修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪

文字の大きさ
19 / 108

団体客とお家。

「あれ!? あの方は!」

 団体客に紛れていても目立つ長身の、推しそっくりのあのお姿は! 
 冒険者のラウルさん!

「あれ、アンタ、この間の」
「い、いらっしゃいませ!」

 自分の少し声が上擦ったのが分かる。

「えーと、そのパンに挟んだ食べ物を一個くれ」
「ハイ! ハンバーガーワン!」

 私はいそいそとパンに瑞々しいレタスを挟み、マヨネーズをトッピングし、焼き立てのハンバーグを挟んだ。

「どうぞ!」

 私は緊張で若干手が震えていたけど、何とか完成させて手渡した。
 推しそっくりな人に自分で用意したもの食べて貰える光栄!
 いや、ハンバーグ焼いたのはコウタだけど!


「お、美味いな、これ。ソースの味が絶妙だし、パンも柔らかくて」
「な、昨日は串焼き屋やってて、そっちもすげー美味かったんだよ」

 ほ、褒められたぁ~~~~!!
 ありがとうございます!!

 人が並ぶと、そんなに美味しいの!? って他の人も釣られて並ぶので、行列の出来る有名店みたいになってしまった。


 我々は何とか団体客をさばいた。

 水を飲んで小休止中。

「二人共、ごめん、串焼き屋が大繁盛の時さ、行列出来てたじゃん」

 コウタが急に謝って来た。

「行列の何が悪いの? 閑古鳥鳴くよりいいんじゃない?」

 私はそう言って首を傾げた。

「テンパって、アイテムボックスに入れて存在を忘れてたキノコの炊き込みご飯のおにぎりが、今ここにあります!」

「あ! 私達の賄い!」
「ウケる、今頃出て来た。じゃあ今の休憩時間に食べようよ、傷んでないよね?」
「アイテムボックス内は悪くならないらしいって、説明表示がある」

 そんな訳で、休憩時間に私達は今更ながらも森でゲットしたきのこ入り炊き込みご飯のおにぎりを美味しくいただいた。

「美味しい! きのこすごい秋っぽくない?」
「うん、美味しいね、きのこのおにぎり」
「ああ、思い出して良かった」

「あ、カナデッチ。 サヤ思ったんだけどぉ」
「何?」

「その髪、結ぶ位置上に変えてのポニテとか、何か可愛いアレンジにしない?
下の方で結んでジミティにする事無いじゃん、ココもう学校じゃないから、校則もないし、シャシャる先輩もいないしさ」

 確かにここはもう学校じゃないし、地味にする必要ない。
 シャシャリ出て文句言ってくる先輩もいない。

「ご、ごめん、私、ダサかったよね」

 こんなんで綺麗で可愛い紗耶香ちゃんの隣を歩いてて。
 私の髪型はものすごく地味で、オタクによくある、黒いゴムで後ろ一本に髪を結んでる髪型だった。

「そうじゃなくて、謝る必要なくて、さっきのあの人に可愛く見られようとか思わない? 
推しに似てるんでしょ? 可愛くしてアピろう?」
「あ、ああ、なるほど……」

 ただの親切だった。
 でも照れるな、好きな人の為にオシャレとか……。
 だって私の推しは今まで基本的に二次元だったから。


「と、とりあえず、後で高い位置のポニテにすればいいかな? 
今は飲食系の食事中で、かつ、仕事中だから髪扱えないけど、終わってから」
「りょ!」

 私はハンバーガーが完売してから、テントの後方で髪の結ぶ位置を高くした。

「オケ。そっちのがかわたんだよ」

 かわたんはかわいいって意味だ。
 紗耶香ちゃんは褒めてくれて、ニコっと笑った。


「今、可愛いくしても、あの人もう帰ってるけど」
「コータ君、次いつカナデっちがあのイケメンに会うか分からないから、これで良いんだって」
「そ、そうか」

「そうだ、カナデっち、このリボンあげる。ポニテに付けるね」
「え? ありがとう。このリボンはどうしたの?」

「前に学校で貰ったお菓子の包装のリボン、制服のポッケに入れっぱだったのを、売る前に取っといたやつ」
「ああ……」
紗耶香ちゃんが黒ゴムでまとめた髪の結び目にリボンで結んでくれた。

「こっちの世界じゃジミティより目立ってナンボでしょ。ほら、きゃわゆ」
「あ、ありがとう」


 市場で食材を買って、帰宅の時間。
 というか、宿に戻ってるんだけど、早くお家が欲しい。

 荷物はアイテムボックスに入るからまだマシとはいえ、徒歩移動はきつい。


「ずっとテクるのしんど」
「テクる?」
「コウタ、紗耶香ちゃんはずっと歩くのが辛いと言ってる」

 テクるはテクテク歩くとかから来てるんじゃないかな?
 知らんけど。

「あ、じゃあ、あそこの乗り合い馬車に乗ろう」
「おけ」
「OK、乗ろう」

 私達は乗り合い馬車に揺られつつ、雑談タイム。

「この世界、不動産屋ってどこにあるんだろうね?」
「もう家が欲しいって事か?」

 稼ぎ始めたばかりで贅沢なのは分かるけど。

「だって、ずっと宿生活で毎日部屋代払うより、ボロ屋でも買ってリノベーションした方がいい気がしてくる」
「リノベですごい金かかったらどうする?」

「その時は……見栄えはある程度諦める」
「ボロ屋はセキュリティやばくないか?」
「でも宿も人多いし、夜は酔っ払いがいるし」

「じゃあさ、とりま、宿の客にでも聞いてみようよ、良い物件知らないか。
サヤもお家欲しい。賃貸でもいい」
「まあ、宿の人に聞くのはあれだし、客に聞くしかないか。
家が買えたら利用客が減るってことになるし」

「じゃあ夕食時にぱくつきながら、さりげリサーチしよ」
「うん、じゃあ夕食を食べながら聞こうね」

「ついでに帰りがけの風呂屋でも聞いてみるか」
「あ、それもアリだね!」
「りょ」

 *  

 風呂屋から宿に戻る帰り道で、コウタが風呂屋で朗報を持って来た!

「家は人が住んで無いと荒れるから、安く貸すよって人がいたよ」

「急展開!」
「マ!? 風呂屋で裸の付き合いするとそんなミラクル起きる訳!?」

「息子さんが旅の商人で、長く留守をするんだって。何しろ飛行機も電車も無い世界での荷馬車で移動だし、かなりの時間がかかるらしい」
「わー、これは手土産渡してお礼しなきゃね」

 家主のご家族にハムでも渡すべきかな?

「まだ物件見てもないけど、即決でおけ?」
「贅沢は言ってられないし。家の前の畑もいじっていいらしいから良いのではないかと」
「え!? 家庭菜園も可!? かなりラッキーじゃない!?」
「サヤも早く見たい! 宿屋ドロンして早く物件見に行こう!」

「え!? ドロンてバックれ!? 忍者!?」

 紗耶香ちゃんの発言にびっくりするコウタ。

「いや、さよならバイバイの意味で普通に精算後、チェックアウトの意味だと思う」
「うん、チェックアウトね、ごめんコータ君」

 キャハハと笑う紗耶香ちゃん。

「ああ、焦ったわ~~」

 その後、世話になった赤星亭からさよならして、私達はコウタが風呂屋で出会ったおじさん紹介の物件へ行く事になった。
感想 113

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!