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82 レヴィーノ

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 俺達は短期旅行として、モンサンミッシェルみたいな島にある、古い神殿に向かう事になった。
 
 潮が引いてる時に道が現れて渡れるって場所だ。
 今の時期、ちょうどタイミングがいいらしい!
 あと、島の名前はレヴィーノなんだってさ。


「新入りのドールのフェリはどうするの? 連れてくの?」
「相変わらず人前では動かないのでトートバッグに入れて連れて行くよ。一人でお留守番も寂しいだろうし」
「ふーん」


 またも船の護衛をジェラルドとミレナが冒険者として引き受けて、伯爵領の外まで大きな船で白波を立てながら数日間、海路を進んだ。

 大きな船を降りてから、最寄りの漁村の船着き場に降り立った。
 そして海辺の撮影や食事などをしながら浜辺で潮が引くのを待った。


 * * *

 ……ファンタスティック!
 これが見たかった!!
 俺は再びカメラを構えた!


「出て来た! 道だ!!」
「渡るなら今がチャンスだな!!」
「ワフ!!」
「行くわよ」


 そして海龍を祀る神殿のある島にたどり着いた。徒歩で。


「っしゃあ! 上陸!」
「陸を歩いて来たけど……」

 ミレナにツッコまれた。

「普段はあそこ海の中じゃないか。細けーことはいいんだよ」
「まあ、いいけどね」

 俺は廃墟となっている白い神殿を見上げた。

「それより本当に人がいないせいで神殿も崩れて廃墟だな。十分絵になるけど」
「廃墟でも魔力の残滓はあるようだぞ」
「ほんとか、ジェラルド! じゃあミラの充電を試みてみよう」

 俺はどこにミラを座らせるかキョロキョロと周囲を見渡した。


「そのへんで大人しくしていればいいですか?」

 ミラは祈りの場のような、場所を指差した。 
 眼の前に海龍の像がある。


「そうだな、もらうだけでは申しわけないし、お供えもしようか、海龍って普段は何を食べてるんだろう」
「海にいるなら海の生物だろう」

「そういやそうだな。でも逆にたまには山の幸とか食べたいとかないかな? 茸とか青い鹿の肉も実はまだある」
「いいんじゃないか? サメだって肉が落ちてくれば食うからな」


 そういや種類にもよるが鮫は人間も襲うよな。
 食料として。
 シャチだってアザラシを食ったりするし。
 怖いなぁー、鮫や魔物に遭遇しませんように!

 結局、俺は祭壇に肉、果物、ビールを置くことにした。


「このビールの白い泡が白波のようで美しいから気に入る可能性がある!」
「こじつけじゃないの、でもそのビールは確かに美味しかったから、そう悪くもないかもね」

 神様系は御酒が好きだからな!

 * *

 しばらく撮影大会をした。
 白い海鳥と青い海と夏空と廃神殿がマジで映えるなぁ。



「ミレナ、そこに立ってくれ。
 おお、いい風が吹いてるし、白い海鳥が飛んでていい映像が撮れる」
「風が強いんだけど~」


 ミレナの長いキツネ色の髪が海風に吹かれて乱れた。

 しばらく撮影しまくってから、軽食を食べることにした。
 チキンとサンドイッチを食べよう。

 俺は魔法の風呂敷からキャンプセットを取り出し、廃神殿にテーブルと椅子を設置した。

 俺は魔法の風呂敷にサンドイッチとフライドチキンをバスケットに入れて来ていたのだ。

 飲み物はビールとジュース。
 三人で美味しくサンドイッチやチキンを食べていたのだが、急に、バサッ!! っと飛来した鳥に俺のハムサンドが奪われた!!



「ああっ! あれはトンビ!?」
「ワン!!」
「あはは! ショータはやっぱりどんくさいわね、トンビに食べ物を奪われて」

 ミレナがクスクス笑ってる。


「俺はこのエビフライサンドを決して奪わせはしない、トンビなんぞに」


 何故かかっこよいようでそうでもないセリフを吐き、ジェラルドはトンビを警戒しつつエビフライサンドを死守していた。


「ゆ、油断した!」

 俺はハムサンドを奪われた無念を吐露しているが、

「気をつけなさいよ~」

 ミレナは相変わらず楽しそうに笑っている。
 機嫌がいいなら良かった。


「あ! ミラが!!」


 違うトンビがお供えの食べ物を守るミラの方に向かった!!


「これはお前達、トンビ用じゃありませんよ!」


 ミラは糸を張り巡らせてお供え物を守っていた。
 え、えらい。
 けど、充電をするつもりが逆に魔力を使ってしまった。

 ドーム状に囲った糸にはばまれ、あげくラッキーに吠え立てられて、トンビもお供え物を諦めたようだった。

「でも今回はミラも防戦一方だったわね、トンビに気を使ったの?」
「トンビくらい殺ろうとすれば可能ですが、ここは神殿なので一応流血沙汰を避けました」
「えらーい、かしこーい」

 俺はミラの聡明さを讃えた。

「なるほど、トンビよりここが神殿だから遠慮したのね」

 ミレナはコンビニのたまごサンドをもっきゅもっきゅと食べながらも感心していた。

「でも、結局食べ物を置きっぱなしだと腐ったりするし、鳥にやった方がいいんだろうか。
 墓参りだと、帰りに回収しないとカラスとかが荒らすからお供え物の食べ物とかは持ち帰れって言われているが」

「じゃあこうしましょう」

 ミレナがいつの間にか縁ったのか、赤い顔をしつつビールを手にして、海龍の像の大きな口の中にビールをダバァ!! しやがった。

「ああっ! やりやがった、こいつ!」

 ジェラルドが呆れた顔をした。

「ほらぁ! これで海龍もビール飲めたわよ!」
「そ、そうだよな、悪気は無いんです!
 飲ませてさしあげただけなんで、許してください」

 俺は一応、海龍の像に謝った。
 でも酒好きだった故人の墓に酒をかけて飲ませてやるってやり方は地球にもあったから、セーフだと思いたい。

「さらにビールに合うチキンをお口に入れて差し上げますわぁ」
「ああっ! また!」

 ミレナは追加でチキンも海龍像の口に入れてしまったのだ。

「ミレナ、海龍の口が汚れるから、それは後で回収するだんぞ」
「可哀想よーちゃんと食べさせてあげないと~」
「駄目だ、この狐女は酔っている」
「御口を拭きます」


 ミラはややして、ミレナが突っ込んだチキンを取り出してウェットティッシュで口の中を丁寧に拭いた。


「せっかく口の中が美味しかっただろうに、拭くのぉ~?」
「しかしキレイにしとかないと、像は」
「もう味わったんじゃないかと思いますので」


 俺とミラでくだを巻くミレナを宥めた。
 帰りはミレナが酔っていたので、ジェラルドにトートバッグごとフェリを預け、俺がミレナを背負って本来は海の道、砂浜を歩いて漁村に帰った。

 お供え物は、そういえば回収を忘れた。
 ミレナが酔っていて焦ったからだ。
 腐らないといいけど、夏だし、やや心配。

 いや、多分トンビあたりが食うだろう。

 ところでミレナを背負って砂浜を歩いたので、俺の腰が死んだ。

 それで仕方なく貴重なエリクサーを一口飲んでしまったんだが、わりと美味しかったし、腰は復活した。


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