転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
30 / 104

30.ブランの過去。

しおりを挟む

 実父ブランの前には、白髪を緩やかにアップにした歴史の教師――ホワイト伯爵令嬢ノイが立っていた。

「ブラン様!」

「ホワイト伯爵令嬢、久しぶりだね。今回は娘が世話になったと聞いたよ。」

「まあ、ブラン様。昔と同じように“ノイ”と呼んでくださいな。」

 実父ブランは娘を紹介しようとしたが、彼女の視線が花子はなこに向いていないことに気づいた。


 一方、まるっと無視された花子はなこは、横でその様子を観察していた。

(白髪の教師の名前はノイで、伯爵令嬢……それにしても、お父様を見る目が完全に恋する乙女なんだけど……)

(昔、何があったの……?)

 花子はなこは思わず実父ブランの表情を観察したが、特に何かを読み取ることはできなかった。


「悪いけど、君は独身だ。私が名前を呼ぶのは失礼に当たるよ。」

「まあ、何をおっしゃいますの。ブラン様はつい最近アンジェリーナ様と離婚されたとお聞きしましたわ。  
 まだ世間的にすぐ結婚は難しいでしょうけど、私は気にしませんわ。」

 実父ブランは、彼女のトンチンカンな発言に心の中で盛大に悪態をつきながらも、丁寧に説明した。


「私はすでに、ここにいる花子はなこ実母ははと再婚しているんだ。だから、君を名前で呼ぶことはできない。」

 はっきりと拒絶の意志を示す実父ブラン

「なぜですの? 昔は他の女とは寝ても、なぜ私だけはダメだったんですか?」

「ホワイト伯爵令嬢。どういう意味かな?」

「そのままの意味ですわ、ブラン様。貴族は貴族同士で結婚するべきです。庶民などと結婚するなんて、ありえませんわ!」

「ホワイト伯爵家はそうかもしれないが、ルービック家は“魔力”を最も重んじる家系なんだ。」

「そ、それなら私だって……アンジェリーナ様ほどではありませんが、負けませんわ! ですから……!」

 そう言って、ノイは実父ブランに抱きつこうとした。


「ホワイト伯爵令嬢。私は信子のぶこを愛しているんだ。」

 実父ブランは彼女の両肩を掴んで拒絶し、花子はなこを連れて背を向けた。


「知っていますのよ、ブラン様。その庶民は魔力がゼロなんでしょう?  
 でも、なぜか彼女との間にできた子どもは桁外れの魔力を持っている――それなら大丈夫ですわ。  
 その女を愛人になさればいいのですわ。子どもを認知するくらい、私は心が広いですわよ!」


 実父ブランの足がピタリと止まり、振り返ってノイを鋭く睨みつけた。

「私は、その君の考え方が――嫌いなんだ。二度と私に話しかけないでくれ。」


 それだけ言い残し、実父ブラン花子はなこを連れて足早にその場を離れた。

 ……が、舞踏会のホールを抜けて会場を出ようとしたところで、別の女性に捕まった。


「あら、本当にいたのね。私に挨拶もなしで帰るつもりかしら?」

「ナオミ。言っておくけど、南条にはさっき会って挨拶したから、この手を離してもらえないかい?」

「本当に?」

「君たち夫婦の問題に、私を巻き込むのはやめてくれ。彼の性格なら、君も知っているだろう?」

「本当、嫌になるくらい昔から私に嫉妬してくれないのよ。」

 実父ブランは溜息をついた。

「ナオミ。君は勘違いしているよ。嫉妬しないんじゃなくて、君が気づかないだけだよ。」

「ちょっと、それどういう意味?」


 ナオミが実父ブランの腕を掴んでいるところに、さっき会った渋めの男性――ナイトがやってきた。

「ナオミ。ブランの腕を離しなさい。ノイがここに来ちゃうからね。」

「ナイト。未婚の女性を名前で呼んじゃダメだって言ってるでしょ!」

 ナオミはようやく手を離し、今度は夫であるナイトの腕を掴んだ。

「そうだったね、ごめんよ。言いづらかっただけなんだ。」


 二人の口喧嘩に呆れながらも、実父ブランは目配せしてきた南条に目線で「助かった」と伝え、  
 花子はなこを連れて会場を抜けた。


 会場を出ると、まだ舞踏会は始まったばかりだったため、通路には人もまばらだった。

 実父ブランは無言のまま花子はなこを車に乗せ、ようやく口を開いた。


「……ごめんよ、花子はなこ。偉そうなことを言ったけど、たぶん歴史の単位は落としたと思うよ。  
 まさか、歴史の教師があのホワイト伯爵令嬢だったとは思わなかったんだ。」

「ですから、要注意人物がいると注意いたしましたのに……」

 アインが運転席から、ブツブツとお小言を呟いていた。


「仕方ないだろ。あのホワイト伯爵令嬢は、昔っから苦手だったんだから。」

「まあ、今回は仕方ありませんね。もう諦めて、“大学対抗魔法戦”に申し込むことをお勧めします。」

「魔法戦?」

 聞き慣れない単語に、花子はなこは首をかしげた。

(魔法戦と単位……どうつながるの?)


「確かに、あれなら単位は取れるが……危険じゃないか?」

花子はなこ様の魔力量なら、問題ありませんよ。」

「しかし……」

 渋る実父ブランを、アインがじわじわと説得していく。

 そんなやりとりをしているうちに、車は自宅へと到着した。


(……今日は一体、何のためにあんな面倒な舞踏会に行ったんだろう)

 ちょっと自問自答しながら、花子はなこはため息をついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」 ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。 「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」 王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。 しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。 「…?揃いも揃ってどうしたのですか」 王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。 永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...