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五章 「失われた色彩」
その十一
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山の中腹を過ぎたころ、辺り一帯は地獄絵図と化していた。絶え間なく飛び交うレーザーによって地面がえぐれ、弾丸のように降る豪雨が淀んだ水たまりをつくっている。あれほど生い茂っていた木々や草木もほとんどが焼け焦げるか倒れるかしていて、かろうじて立っている木も半分以上が炎上していた。
樹里さんと万美さんを見つけたのは、その十数分後のことだった。
木々に囲まれた岩のそばのくぼみに、二人はいた。
「――――樹里さん、樹里さん! しっかりしてください!!」
聞こえてきたのは、そんな悲痛な声だった。
涙目になって必死に呼びかける万美さんの膝の上で、樹里さんはあおむけになったまま微動だにしない。
「樹里さんっ!!」
飛び交うレーザーの存在も忘れ、僕らは走り寄った。気づいた万美さんは少しだけホッとしたような顔になったものの、泣きはらした目からぽろぽろとこぼれ落ちる涙が止まらない。
「カズマさん、私、私……」
鼻をすすり、しゃくりあげながら言葉をつむぐ万美さん。目だけでなく、顔全体が赤く腫れ上がっていた。
「何があったんですか!?」
「私が、私がいけないんです……私が逃げ遅れたせいで、樹里さんが爆発に巻き込まれて……」
大粒の涙を流して、万美さんはわんわんと泣き出してしまう。その両手には、たくさんの植木鉢を抱え込んでいた。
どれも頂上に植えられていた花なのだろう、店に並んでいるものよりもかなり成長していた。中には黒コゲになって根元からつぶれてしまっているものもある。
大方察しはついた。
植物を家族同然に愛する木星人の二人にとって、花畑を見捨てるという選択肢などありはしないのだ。
それでも、逃げ出すしかなかったのだろう。
土ごと移した植木鉢を、両手いっぱいに抱え込んで。
樹里さんと万美さんを見つけたのは、その十数分後のことだった。
木々に囲まれた岩のそばのくぼみに、二人はいた。
「――――樹里さん、樹里さん! しっかりしてください!!」
聞こえてきたのは、そんな悲痛な声だった。
涙目になって必死に呼びかける万美さんの膝の上で、樹里さんはあおむけになったまま微動だにしない。
「樹里さんっ!!」
飛び交うレーザーの存在も忘れ、僕らは走り寄った。気づいた万美さんは少しだけホッとしたような顔になったものの、泣きはらした目からぽろぽろとこぼれ落ちる涙が止まらない。
「カズマさん、私、私……」
鼻をすすり、しゃくりあげながら言葉をつむぐ万美さん。目だけでなく、顔全体が赤く腫れ上がっていた。
「何があったんですか!?」
「私が、私がいけないんです……私が逃げ遅れたせいで、樹里さんが爆発に巻き込まれて……」
大粒の涙を流して、万美さんはわんわんと泣き出してしまう。その両手には、たくさんの植木鉢を抱え込んでいた。
どれも頂上に植えられていた花なのだろう、店に並んでいるものよりもかなり成長していた。中には黒コゲになって根元からつぶれてしまっているものもある。
大方察しはついた。
植物を家族同然に愛する木星人の二人にとって、花畑を見捨てるという選択肢などありはしないのだ。
それでも、逃げ出すしかなかったのだろう。
土ごと移した植木鉢を、両手いっぱいに抱え込んで。
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