20 / 57
二章 「スクール水着の半魚人」
その九
しおりを挟む
十数分前。
「――――お、男!?」
「はい。伊勢カズマさんという方が、扉の向こうに……」
万美から事情を聞かされたリオは、かつてないほどに驚いた。なんならちょっと飛び上がったくらいだった。しかし、片付けを開始した残る二人の驚きは、その比ではなかった。
「なんでそこらじゅうに下着が転がってんだよ!?」
「まったくありえませんわっ! 私(わたくし)がすんでのところで押しとどめたらから良かったものの、見られていたらどうするつもりだったんですの?」
常備されていたゴミ袋片手に、二人は部屋に転がる目の毒やゴミを片っ端から捜索し、見つけ出しては問答無用で袋の中に押し込んでいく。ゴミ袋は、早くもパンパンに膨れ上がっていた。しかもそのほとんどが男子には到底見せられないような代物だというから驚きだ。
「なんで勝手に男上げたの!?」
「――――っせえなお前も手伝え!!」
「わ、私は止めたんですよ? でも、樹里さんが入って行っちゃうから……」
「万美も手伝え!」
「は、はいぃ……」
腰をかがめ、片付け、というよりゴミ袋への詰め込み作業に専念する三人。その中央で事態を呑みこめず一人立ち尽くす金髪の少女。
その様は、まるで借金取りの差し押さえにあった貧乏人のようだ。
「お、とこ……?」
「いいから手伝え! さすがのお前も見られちゃ困るんだろ?」
ハッと我に返った金髪の少女は、部屋を見回すや慌てふためく。
「――――と、とりあえずパンツだけしまって!? ブラは後でもいいからっ」
「お前ブラするほど胸ないだろ」
「うるさいっ!! 一応つけてるの!」
一応と言ってしまうあたり、自覚があるらしい。
「……じゅ、樹里さん、それは女の子同士でもセクハラですよ」
「お前は巨乳だろ」
「ち、違います、普通サイズですっ!」
「なっ! ……そ、その胸で?」
「いいから手伝ってくださいましっ!」
再び呆然となりかけるリオを魚々乃女が一喝(いっかつ)した。
と、その時。
「あのー。いい加減、入っていいですか?」
扉が軽くノックされ、死刑宣告が下る。いち早く察知した魚々乃女が塞(ふさ)ぐように扉に立ち、最小限の角度で扉を開く。手を止め、息を呑む三人。魚々乃女は、のぞきこまれる前に顔を突き出し、早口で言い放った。
「しばしお待ちを」
バタン!! 返事を待たずに扉を閉める。『別に気にしない』とかなんとか聞こえた気がしたが、今は些細(ささい)なことだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツイッターを開設しました。質問、小説の相談など、お気軽にどうぞ↓
http://twitter.com/@akira_zensyu
「――――お、男!?」
「はい。伊勢カズマさんという方が、扉の向こうに……」
万美から事情を聞かされたリオは、かつてないほどに驚いた。なんならちょっと飛び上がったくらいだった。しかし、片付けを開始した残る二人の驚きは、その比ではなかった。
「なんでそこらじゅうに下着が転がってんだよ!?」
「まったくありえませんわっ! 私(わたくし)がすんでのところで押しとどめたらから良かったものの、見られていたらどうするつもりだったんですの?」
常備されていたゴミ袋片手に、二人は部屋に転がる目の毒やゴミを片っ端から捜索し、見つけ出しては問答無用で袋の中に押し込んでいく。ゴミ袋は、早くもパンパンに膨れ上がっていた。しかもそのほとんどが男子には到底見せられないような代物だというから驚きだ。
「なんで勝手に男上げたの!?」
「――――っせえなお前も手伝え!!」
「わ、私は止めたんですよ? でも、樹里さんが入って行っちゃうから……」
「万美も手伝え!」
「は、はいぃ……」
腰をかがめ、片付け、というよりゴミ袋への詰め込み作業に専念する三人。その中央で事態を呑みこめず一人立ち尽くす金髪の少女。
その様は、まるで借金取りの差し押さえにあった貧乏人のようだ。
「お、とこ……?」
「いいから手伝え! さすがのお前も見られちゃ困るんだろ?」
ハッと我に返った金髪の少女は、部屋を見回すや慌てふためく。
「――――と、とりあえずパンツだけしまって!? ブラは後でもいいからっ」
「お前ブラするほど胸ないだろ」
「うるさいっ!! 一応つけてるの!」
一応と言ってしまうあたり、自覚があるらしい。
「……じゅ、樹里さん、それは女の子同士でもセクハラですよ」
「お前は巨乳だろ」
「ち、違います、普通サイズですっ!」
「なっ! ……そ、その胸で?」
「いいから手伝ってくださいましっ!」
再び呆然となりかけるリオを魚々乃女が一喝(いっかつ)した。
と、その時。
「あのー。いい加減、入っていいですか?」
扉が軽くノックされ、死刑宣告が下る。いち早く察知した魚々乃女が塞(ふさ)ぐように扉に立ち、最小限の角度で扉を開く。手を止め、息を呑む三人。魚々乃女は、のぞきこまれる前に顔を突き出し、早口で言い放った。
「しばしお待ちを」
バタン!! 返事を待たずに扉を閉める。『別に気にしない』とかなんとか聞こえた気がしたが、今は些細(ささい)なことだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ツイッターを開設しました。質問、小説の相談など、お気軽にどうぞ↓
http://twitter.com/@akira_zensyu
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる