パラレヌ・ワールド

羽川明

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五章 「失われた色彩」

その八

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 地球(ちたま)さんを三人がかりで休憩室まで運び込んでから、十五分ほどたった時だった。僕ら以外誰もいない休憩室に、マナーモードのバイブレーションが鳴り出した。
「あ……」
 鳴っていたのは僕のスマホだった。見れば古都さんからだ。
「……出てあげてください」
 出ていいものなのかと迷っていると、だいぶ調子を取り戻してきたらしい地球さんがか細い声で呟(つぶや)く。頷(うなず)いてから、聞こえるようハンドフリーモードに切り替える。
『――――今すぐっ、三つ子山に来てください!!』
 流れ出したのは、始めて聞く古都さんの叫び声だった。山の中を駆け下りているかのように、背後で激しい風切り音が響いている。打ちつける雨音も酷く、聞き取れるのが不思議なくらいだ。
『見えたんです、つけもの石に!』
「つけもの石?」
『UFOの大群が、頂上に押し寄せて、二人の、〝黒い異星人〟が――――!!』
「――――二人? どういうことですの!?」
『わかりません、でも見えたんです!! 〝緑の力〟で山が崩れて、〝赤い力〟が、森を焼き尽くして……空には、二つの異星が浮かんでました! とにかく来てください、万美さんたちが、大変なんですっ!!』
「……二つの、異星?」
 呆然(ぼうぜん)と聞き入るしかない僕らの耳に、ちゃりんと軽快な金属音が届いた。
 気がつくと、ベンチで横になっていたはずの地球さんが、案内所のカウンターにもたれかかるようにして立っていた。

「――――急ぎましょう」

 ……今さらだけど、思い出したことがある。地球の〝星の力〟は、〝緑〟だったはずだ。
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