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乙女の涙。
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朝食の準備中。
キッチンでご飯を炊いてる私の所にコウタが来た。
ん? 何か顔色悪いっぽいな?
「コウタ、おはよ~~。起きたんだね」
「お、おはよう。カナデ、あの、後で俺を殴ってくれていいから、俺の願いを聞いてくれないか?
こんな事、他に頼める人いなくて」
コウタが申し訳なさそうな顔をして、私の目の前で二つの小瓶を持ってお伺いを立てている。
「急に何? な、内容によるけど、一体何?」
「これ、この小瓶に涙を入れてくれないか?」
「は?」
「バジリスクの石化対策だよ、乙女の涙ってのが必要らしくて、もし、しょ……処女だったら……」
コウタの青かった顔が赤くなった。
「乙女の……涙って、それ、すでに何か液体が入ってるようだけど?」
「神殿で売ってる聖水と、しょ、処女の涙をブレンドする必要があって……」
「乙女のって、それ、清らかな乙女のって事なら、私のような……その、しょ……未経験であっても、オタクの涙で効果ある訳!?
神殿の巫女さんに頼んだ方が良くない?」
「でも、神殿ってもしかしたら男に暴力を受けて駆け込んだ人とか、自分で傷物になったからもうお嫁に行けないと思い込んだ人が来てる可能性ないか?」
「ああ、駆け込み寺みたいに……」
「かと言って、全く知らない神殿の人に、処女の巫女さんを選んで涙くれなんて、頼めないし」
「……」
「後で俺を殴ってくれていいから、頼む」
そう言ってコウタは台所で膝をついたと思ったら、いきなり私に向かって土下座をした!
「ちょっと! 土下座なんてやめてよ!」
「俺には、これくらいしか、できないから!」
「……こんな……オタクの涙に命かけるなんて不安でしかないし……今すぐにここで涙流せと言われて出るような女優でもないんだけど!?」
「ここ、瓶を置いとくから……」
コトリ。
コウタはそう言って体を起こし、台所のテーブルに小瓶を二つ置いた。
「ちょっと、待って、その薬? どうやって使うの? 石化したら体にかけるの? 誰かが飲ませるの?」
「これは予防薬だからバジリスクの森に入る前に飲むんだよ」
「……バジリスクの森に入ったコウタの両親は何の対策も無しにあの森に入ったのかしら……」
「知らん、聖水買う金が無かった可能性も有るし、まさかバジリスクに遭遇するとは思って無かったのかも」
「その聖水ってお高いの?」
「聖水にもグレードがあるらしくて、上級神官とか下級神官、下級巫女とじゃ効果が違うらしく」
「ソレ、高いやつ?」
「そこそこ、かな、一つ金貨一枚もするし。でも命には変えられないし」
「……コウタが私の涙入りの聖水飲むのか……」
「し、仕方ないだろ。石化とか困るし」
「てかさ! なんで瓶は二個なの? 私と紗耶香ちゃんの分は!?」
「よ、予備はあるけど、本当に一緒に森に来るつもりか?」
コウタはアイテムボックスからもう2本の聖水の小瓶を出して来た。
「なるべく行けるようにレベルアップ頑張るし……」
「朝から二人で何騒いでんの~~?」
紗耶香ちゃんが欠伸をしながら台所に来た。
ライ君は庭にいたらしく、玄関から入って来た。
「バジリスクの石化対策に乙女の……処女の涙が必要なんだって、コウタが私に頼んで来たのよ」
「はあ? 乙女の……?」
「こんなオタクの涙で大丈夫か?って、清らかでもない私は心配なんだけど、神殿の巫女さんも処女とは限らないって、言われて」
「清らかでもないって、カナデっち、彼氏いたの?」
「そういう意味では無くて!
私は漫画やゲームで悪役に惹かれる事もあるって話!
清らか判定が男性経験さえ無ければ、それで本当にセーフなのかって事で!」
私はヤケになって叫んだ。
「ああ、そういう……」
「心配なら女の赤ちゃんいて、泣き喚いてるとこにお金払って、涙貰いに行くとか、赤ちゃんなら良く泣くし、悪も善もわからない時期だろうし」
「ああ……」
「なるほど! 赤ちゃん! 処女確定!」
その手があったか! と、コウタは声を上げた。
「あ、でも赤ちゃんのお母さんに迷惑では?」
コウタの心配に紗耶香ちゃんが答えた。
「そりゃ、今からわざわざ大事な赤ちゃんを泣かせてくださいとは言えないけど、子供育てるのにもお金かかるし、お金払いますって言えば、助かるって思うかもしれないよ」
「確かに……。赤ちゃんってお母さんじゃなくてお父さんが代わりに抱っこしただけで泣く事はあるよね」
私はふと地球での事を思い出して言った。
「あ、そういえば、サヤがお風呂屋で赤ちゃんを探そうか、赤ちゃん連れたお母さん、いた事あるよ」
「分かった、でも私、自分の分は赤ちゃんに申し訳ないから自分で入れてみよ。効かなくても自己責任だし」
「それなら俺の分もカナデが入れてくれれば! よその母子に迷惑かけずに済むんだが!」
「だから、リスク軽減よ! 何種かあった方がいいでしょ」
「何種か……じゃあ赤ちゃんのはあんまり沢山頼むの気がひけるから一本だけ。残りは全部カナデに頼むよ。俺はお前にかけるよ、お買い物スキルで食品引くとか、ある意味選ばれし者だろ?」
「突然ギャンブラーみたいな事言い出すじゃないの」
「じゃあ、カナデっちばかりに負担かけるのもなんだし、サヤも自分のは自分で入れる」
紗耶香ちゃん! 処女なんだ! そんなに可愛いのに!!
私とコウタがポカンとした顔で紗耶香ちゃんを見たせいで、あ! 察し! みたいな事になった。
「サヤが、非処女見えたんだね? いいよ、分かってる」
紗耶香ちゃんはクスッと笑った。怒ってる風では無いけど。
「いやいや、だって紗耶香ちゃん、可愛いし! 学校でもモテてたし!」
私は慌てた。コウタも慌てた。
「そうだよ! 水木さん、美人で男子に人気あったから!」
「いいよ、いいよ、気にしてないカラ~」
そんな私達を見ながら、ライ君が冷静に口を開いた。
「食事……お米……大丈夫デスカ?」
「あ! 炊けた!」
「そ、そうだ、とりあえず飯食おう!」
「ね~~、そう言えば今朝のメニュー何?」
「わかめスープとベーコンエッグのつもりで! 今から焼くよ!」
「あ、すまん、カナデ、海苔かふりかけをスキルで買ってくれないか?」
「分かった! パンも昼用に買っておくわ」
キッチンでご飯を炊いてる私の所にコウタが来た。
ん? 何か顔色悪いっぽいな?
「コウタ、おはよ~~。起きたんだね」
「お、おはよう。カナデ、あの、後で俺を殴ってくれていいから、俺の願いを聞いてくれないか?
こんな事、他に頼める人いなくて」
コウタが申し訳なさそうな顔をして、私の目の前で二つの小瓶を持ってお伺いを立てている。
「急に何? な、内容によるけど、一体何?」
「これ、この小瓶に涙を入れてくれないか?」
「は?」
「バジリスクの石化対策だよ、乙女の涙ってのが必要らしくて、もし、しょ……処女だったら……」
コウタの青かった顔が赤くなった。
「乙女の……涙って、それ、すでに何か液体が入ってるようだけど?」
「神殿で売ってる聖水と、しょ、処女の涙をブレンドする必要があって……」
「乙女のって、それ、清らかな乙女のって事なら、私のような……その、しょ……未経験であっても、オタクの涙で効果ある訳!?
神殿の巫女さんに頼んだ方が良くない?」
「でも、神殿ってもしかしたら男に暴力を受けて駆け込んだ人とか、自分で傷物になったからもうお嫁に行けないと思い込んだ人が来てる可能性ないか?」
「ああ、駆け込み寺みたいに……」
「かと言って、全く知らない神殿の人に、処女の巫女さんを選んで涙くれなんて、頼めないし」
「……」
「後で俺を殴ってくれていいから、頼む」
そう言ってコウタは台所で膝をついたと思ったら、いきなり私に向かって土下座をした!
「ちょっと! 土下座なんてやめてよ!」
「俺には、これくらいしか、できないから!」
「……こんな……オタクの涙に命かけるなんて不安でしかないし……今すぐにここで涙流せと言われて出るような女優でもないんだけど!?」
「ここ、瓶を置いとくから……」
コトリ。
コウタはそう言って体を起こし、台所のテーブルに小瓶を二つ置いた。
「ちょっと、待って、その薬? どうやって使うの? 石化したら体にかけるの? 誰かが飲ませるの?」
「これは予防薬だからバジリスクの森に入る前に飲むんだよ」
「……バジリスクの森に入ったコウタの両親は何の対策も無しにあの森に入ったのかしら……」
「知らん、聖水買う金が無かった可能性も有るし、まさかバジリスクに遭遇するとは思って無かったのかも」
「その聖水ってお高いの?」
「聖水にもグレードがあるらしくて、上級神官とか下級神官、下級巫女とじゃ効果が違うらしく」
「ソレ、高いやつ?」
「そこそこ、かな、一つ金貨一枚もするし。でも命には変えられないし」
「……コウタが私の涙入りの聖水飲むのか……」
「し、仕方ないだろ。石化とか困るし」
「てかさ! なんで瓶は二個なの? 私と紗耶香ちゃんの分は!?」
「よ、予備はあるけど、本当に一緒に森に来るつもりか?」
コウタはアイテムボックスからもう2本の聖水の小瓶を出して来た。
「なるべく行けるようにレベルアップ頑張るし……」
「朝から二人で何騒いでんの~~?」
紗耶香ちゃんが欠伸をしながら台所に来た。
ライ君は庭にいたらしく、玄関から入って来た。
「バジリスクの石化対策に乙女の……処女の涙が必要なんだって、コウタが私に頼んで来たのよ」
「はあ? 乙女の……?」
「こんなオタクの涙で大丈夫か?って、清らかでもない私は心配なんだけど、神殿の巫女さんも処女とは限らないって、言われて」
「清らかでもないって、カナデっち、彼氏いたの?」
「そういう意味では無くて!
私は漫画やゲームで悪役に惹かれる事もあるって話!
清らか判定が男性経験さえ無ければ、それで本当にセーフなのかって事で!」
私はヤケになって叫んだ。
「ああ、そういう……」
「心配なら女の赤ちゃんいて、泣き喚いてるとこにお金払って、涙貰いに行くとか、赤ちゃんなら良く泣くし、悪も善もわからない時期だろうし」
「ああ……」
「なるほど! 赤ちゃん! 処女確定!」
その手があったか! と、コウタは声を上げた。
「あ、でも赤ちゃんのお母さんに迷惑では?」
コウタの心配に紗耶香ちゃんが答えた。
「そりゃ、今からわざわざ大事な赤ちゃんを泣かせてくださいとは言えないけど、子供育てるのにもお金かかるし、お金払いますって言えば、助かるって思うかもしれないよ」
「確かに……。赤ちゃんってお母さんじゃなくてお父さんが代わりに抱っこしただけで泣く事はあるよね」
私はふと地球での事を思い出して言った。
「あ、そういえば、サヤがお風呂屋で赤ちゃんを探そうか、赤ちゃん連れたお母さん、いた事あるよ」
「分かった、でも私、自分の分は赤ちゃんに申し訳ないから自分で入れてみよ。効かなくても自己責任だし」
「それなら俺の分もカナデが入れてくれれば! よその母子に迷惑かけずに済むんだが!」
「だから、リスク軽減よ! 何種かあった方がいいでしょ」
「何種か……じゃあ赤ちゃんのはあんまり沢山頼むの気がひけるから一本だけ。残りは全部カナデに頼むよ。俺はお前にかけるよ、お買い物スキルで食品引くとか、ある意味選ばれし者だろ?」
「突然ギャンブラーみたいな事言い出すじゃないの」
「じゃあ、カナデっちばかりに負担かけるのもなんだし、サヤも自分のは自分で入れる」
紗耶香ちゃん! 処女なんだ! そんなに可愛いのに!!
私とコウタがポカンとした顔で紗耶香ちゃんを見たせいで、あ! 察し! みたいな事になった。
「サヤが、非処女見えたんだね? いいよ、分かってる」
紗耶香ちゃんはクスッと笑った。怒ってる風では無いけど。
「いやいや、だって紗耶香ちゃん、可愛いし! 学校でもモテてたし!」
私は慌てた。コウタも慌てた。
「そうだよ! 水木さん、美人で男子に人気あったから!」
「いいよ、いいよ、気にしてないカラ~」
そんな私達を見ながら、ライ君が冷静に口を開いた。
「食事……お米……大丈夫デスカ?」
「あ! 炊けた!」
「そ、そうだ、とりあえず飯食おう!」
「ね~~、そう言えば今朝のメニュー何?」
「わかめスープとベーコンエッグのつもりで! 今から焼くよ!」
「あ、すまん、カナデ、海苔かふりかけをスキルで買ってくれないか?」
「分かった! パンも昼用に買っておくわ」
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