転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
37 / 104

37.蔵の本

しおりを挟む

 蔵にある本というご褒美につられた花子はなこは、現在ただいま本殿横の板の間で、またもや正座をしていた。


「では、“書ノ道”を極めるために、ここに置いてある石の上で墨をすることから始めます。」

 大巫女であり、祖母でもある大海おおみのその言葉に、  
 花子はなこは心の中で(別に“書ノ道”を極めたいわけじゃないんだけど……)と叫びつつ、  
 渡された墨を手に取り、水を加えて黙々とすり始めた。


 シュシュシュ。  
 シュシュシュ。  
 シュシュシュ。  
 シュシュシュ。


 手を真っ黒にしながらも、ようやく墨汁ができあがると、  
 大巫女からお手本と筆が渡された。


「では、このお手本を見ながら、この和紙かみに心を込めて文字を書き綴りなさい。」

 花子はなこは言われるまま、お手本に書かれた文字を写し始めた。


 ……が。

 お手本の文字が、なんだかやたらと物騒だった。

「“吹雪”」「“竜巻”」「“爆炎”」「“爆雷”」――

(なんでこんな攻撃的な単語ばっかり!?)


 文字を書きながら、ついその情景を想像してしまい、  
 清書を終える頃には、想像しすぎてぐったりしていた。


 大巫女は、花子はなこの書いた文字をしばらく見つめた後、  
「大変よくできました」と一言だけ褒めて、どこかへ行ってしまった。


花子はなこ様、大丈夫ですか?」

「ム……ムツキ、お願い。お祖母ばあ様が戻ってこないか、廊下を見張ってて……」

 そう言うと、花子はなこは板の間に痺れた足を投げ出し、そのまま床にバタンと伸びた。


(くぅ……苦痛。足が……足が限界だぁー……!)

 ビンビンに痺れる足を抱え、しばらく床に転がっていた。


「あのー、花子はなこ様。あまりにもお辛いようでしたら、マッ…」

「誰にも足には触らせません!」

 ムツキの提案を即座に却下。

(痺れた足を触らせるなんて、絶対にイヤ!)


 ようやく痺れが取れると、花子はなこはスッと立ち上がり、  
 お目当ての“本でいっぱいの蔵”へと向かった。


 蔵は本殿の真裏に建てられていた。

 先ほど渡された大きな鍵で、土蔵の錠を外し、  
 重い扉をガラガラと音を立てて開ける。


 扉を開けた瞬間、どこかに仕込まれていたライトが自動で点灯し、  
 少し埃っぽい蔵の中が明るく照らされた。

 棚には、確かに大量の書物がずらりと並んでいた。


 花子はなこは、手前にあった和紙かみの束を手に取り、唖然とした。


 確かに“本”ではある。だが――

 書かれている文字が、すべて前時代に流行った文字で記されていた。


(えっ……これ、草書!?)


 そう、前世で習った、あの“草書”だった。

(げっ、草書……さすがに覚えて――)

(……あ、翻訳魔法……)

(……使えない……)


(うそでしょ!?)

 せっかく山のように本があるのに、読めないなんてありえない!


 花子はなこは、何とか読めないかと、  
 片っ端から本を手に取り、パラパラとめくってみた。


(これも草書……あれも……そ、草書じゃない!?)


 一番奥の棚にあったのは、本ではなく――墨で描かれた男女の絵。

 ページをめくるたびに、着ているものが減っていく。


(これって……春画!?)


 棚に並んでいたのは、まさかの春画コレクション。

 しかも中には、黒墨ではなく、まさかのフルカラーまで……!

 リアルすぎて、逆に卑猥ひわいさが際立っていた。


(はぁー……なんでこんなのが置いてあるのよ……)

 ふと最後のページを見ると、どこかで見覚えのあるマークが。


(あれ……これって……)


(あっ!)


 花子はなこは思い出した。

 昔、ここで同じように春画を見つけて、  
「えへへへへ」って笑っていたところを、  
 お祖母ばあ様に見つかって――


(めっちゃ怒られたんだった……!)


 その時、花子はなこは“忘却”魔法をかけられたのだ。

(……あれ? でも、ここって魔法使えないはずじゃ……)

(じゃあ、どうやって……)


 しばらく考えていると、当時の情景がふっと蘇ってきた。


(そうよ……和紙かみよ!)


 その瞬間、子どもの頃、前世知識を使って草書を難なく読んでいたことも思い出した。


(ってことは……今なら読める!?)


 花子はなこは急いで棚に戻り、先ほどの本を開いた。

 すると――

 先ほどまで読めなかった文字が、スラスラと読めるようになっていた!


「イヤッホウー!!」


 花子はなこは、そこから時間を忘れて、  
 蔵の本に夢中になって読みふけった。


 外がすっかり暗くなった頃、ムツキが心配して声をかけてきた。


花子はなこ様。お気持ちは分かりますが、さすがにそろそろ……夕食の時間に遅れてしまいます。」


「夕食……?」

 本から顔を上げた花子はなこは、名残惜しそうに本を棚に戻し、立ち上がった。


 その時、ふと――


(あれ……そういえば……)

(大学対抗の魔法戦って……)

(今日じゃなかったっけ!?)


「えっ……やばくない!?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした

果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。 そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、 あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。 じゃあ、気楽にいきますか。 *『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。

naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★ オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。 癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。 そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。 「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」 ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。

処理中です...