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孤児達とおねーさんとおにーさん。
「カナデっち、見て! 公演のチラシ貰った」
「あのオペラ歌手の人のじゃないの」
沙耶香ちゃんの手にあったチラシに描かれた肖像画は先日ネイルをしたオペラ歌手だった。
「うん。あの劇団さ、この人の前座で急遽公演が決まったのに、主役とヒロインの衣装箱開けたら服に虫食い穴があったとかで、ヒーローのズボンとヒロインのシャツをサヤ達が縫う事になったって訳よ」
「脇役ならともかく主役は穴開き衣装じゃあカッコ付かないって事ね」
「そゆこと」
ダダダッっとハンドミシンが凄い速さで布を縫ってくれる
「この二人分の衣装で特急料金銀貨8枚て高いのか安いのかよく分からないよね」
「相場調べる時間もなかったし、仕方ないよ」
まあ、実はボランティア価格だったら笑うけど。
「よーし、出来た」
「じゃあ早速納品に行こうか」
コウタとライ君は今日も修行の為に森へ行ってるから、私達だけで行く。
「よし、頑張ったご褒美にお菓子買ってアイテムボックスに入れておこう、そうすればいつでも食べれるし」
「いいね! 冴えてる! サヤも化粧品頼まれる可能性考えて在庫多めに仕入れて行こう」
「華やかが売りの人達だものね」
スキルショップを開いて、私達はそれぞれ買いたいものを買って、家から出て納品に向かった。
衣装の納品に行ったら縫い目も均一なのに驚きの速さだと感謝された。
ミシンの力だよ。
感謝されたお陰で沙耶香ちゃんの化粧品も売れた。
売れ筋は口紅とお肌のメンテ用の化粧水、乳液などだった。
*
帰り道、街道で騒ぎがあった。
「この手癖の悪い盗っ人のクソガキが! 手首を切り落としてやる!」
「やめろ! 離せ!」
あ! あの子! またあんなことして!
金持ちっぽい男性に捕まっている!
「あの子先日のスリ少年じゃん!」
私達は少年の元へ走った。
「もう! だからそんなことしちゃだめだって言ったでしょ!
すみません、許してあげてください! よく叱っておきます!」
「叱っても無駄だったんだろう!」
う! ごもっとも!
「た、ただでとは言いません。
女性に大人気のお菓子を差し上げます、これで怒りを鎮めて下さいませ!
高級感あふれるチョコレートは甘い物が好きな意中の女性に贈れば喜ばれるでしょう!」
私はアイテムボックス隠蔽の為の偽装用の鞄からチョコレートを出し、怒り心頭の男性を宥める為に差し出した。
「む!?」
「さらに、今その子を見逃していただけたなら
貴族女性も愛用の素敵な化粧品もおつけします!」
紗耶香ちゃんから援護射撃的なおまけがついて来た!
「ほら、今アタシがつけてる口紅、と、隣の彼女がつけてる唇の色! 綺麗でしょう!?」
真剣な場面だから沙耶香ちゃんも敬語を使っている。えらい。
「!……この化粧品はミランダが欲しがっていたのにすぐに売り切れて買えなかったとかいう、あれと同じ!」
おや!?
「あ! 袋もおつけします!」
私達は慌てて化粧品とチョコレートを袋に詰めこむ。
「優しく美しいお嬢さん達に感謝するんだな、小僧、だが二度目はないぞ」
「ありがとうございます!」
男性は掴んでいたスリ少年の手を離して、チョコレートと化粧品を入れた袋を受け取り、去っていった。
「だから、危ないのよ、盗みは。まともに働いた方がいいよ」
「俺達みたいなみなし子をどこの誰が雇ってくれるんだよ!
どこに行っても子供だからって追い返されるのに!」
この子は見た目で11歳くらいだ。
10歳以上で下働きすら無理なら、信用が全く無いのかも。
「私達で雇う? 掃除とか使いっ走りの商品納品くらいなら出来ると思うし」
「うん、コータ君もわかってくれると思う」
「あ、あんた達が俺を雇ってくれるのか?」
「あんた達って言わないで、せめておねーさん達でよくない?」
私はアンタ呼ばわりが、好きじゃないから、きっぱりと言った。
「お、おねーさん」
「ヨシ!」
「そう言えば、少年の名前は?」
沙耶香ちゃんが首を傾げて問うた。
「アルフィオ」
「オッケー、アルフィオね」
「なんでもやるから、チビ達にパンでも買ってやりたいんだけど……」
バツの悪そうな顔をして、アルフィオはそう言った。
これもお決まりのパターンで、スリの少年には養ってるストリートチルドレン達がいたのだった。
「パンなら私が持ってるから、仲間のとこに案内して」
アルフィオは私の言葉に頷いて、案内してくれると言った。
早速孤児達のたまり場について行けば、そこは治安の悪そうなスラム街だった。
普通に怖い。
街角には娼婦らしき人も立っているし、酒瓶片手に地べたに座り込んでるやからもいる。
私と沙耶香ちゃんは周囲のガラの悪そうな男達となるべく目を合わさないように早歩きで、向かった。
廃材で作ったようなほったて小屋に着いた。
そこには痩せ細り、ボロを纏う、いかにもストリートチルドレンな子達が5人いた。
ワオ、子沢山……。
アルフィオはこの孤児たちの中でも親分的存在のようだった。
私はスキルで買い置きしてたあんパンと牛乳を子供達に配った。
「そう言えばここって、孤児院とかないの?」
「孤児院は酷いとこだから抜け出して来たんだ」
手首落とされる危険が伴うスリ生活より酷いの?
異世界孤児院、怖いなあ!
コウタがライ君と帰宅したので、孤児達の事を相談した。
「そうだね、貴族の屋敷とかの使いは無理だけど八百屋、肉屋、雑貨屋さんとか、竹細工頼んでる職人のとことか、納品書渡してサイン貰って、お金は後で俺達が時間のある時に貰いに行けばいいし、いいんじゃないか?」
スリの子にいきなりお金のやり取り任せるのは怖いけど、それなら確かに……。
「てかさ! コータ君、アルフィオをお風呂に入れてあげてくれないかな!?」
確かに臭う。
雨に濡れた犬みたいな匂いがする。
「ああ、ライと一緒に風呂屋に連れてくよ。途中の店で着替えも買ってやるからついておいで」
「はーい」
コウタがアルフィオに優しくしてくれて良かった、思えば親がいなくて苦労したのはコウタも同じだ。
遊ぶ金欲しさに人のお金を盗んでたとかじゃないなら、更生の機会をあげたい。
私と沙耶香ちゃんも、コウタの両親を取り戻せるように、ガチの孤児にさせないように、バジリスクの森攻略の為の修行も頑張らないとね。
「あのオペラ歌手の人のじゃないの」
沙耶香ちゃんの手にあったチラシに描かれた肖像画は先日ネイルをしたオペラ歌手だった。
「うん。あの劇団さ、この人の前座で急遽公演が決まったのに、主役とヒロインの衣装箱開けたら服に虫食い穴があったとかで、ヒーローのズボンとヒロインのシャツをサヤ達が縫う事になったって訳よ」
「脇役ならともかく主役は穴開き衣装じゃあカッコ付かないって事ね」
「そゆこと」
ダダダッっとハンドミシンが凄い速さで布を縫ってくれる
「この二人分の衣装で特急料金銀貨8枚て高いのか安いのかよく分からないよね」
「相場調べる時間もなかったし、仕方ないよ」
まあ、実はボランティア価格だったら笑うけど。
「よーし、出来た」
「じゃあ早速納品に行こうか」
コウタとライ君は今日も修行の為に森へ行ってるから、私達だけで行く。
「よし、頑張ったご褒美にお菓子買ってアイテムボックスに入れておこう、そうすればいつでも食べれるし」
「いいね! 冴えてる! サヤも化粧品頼まれる可能性考えて在庫多めに仕入れて行こう」
「華やかが売りの人達だものね」
スキルショップを開いて、私達はそれぞれ買いたいものを買って、家から出て納品に向かった。
衣装の納品に行ったら縫い目も均一なのに驚きの速さだと感謝された。
ミシンの力だよ。
感謝されたお陰で沙耶香ちゃんの化粧品も売れた。
売れ筋は口紅とお肌のメンテ用の化粧水、乳液などだった。
*
帰り道、街道で騒ぎがあった。
「この手癖の悪い盗っ人のクソガキが! 手首を切り落としてやる!」
「やめろ! 離せ!」
あ! あの子! またあんなことして!
金持ちっぽい男性に捕まっている!
「あの子先日のスリ少年じゃん!」
私達は少年の元へ走った。
「もう! だからそんなことしちゃだめだって言ったでしょ!
すみません、許してあげてください! よく叱っておきます!」
「叱っても無駄だったんだろう!」
う! ごもっとも!
「た、ただでとは言いません。
女性に大人気のお菓子を差し上げます、これで怒りを鎮めて下さいませ!
高級感あふれるチョコレートは甘い物が好きな意中の女性に贈れば喜ばれるでしょう!」
私はアイテムボックス隠蔽の為の偽装用の鞄からチョコレートを出し、怒り心頭の男性を宥める為に差し出した。
「む!?」
「さらに、今その子を見逃していただけたなら
貴族女性も愛用の素敵な化粧品もおつけします!」
紗耶香ちゃんから援護射撃的なおまけがついて来た!
「ほら、今アタシがつけてる口紅、と、隣の彼女がつけてる唇の色! 綺麗でしょう!?」
真剣な場面だから沙耶香ちゃんも敬語を使っている。えらい。
「!……この化粧品はミランダが欲しがっていたのにすぐに売り切れて買えなかったとかいう、あれと同じ!」
おや!?
「あ! 袋もおつけします!」
私達は慌てて化粧品とチョコレートを袋に詰めこむ。
「優しく美しいお嬢さん達に感謝するんだな、小僧、だが二度目はないぞ」
「ありがとうございます!」
男性は掴んでいたスリ少年の手を離して、チョコレートと化粧品を入れた袋を受け取り、去っていった。
「だから、危ないのよ、盗みは。まともに働いた方がいいよ」
「俺達みたいなみなし子をどこの誰が雇ってくれるんだよ!
どこに行っても子供だからって追い返されるのに!」
この子は見た目で11歳くらいだ。
10歳以上で下働きすら無理なら、信用が全く無いのかも。
「私達で雇う? 掃除とか使いっ走りの商品納品くらいなら出来ると思うし」
「うん、コータ君もわかってくれると思う」
「あ、あんた達が俺を雇ってくれるのか?」
「あんた達って言わないで、せめておねーさん達でよくない?」
私はアンタ呼ばわりが、好きじゃないから、きっぱりと言った。
「お、おねーさん」
「ヨシ!」
「そう言えば、少年の名前は?」
沙耶香ちゃんが首を傾げて問うた。
「アルフィオ」
「オッケー、アルフィオね」
「なんでもやるから、チビ達にパンでも買ってやりたいんだけど……」
バツの悪そうな顔をして、アルフィオはそう言った。
これもお決まりのパターンで、スリの少年には養ってるストリートチルドレン達がいたのだった。
「パンなら私が持ってるから、仲間のとこに案内して」
アルフィオは私の言葉に頷いて、案内してくれると言った。
早速孤児達のたまり場について行けば、そこは治安の悪そうなスラム街だった。
普通に怖い。
街角には娼婦らしき人も立っているし、酒瓶片手に地べたに座り込んでるやからもいる。
私と沙耶香ちゃんは周囲のガラの悪そうな男達となるべく目を合わさないように早歩きで、向かった。
廃材で作ったようなほったて小屋に着いた。
そこには痩せ細り、ボロを纏う、いかにもストリートチルドレンな子達が5人いた。
ワオ、子沢山……。
アルフィオはこの孤児たちの中でも親分的存在のようだった。
私はスキルで買い置きしてたあんパンと牛乳を子供達に配った。
「そう言えばここって、孤児院とかないの?」
「孤児院は酷いとこだから抜け出して来たんだ」
手首落とされる危険が伴うスリ生活より酷いの?
異世界孤児院、怖いなあ!
コウタがライ君と帰宅したので、孤児達の事を相談した。
「そうだね、貴族の屋敷とかの使いは無理だけど八百屋、肉屋、雑貨屋さんとか、竹細工頼んでる職人のとことか、納品書渡してサイン貰って、お金は後で俺達が時間のある時に貰いに行けばいいし、いいんじゃないか?」
スリの子にいきなりお金のやり取り任せるのは怖いけど、それなら確かに……。
「てかさ! コータ君、アルフィオをお風呂に入れてあげてくれないかな!?」
確かに臭う。
雨に濡れた犬みたいな匂いがする。
「ああ、ライと一緒に風呂屋に連れてくよ。途中の店で着替えも買ってやるからついておいで」
「はーい」
コウタがアルフィオに優しくしてくれて良かった、思えば親がいなくて苦労したのはコウタも同じだ。
遊ぶ金欲しさに人のお金を盗んでたとかじゃないなら、更生の機会をあげたい。
私と沙耶香ちゃんも、コウタの両親を取り戻せるように、ガチの孤児にさせないように、バジリスクの森攻略の為の修行も頑張らないとね。
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