214 / 392
5[リア]
オーデン
しおりを挟む
ちくわ、こんにゃく、しらたき、はんぺん、つみれ、各種揚げ物……あと、がんもどきも食べたい。それからそれから……
お買い物メモを書き始めて気がついた。
「これ、どこで売っているのでしょうね?」
売っていません。
食べたければ「作る」一択です。
「ねえ、アレンさん? コンニャクってご存知ですか?」
「いいえ。それは何ですか?」
「ううーん……。あれって、いったい何なのでしょうか」
「え? 俺に聞いています?」
「長年、何も考えずに当たり前のように食べていて……」
「食べ物ですか。世界が違えば名前も違う可能性が高いですよ。どういったものですか?」
「プリプリと柔らかくて弾力があり、やや透明感があります」
「ほう……ゼリーのような?」
「そうですね。でも、原材料はおイモなのです。そのままだと臭くて、味は無味に近くて」
「え? イモ? クサイ? 無味?」
「調理前の見た目は、灰色のブリンブリンしたレンガのような……」
「それ、本当に食べ物ですか? 今、レンガって言いましたよ?」
「なんていうか、唯一無二の食べ物という感じなのですよねぇ」
今思うとスゴイ食べ物だ、コンニャク。
どうしておイモがあんなプリプリしたものになるのだろう。
コンニャクが手に入らないのなら、しらたきも絶望的だ。
以前、群馬県出身の同僚が「実家で作ったことがある」と話していたので、材料とレシピがあれば家庭でも作れるはず。しかし、その作り方がまるでわからないし、コンニャク芋を探すのも一苦労だろう。
「こんにゃくは無理ですね……」
なんだか悲しくなってきた。
「リア様? 大丈夫ですか?」
「せめて『異世界に連れていきます』と三か月くらい前に教えておいてくださったら、手に入らないものの作り方を調べてから来たのに。みそ田楽とかも食べたいのに……」
「ほかの大陸にはあるかも知れません。探させましょう? 元気を出してください」
くすんくすん……。
アレンさんはヘコむわたしをギュッとしてヨシヨシした(大胸筋・いい匂い・死ぬッ)
ほかの材料はどうだろうか。
つみれ、作ったことがあるから大丈夫。
ちくわ、棒がないと焼けないから今回は見合わせ。
がんもどき、豆腐から作らないといけないから時間的にムリ。
はんぺんと揚げ物系、これならどうにか作れるかも?
異世界でおでんは意外と難易度が高い。
料理長と相談のうえでイワシとタラを手に入れ、まずはすり身を作った。
そこに砂糖や塩などで味付けをして、すりおろしたおイモ(山芋っぽい品種)と卵白を入れて練る。
「ここからが問題なのです、料理長」
「そうですね」
「はたして、ゆでるのか、蒸すのか」
調理法がわからない……。
「とりあえず蒸してみませんか。形が崩れにくそうだという理由だけですが、失敗は覚悟の上で」
「そうですねぇ。やってみましょう」
挑戦と実験あるのみだ。
小皿の上で丸く成形して蒸してみたところ、これが思わぬラッキーパンチに。はんぺんらしき物になった。
もちろんスーパーで売っていた美しいクッションのようなはんぺんには敵わない。しかし、手作り感があって悪くない。
味見係のアレンさんが「西大陸で食べたムースのようですよ」と言って親指を立てた。
これに気を良くしてタラのすり身を増産し、イカ入り・タコ入り・野菜入りの三種類に展開。油で揚げて揚げ物系おでんダネが完成した。
なにぶん初めてだし、そもそも作り方が合っているのかどうかもわからないままだ。けれども、おでんダネっぽくは仕上がっている。
異世界におでん警察はいない。正しさを確認する手立てがない以上、ここで大事なのは雰囲気と味だけだ。
ダシを取り、自作おでんダネ、別の鍋で調理しておいた『ヴィルさん大根』とたまご、ジャガイモ、腸詰めなども加えれば完成だ。
料理長がお酢の効いたオルランディア風マスタードソースと味噌ダレを作ってくれた。
マスタードソースをつけて食べると、もともとこういうオルランディア料理があったかのような地元感が漂ってくる。味噌ダレをつければ濁酒に合うおつまみ感が増した。
こちらでは発音の関係で呼び方が「オーデン」になってしまう。
若干、ゲームに出てくるモンスターのような響きではあるけれども、それもご愛嬌だ。
煮ている間にサーモンマリネやアボカドなどを乗せた「ちらし寿司」も作ってみた。
これがお酢好きなオルランディア人には大ヒット。
最近リゾットを好んで食べているコメ男子のアレンさんはかなり気に入ったようだ。
イケメンたちが濁酒で乾杯する様子はなかなかシュールだった。
小さな逆三角形のカクテルグラスを使っているせいか、おしゃれドリンクに見える。
美味い美味いと調子に乗って飲むヴィルさん。
普段ほとんどお酒を飲まないアレンさんとフィデルさんは味見程度で、代わりにはんぺんとちらし寿司をおかわりしていた。
上機嫌でおしゃべりが止まらなくなってしまったヴィルさんは、わたしの部屋に来て舶来物のお酒をチビチビやりながら機関銃のような早口でしゃべっていた。
ところが……
突然、彼の頭がカクンと下がり、ソファーにポトリと手が落ちた。
こと切れたかのように動かない。
「ヴィルさんッ!?」
具合が悪いのかと慌てて駆け寄ると、彼はスヨスヨ寝息を立てていた。
人騒がせな寝落ちである。
アレンさんに経緯を説明したところ、彼は「なるほど」と言って、サッと【浄化】をかけた。そして靴を脱がせてタイを緩め、ソファーに横にして寝かせている。
「こういう姿は気を許した相手にしか見せない人です」
「なんだか、介抱が手慣れているのは気のせいでしょうか?」
「ふふ。こうしておけば朝まで起きません。部屋に運んでもよいですが、もし邪魔でなければこのまま寝かせておくのはいかがでしょう」
「そうですね。起こすのは可哀想ですし」
従者のキースさんが掛け布団を運んできてくれた。
アレンさんの言ったとおり、そばを人がパタパタ動き回っていても彼はピクリとも動かない。
しゃがんでじっと彼の寝顔を眺めた。
あと一年も経たないうちに、毎晩このきれいな寝顔が隣にあるのかと思うと、なんだか急にそわそわとした気持ちになった。
お買い物メモを書き始めて気がついた。
「これ、どこで売っているのでしょうね?」
売っていません。
食べたければ「作る」一択です。
「ねえ、アレンさん? コンニャクってご存知ですか?」
「いいえ。それは何ですか?」
「ううーん……。あれって、いったい何なのでしょうか」
「え? 俺に聞いています?」
「長年、何も考えずに当たり前のように食べていて……」
「食べ物ですか。世界が違えば名前も違う可能性が高いですよ。どういったものですか?」
「プリプリと柔らかくて弾力があり、やや透明感があります」
「ほう……ゼリーのような?」
「そうですね。でも、原材料はおイモなのです。そのままだと臭くて、味は無味に近くて」
「え? イモ? クサイ? 無味?」
「調理前の見た目は、灰色のブリンブリンしたレンガのような……」
「それ、本当に食べ物ですか? 今、レンガって言いましたよ?」
「なんていうか、唯一無二の食べ物という感じなのですよねぇ」
今思うとスゴイ食べ物だ、コンニャク。
どうしておイモがあんなプリプリしたものになるのだろう。
コンニャクが手に入らないのなら、しらたきも絶望的だ。
以前、群馬県出身の同僚が「実家で作ったことがある」と話していたので、材料とレシピがあれば家庭でも作れるはず。しかし、その作り方がまるでわからないし、コンニャク芋を探すのも一苦労だろう。
「こんにゃくは無理ですね……」
なんだか悲しくなってきた。
「リア様? 大丈夫ですか?」
「せめて『異世界に連れていきます』と三か月くらい前に教えておいてくださったら、手に入らないものの作り方を調べてから来たのに。みそ田楽とかも食べたいのに……」
「ほかの大陸にはあるかも知れません。探させましょう? 元気を出してください」
くすんくすん……。
アレンさんはヘコむわたしをギュッとしてヨシヨシした(大胸筋・いい匂い・死ぬッ)
ほかの材料はどうだろうか。
つみれ、作ったことがあるから大丈夫。
ちくわ、棒がないと焼けないから今回は見合わせ。
がんもどき、豆腐から作らないといけないから時間的にムリ。
はんぺんと揚げ物系、これならどうにか作れるかも?
異世界でおでんは意外と難易度が高い。
料理長と相談のうえでイワシとタラを手に入れ、まずはすり身を作った。
そこに砂糖や塩などで味付けをして、すりおろしたおイモ(山芋っぽい品種)と卵白を入れて練る。
「ここからが問題なのです、料理長」
「そうですね」
「はたして、ゆでるのか、蒸すのか」
調理法がわからない……。
「とりあえず蒸してみませんか。形が崩れにくそうだという理由だけですが、失敗は覚悟の上で」
「そうですねぇ。やってみましょう」
挑戦と実験あるのみだ。
小皿の上で丸く成形して蒸してみたところ、これが思わぬラッキーパンチに。はんぺんらしき物になった。
もちろんスーパーで売っていた美しいクッションのようなはんぺんには敵わない。しかし、手作り感があって悪くない。
味見係のアレンさんが「西大陸で食べたムースのようですよ」と言って親指を立てた。
これに気を良くしてタラのすり身を増産し、イカ入り・タコ入り・野菜入りの三種類に展開。油で揚げて揚げ物系おでんダネが完成した。
なにぶん初めてだし、そもそも作り方が合っているのかどうかもわからないままだ。けれども、おでんダネっぽくは仕上がっている。
異世界におでん警察はいない。正しさを確認する手立てがない以上、ここで大事なのは雰囲気と味だけだ。
ダシを取り、自作おでんダネ、別の鍋で調理しておいた『ヴィルさん大根』とたまご、ジャガイモ、腸詰めなども加えれば完成だ。
料理長がお酢の効いたオルランディア風マスタードソースと味噌ダレを作ってくれた。
マスタードソースをつけて食べると、もともとこういうオルランディア料理があったかのような地元感が漂ってくる。味噌ダレをつければ濁酒に合うおつまみ感が増した。
こちらでは発音の関係で呼び方が「オーデン」になってしまう。
若干、ゲームに出てくるモンスターのような響きではあるけれども、それもご愛嬌だ。
煮ている間にサーモンマリネやアボカドなどを乗せた「ちらし寿司」も作ってみた。
これがお酢好きなオルランディア人には大ヒット。
最近リゾットを好んで食べているコメ男子のアレンさんはかなり気に入ったようだ。
イケメンたちが濁酒で乾杯する様子はなかなかシュールだった。
小さな逆三角形のカクテルグラスを使っているせいか、おしゃれドリンクに見える。
美味い美味いと調子に乗って飲むヴィルさん。
普段ほとんどお酒を飲まないアレンさんとフィデルさんは味見程度で、代わりにはんぺんとちらし寿司をおかわりしていた。
上機嫌でおしゃべりが止まらなくなってしまったヴィルさんは、わたしの部屋に来て舶来物のお酒をチビチビやりながら機関銃のような早口でしゃべっていた。
ところが……
突然、彼の頭がカクンと下がり、ソファーにポトリと手が落ちた。
こと切れたかのように動かない。
「ヴィルさんッ!?」
具合が悪いのかと慌てて駆け寄ると、彼はスヨスヨ寝息を立てていた。
人騒がせな寝落ちである。
アレンさんに経緯を説明したところ、彼は「なるほど」と言って、サッと【浄化】をかけた。そして靴を脱がせてタイを緩め、ソファーに横にして寝かせている。
「こういう姿は気を許した相手にしか見せない人です」
「なんだか、介抱が手慣れているのは気のせいでしょうか?」
「ふふ。こうしておけば朝まで起きません。部屋に運んでもよいですが、もし邪魔でなければこのまま寝かせておくのはいかがでしょう」
「そうですね。起こすのは可哀想ですし」
従者のキースさんが掛け布団を運んできてくれた。
アレンさんの言ったとおり、そばを人がパタパタ動き回っていても彼はピクリとも動かない。
しゃがんでじっと彼の寝顔を眺めた。
あと一年も経たないうちに、毎晩このきれいな寝顔が隣にあるのかと思うと、なんだか急にそわそわとした気持ちになった。
46
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜
文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。
花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。
堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。
帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは?
異世界婚活ファンタジー、開幕。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる