を急ぐ。気を紛らわせるように。
だが、家に着いてすぐだった。
気付けばスマホの通知が10件以上。
全部、颯の写真。
「……確信犯だなあの野郎」
キメ顔。笑顔。上目遣い。ちょっとあざといやつ。しかも1枚、Tシャツがずり上がって腹筋がチラ見えしてる写真とかあって、煽られ耐性ゼロの俺は天井を向く。
「……いやいやいやいやいや。だめ。だめだ。これに負けたら……負けたら……さすがに……だめ…」
大体最近ヤりすぎてたんだよ。
ほぼ毎日だったし。
感覚狂ってるだけ。
5日間くらいちんこもケツも触んなくたって別に俺は…
スマホを伏せて、息を整えて、シャワーで冷水を浴びて、耐えた。が……下半身はすでにギンッギン。
「……つら」
頬を抑え、壁に額をつけて呻く。
でもここで負けるわけにはいかない。これは我慢チャレンジなのだ。
そして、ふいにスマホが鳴った。
「……!?」
「……あ、侑成さん。お疲れさまです」
「え?あ、ああ、颯こそ……おつかれ、もう終わり?」
「はい。撮影早く終わって、今ホテルです」
少し眠そうな声。でも、どこか甘さの含まれた響き。ちょっとの電波の悪さが切なくなる。
「侑成さん……」
「ん?」
「触りたくなってます?」
「なってないけど!?」
反射的に叫んだ俺に、くすっと笑う声が返ってくる。
「……でも、侑成さん、今ギンッギンですよね?」
「……」
「だって、分かりますもん。声で分かります。あとさっきカメラ見たらめちゃくちゃ勃ってたんで」
「お前は国越えてまで何を観察してるんだよ……」
「だって、寂しいし」
なんて言う颯が可愛すぎて気がおかしくなる。
「……ちょ、やめて……可愛いのずるい……」
「我慢できなくなってる侑成さんのが可愛い」
「うるさ……」
「昨日もさ、騎乗位しながら勝手に腰振って、お尻叩かれたらイっちゃうの可愛すぎましたよ。雑魚いイき方してんなーって下から見て思ってました」
「…………やめろって、ほんとに」
「あと、最近挿れてる時下腹押すとすぐイっちゃいますよね。どこまで僕のが挿入ってんのかも丸分かりだし。あーっほんと可愛い」
「かわいくねーよバーカ、てかもう寝ろよ!明日も朝早いんだろ!」
「……はい…そろそろ寝なきゃ」
「…………うん、寝ろ寝ろ」
「そうやって僕を寝かせて抜くつもりですね」
「しねーよ、これ以上抜きたくなるのを防ぐために切るんだよ…」
スマホを握りしめたまま、ベッドに突っ伏した俺は叫びたい気持ちを必死に抑えながら、全身が熱くなるのをなんとか堪えている。
もうほんとにどうしてくれんのこいつ
別にヤりたいだけってわけじゃないのに……
床に横たわりながら、俺は天井を見つめたまま、ぐっと唇を噛んだ。触りたくて仕方がない。抱かれたくてたまらない。けれどそれが、ただの性欲みたいで、なんだか自分でも情けなくなる。
身体目当てみたいじゃん、俺……
好きだから触れたい。
好きだから近づきたい。
でもヤれないことで、ここまでストレスが溜まるなんて、想像してなかった。
颯は本当のところ、どうなんだろう。
向こうでも俺のこと、思い出したりしてるんだろうか。それとも、撮影やら人付き合いやらで忙しくて、俺のことなんて考える暇もないかもしれない。
あー、やだな……俺、こんなに颯のこと考えてんのに
おやすみとか、愛してるとか、そんなん言い合って、電話が切れたあと、頭に浮かぶのは、やっぱり颯のことばかりだった。溜め息と一緒に思いを胸の奥に押し込んで、俺はベットに潜る。
なんとか眠りにつこうとするけれど、心は不安と渇望でぐちゃぐちゃのまま。
それでも1日目は無事達成された。
続く4日間、果たして俺は耐えられるのか?
39
あなたにおすすめの小説
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる