パラレヌ・ワールド

羽川明

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五章 「失われた色彩」

その三

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 どう考えてもやっていない遊園地にわざわざ現地集合したのは、一応、道徳の時間三連休の宿題として出た太陽系戦争についてのレポートをまとめるためというのももちろんある。
 けれど、そんなものは別に今日じゃなくたっていい。というか、近場の図書館で軽く本を読み漁るだけで良い。なんならネットでそっぽいものを写せばいい。
 僕ら二人が魚々乃女さんの誘いを断り切れず現地集合したのは、二時間以上早く現地で待っていたらしい魚々乃女さんに、電話越しに死んだ魚のような声で懇願(こんがん)されたからだ。
 その後、トモカさんとのメールでの作戦会議の結果、断ると憔悴(しょうすい)した魚々乃女さんが氾濫した川に流される可能性があるという点で意見が一致し、やむなく自転車でかけつけた、という次第だ。
「はぁ……」
 もう何度目かわからないため息を聞きながら、ベージュのリノリウムの床を進んでいくと、右側に曲がり角が現れた。
 さて、このまま直進するべきか、それとも右へ曲がるべきか。
 なんていうゲームのダンジョン的システムのはずもなく、直進方向に向かって大きな赤い矢印が床に張られていた。パンフレットの地図によると、どうやらあちこちで大きく蛇行しつつ、時計回りにぐるりと回って右側の曲がり角からここへ戻ってくるルートになっているようだ。曲がり角の先の部屋は休憩所や案内所になっていて、講和のための大きな講堂へとつながっているらしい。
 進路を無視して曲がれるようになっているのもそのためだろう。
「……というコトは、売店はアッチか!」
「トモカさん!?」
 足元の矢印を見るや、迷わず右へ曲がる藍色の髪を追いかけ、僕らも渋々右へ曲がった。
「こうゆうのって、たいてい最後がまとめになってて、先に見ちゃうといろいろ台無しなんだよなぁ……」
 ぼやきつつ、食いしん坊の背中を追いかける。この嵐のせいか、並べられた休憩用のベンチはどれももぬけの空だった。案内所らしきカウンターさえ無人だ。
「――――ったく、こうゆうときだけ行動早いんだから。売店なんかないのに、どこ行ったんだ?」
「……ひょっとして、あれじゃありません?」
 魚々乃女さんの指す方――いつか、人を指さすのは失礼だとか何とか言っていた気がする――には、確かに藍色の髪の人影がある。壁際のパイプ椅子に座る黒い短髪の女性に何やら話しかけているようだ。
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