転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

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23.会場脱出と憐れな男

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 花子はなこは、何度も炎の魔法で攻撃を仕掛けてくるリーナ嬢に、どう対処すべきか頭を抱えていた。

 下手に魔法を放てば、リーナ嬢だけでなく周囲を巻き込んでしまいそうだ。

 特に――なぜか花子はなこのすぐ傍にいる第一王子が、一番の障害だった。

(なんでこの高貴な方は逃げないの……?)

 おかげで、花子はなこは攻撃に出られず、シールドを張って防御に徹するしかなかった。

 ところが、何度魔法を放っても当たらないことに焦れたリーナ嬢の魔力は、ますます高まり、炎の勢いも増していた。

(ここが前世なら、もうスプリンクラーが作動して、上から水が……)

 ――そうか、水!

 水なら当たっても怪我はしない。

 花子はなこは前世のスプリンクラーをイメージしながら、「水」「ミズ」と文字を思い浮かべ、魔力を流した。

 その瞬間、リーナ嬢を中心に、まさにスプリンクラーのように水が降り注ぎ、炎を一気に鎮めた。


 ホッと肩の力を抜いた花子はなこの目の前には――

 ずぶ濡れになり、髪は崩れ、濡れたことでほぼ全裸同然になったリーナ嬢の姿があった。

 周囲の男性陣からは「オオーッ!」という、興奮の叫びが上がる。

 リーナは硬直して動かない。

 花子はなこはそそくさとその場を離れようとした――  
 そのとき、ようやく異母兄ブラウンが現れた。

 彼の肩は、なぜか微妙に震えていた。

(……何かを堪えてる?)

 知りたいような、知らない方がいいような――  
 花子はなこは迷うことなく、何も聞かないことにした。


 二人が会場を後にしようとしたそのとき、リーナ嬢が叫んだ。

「どこに逃げる気なの、この卑怯者! その着ているもの、魔法で作られたものじゃないでしょう!」

 その言葉に、退散しかけていた異母兄ブラウンの足が止まり、くるりと振り返る。

「ほう、何を証拠にそんな暴言を吐いてるのかな?」

「暴言じゃないわ、確信よ! 私の魔力量を上回る人間なんて、いるはずがない!」

「確信とは大きく出たね。花子はなこは、きちんと新入生歓迎用のゲートを通って会場に入ったんだよ、リーナ嬢。  
 君がそれを疑うってことは、君の婚約者を疑うってことになるんじゃないかな?」

「なっ……!」

「ちなみに、ゲート通過の記録は残っている。大学側に提出済みだし、すぐに開示できる。  
 それに、君の魔力量より花子はなこの方が多い。これは事実だよ。」

 ブラウンは、会場の警備員や案内人たちに視線を送る。

 彼らは一斉に、肯定の視線を返してきた。


「何を根拠にそんなことを……!」

「証拠はすでに大学に提出済み。後で確認してみるといい。  
 それと、そんなに君の婚約者の会社が作った魔道具の性能が悪いって言うなら――  
 ルービック家が製造している魔道具を提供してあげようか?」

 そう言い放つと、異母兄ブラウンはようやく花子はなこを連れて会場を後にした。


 二人が背を向けたことで、雰囲気に呑まれていた周囲もようやく我に返る。

 そこへ、走って駆けつけたリーナの婚約者――異父弟おとうとが、  
 彼女の肩にそっと上着をかけた。

 だが、リーナは怒り心頭。

 羽織られた上着の袖を引きちぎると、魔力を流して金属のように硬化させ、  
 去っていく二人に向かって投げつけた。

 だが――

 その布の塊は、背を向けたままの異母兄ブラウンによって、風魔法で粉々にされた。

「……俺の上着……」

 リーナの後ろには、涙目で高級上着の残骸を見つめる、哀れな男の姿があった。

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