25 / 104
25.大学での魔法学
しおりを挟む「そうだろう。さすが私の異母妹だよ。」
異母兄が会場で起こった事件の様子を話し終える頃、車はちょうどビルの中に入った。
建物に入って所定の位置に車が着いた瞬間、極彩色の光に照らされ、
その後はエレベーターのような浮力感を感じながら、景色が変わっていく。
やがて、専用駐車場に静かに停車した。
「本日はお疲れ様でした。」
セバスが声をかけ、外に出るとドアを開けてくれた。
「花子。今日は疲れただろ。」
異母兄はそっと花子の手を取り、車から優しく連れ出してくれた。
「あ……ありがとうございます。お異母兄様。」
「き……プッ……気に……しなくっていいよ……クックックッ……」
なぜか、まだ今日のことを思い出しては笑っている様子。
(そんなに面白いことあったっけ……?)
花子には、ブラウンの笑いのツボがまったく理解できなかった。
首をかしげる花子の手を引いて、ブラウンが扉を開けると――
そこには、実父が待っていた。
「お帰り、花子。本当に今日は一緒に行けなくて、とても残念だったよ。」
そう言うと、ブランは扉を入ってきた花子を、ギュッと抱きしめた。
(……え、ちょ、今ここで!?)
思いがけない父の行動に、花子は固まった。
(この年齢で親に抱きつかれるとか……あるの?)
「それにしても、その衣装は花子に本当によく似合っていて素晴らしいなぁ。
ああ、こんなに素敵な花子と一緒に行けなかったなんて、やっぱり残念だ。」
なかなか手を離そうとしないブランに、セバスがさりげなく声をかけてくれた。
「ブラン様。花子様もお疲れですから、お話は後になさってください。」
「そうだったね。ごめんよ、花子。あちらに夕食の用意をしてあるんだ。さあ、行こう。」
その後、実母も交えて四人で夕食を囲み、
花子はようやく部屋に戻ると、すぐにシャワーを浴びて――
ベッドにダイブ!
パフッ。ぼふっ。
ふかふかのベッドに包まれながら、花子はそのまま、深い眠りに落ちていった。
「花子。
花子。
花子!」
(……またか)
次の朝、肩を思いっきり揺さぶられて目を覚ますと、
目の前には、両手を腰に当てた実母が立っていた――。
花子は思いっきり肩を揺さぶられ、慌ててふかふかのベッドから起き上がると、目の前には両手を腰に当てた実母が立っていた。
「いつまで寝てるつもりなの、花子。今日から大学で講義があるでしょ? 早く食事して大学に向かわないと間に合わなくなるわよ。ブランはもうとっくに出かけたわよ。」
(へっ……大学の講義? えっと、なに?)
「ほら、早く洋服を着て食事しなさい。」
疑問符を浮かべながらも、花子は実母から渡された洋服に着替え、用意された朝食を済ませて車に乗り込んだ。
そこには、よく見知った雰囲気をまとった女性二人が、花子を囲むように両脇に座っていた。
「「おはようございます、花子様。」」
「はい! おはようございます。」
(えっと……誰だったっけ? ここまで出かかってるんだけど……)
視線を二人に向け、どう話を切り出そうか悩んでいると、先に二人の方から挨拶してきた。
「私が今後、花子様の護衛につきます、ムツキと申します。」
右隣に座った白銀の髪の細身の女性が、丁寧に頭を下げた。
「私がキサラギです。」
左隣に座っていた、同じく白銀の髪の小柄な女性も続けて挨拶した。
「「よろしくお願いします。」」
「護衛……?」
無意識に前世と同じように挨拶を返しながら、思わず口に出してしまった。
(大学に行くだけで護衛って、どういうこと?)
「花子様。セキュリティがいくらしっかりしていようと、あそこは一般庶民も講義を受けています。」
(……それが問題?)
「彼らは時に、敵対する貴族に唆されて襲ってくることがあるんです。」
「はぁー……」
(襲ってくるって言われても……)
「なんでまた私を襲う意味があるのか、分からないんだけど?」
「い・い・ですか、花子様。花子様はAAAで高校を超短期間で卒業されたお方。それだけで、相手が襲うには十分な理由になります。」
「そういうもんですか?」
「「はい、そうです。」」
なぜかその部分だけは、声を揃えて強調された。
「ですから、構内で襲われた時は、すぐに私たちをお呼びください。
もし私たちが間に合わないと感じた時は、躊躇なく相手を魔法で抹殺してください。」
「まっ、抹殺って……いくらなんでもそれはちょっと……」
「「問題なく私たちが後始末しますので、ご心配には及びません。」」
「はぁー……わかりました。では、その時はそうします……」
(いや、そんなこと起きないと思うけど……)
車が大学構内に入ると、花子は二人の護衛に付き添われて、今日受ける予定の講義が行われる教室へと向かった。
「えっと、ムツキさん。」
「ムツキで結構です。」
(自分より年上の人を呼び捨てって……)
ムツキは笑顔で、呼び捨てを促すように圧をかけてくる。
「うっ……む、ムツキ。今日は何の講義があるんでしょうか?」
「一限目は魔法学、二限目が数学、三限目が歴史となっております。各教室には私かキサラギがご案内しますので、ご安心ください。」
(教室探してウロウロしなくていいのはラッキーかも)
とはいえ、ずっと護衛に張り付かれてるって……普通なのかな?
周囲の貴族らしき人物たちに目を向けると、護衛がいない人も結構いた。
「ねえムツキさ……じゃなかった、ムツキ。貴族でも護衛つけてない人、結構いるよね?」
「すでにご結婚されている方々は、確かにつけていません。
あとは、そうですね……男性の方は護衛を付けない方もおられます。」
「なるほどね。結婚してない女性はつけるってことか。」
「「はい。」」
二人は同時に頷いた。
そんな会話をしているうちに、教室に到着。
花子がそのまま教室に入ると――
そこには、昨日魔法を放ってきたキンソン家の令嬢、リーナがいた。
目が合った瞬間、ものすごーく怖い目で睨まれた。
(あれは別に私が悪いわけじゃない……)
二人の視線が絡み合い、空気がピリッと張り詰めたその瞬間――
カーン。
始業の鐘が鳴った。
(……助かった)
教室に魔法学の先生が入ってくると、すぐに授業が始まった。
この先生、意外と話が面白く、テンポよく授業を進めていく。
……が、なぜか終始、花子を指名しては、
「この呪文はどう行使すべきか?」
「この魔法の応用は?」
と、いきなり問いかけてくる。
花子は、自分の持論――
「魔法は想像力と、構成する成り立ちの理解が重要」
と答えると、先生は目を輝かせて拍手。
「ブラボー! 素晴らしい着眼点だ!」
その後も、なぜか授業は花子を中心に進められた。
おかげで授業が終わる頃には、キンソン家のリーナ嬢の表情は――
まさに“般若”。
(いや、私、何もしてないんだけど……)
授業が終わり、教室を出ようとしたそのとき、
背後からリーナ嬢の脅し文句が飛んできた。
「いい気にならないことね。」
(……なってないし!)
今の授業で中心になったのは偶然。頼んだわけでもないし、先生が勝手に振ってきただけ。
これは正真正銘の逆恨みである。
そう言いたかったが――
リーナの顔が怖すぎて、花子はそのまま静かに退却した。
教室を出ると、ムツキがさらっと恐ろしいことを言ってきた。
「リーナ嬢は護衛を四人連れていましたが、あの程度ならキサラギ一人で十分です。」
(襲撃とか最終手段だからね!?)
思わず力説する花子に、ムツキは涼しい顔で返す。
「それは私たち護衛の仕事です。花子様は命令だけくだされば結構です。」
(いや、そもそも敵対するつもりないんだけど!?)
なぜかまったく通じない。
「花子様。二時限目の数学はこちらの教室となります。」
どうやら次の授業は、別の建物にあるらしい。
(よかった……物騒な話が打ち切られた……)
ホッとしながら、ムツキの案内で移動する。
そして、次の教室に入ると――
そこには、昨日の新入生歓迎会でリーナ嬢のパートナーをしていた、あの人物がいた。
(……え、なんでここに?)
花子の中で、またしても“平穏な大学生活”の夢が、音を立てて崩れ始めていた――。
33
あなたにおすすめの小説
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
眠りから目覚めた王太子は
基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」
ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。
「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」
王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。
しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。
「…?揃いも揃ってどうしたのですか」
王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。
永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる