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五章 「失われた色彩」
その四
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「ココって、売店とかマ○ドとか、アリマセンカ!?」
間違いなくトモカさんだった。黒髪の女性は、美術館や彫像展なんかにもいるガイドさんだろうか。あまりに想定外すぎる質問にとまどっている。……そりゃそうか。
「ちょっとトモカさん! デパートじゃないんですから、あるわけないじゃないですか」
「えーあるかもしんないじゃん」
「あるわけないでしょう!?」
急いで駆け寄り、ガイドさんに謝り倒しながら二人がかりで羽交い締めにして引き離すと、トモカさんは不満げに口を尖らせる。
「……おなかすいたんだもん」
「あとでどっかで食べればいいじゃないですか。……すいません、ホントに」
「いえそんな、私も退屈していましたので。どうぞ気軽に話しかけてください。ガイドの、地球(ちたま)綾乃(あやの)と申します」
「伊勢(いせ)カズマです」
「魚々(ぎょぎょ)乃女(のめ)真九理(みくり)です」
「……米津(よねづ)トモカ、です」
二十代前半に見える若い方だったものの、そこは大人の対応だった。依然(いぜん)むくれたままのトモカさんが余計に子供っぽく見える。
「……あら? これって、まさか本物ですの?」
と、気を利かせたのか、魚々乃女さんがすぐ横のガラスケースをのぞきながら早速尋ねる。横に長い大きなガラスケースには、横書きの巻物のらしきものが展示されていた。相当歴史があるのか、全体が土気色に変色していた。
「はい、もちろん本物ですよ。といっても、大元のものを複製して作られたものなので、ある意味ではレプリカなんですが……」
「どういうことですか?」
「最初に作られたものは、すぐに焼かれてしまったんです。だから、それは当時の方が新しく用意した複製品なんですが、公布の際にもその巻物が使われたので、一応本物ということになっているんです」
聞いているのかいないのか、トモカさんはガラスケースにべたっと張り付ついて巻物を凝視している。
「へー。……でも読めないや。なんて書いてあるの?」
「そこの壁に書いてあるじゃないですか」
「へ? あぁ……」
ガラスケースから身を起こすと、トモカさんは正面の壁のパネルに書かれた文章を読み始めた。
間違いなくトモカさんだった。黒髪の女性は、美術館や彫像展なんかにもいるガイドさんだろうか。あまりに想定外すぎる質問にとまどっている。……そりゃそうか。
「ちょっとトモカさん! デパートじゃないんですから、あるわけないじゃないですか」
「えーあるかもしんないじゃん」
「あるわけないでしょう!?」
急いで駆け寄り、ガイドさんに謝り倒しながら二人がかりで羽交い締めにして引き離すと、トモカさんは不満げに口を尖らせる。
「……おなかすいたんだもん」
「あとでどっかで食べればいいじゃないですか。……すいません、ホントに」
「いえそんな、私も退屈していましたので。どうぞ気軽に話しかけてください。ガイドの、地球(ちたま)綾乃(あやの)と申します」
「伊勢(いせ)カズマです」
「魚々(ぎょぎょ)乃女(のめ)真九理(みくり)です」
「……米津(よねづ)トモカ、です」
二十代前半に見える若い方だったものの、そこは大人の対応だった。依然(いぜん)むくれたままのトモカさんが余計に子供っぽく見える。
「……あら? これって、まさか本物ですの?」
と、気を利かせたのか、魚々乃女さんがすぐ横のガラスケースをのぞきながら早速尋ねる。横に長い大きなガラスケースには、横書きの巻物のらしきものが展示されていた。相当歴史があるのか、全体が土気色に変色していた。
「はい、もちろん本物ですよ。といっても、大元のものを複製して作られたものなので、ある意味ではレプリカなんですが……」
「どういうことですか?」
「最初に作られたものは、すぐに焼かれてしまったんです。だから、それは当時の方が新しく用意した複製品なんですが、公布の際にもその巻物が使われたので、一応本物ということになっているんです」
聞いているのかいないのか、トモカさんはガラスケースにべたっと張り付ついて巻物を凝視している。
「へー。……でも読めないや。なんて書いてあるの?」
「そこの壁に書いてあるじゃないですか」
「へ? あぁ……」
ガラスケースから身を起こすと、トモカさんは正面の壁のパネルに書かれた文章を読み始めた。
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