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[リア]
当て馬疑惑
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浮気相手さんの金切り声が、豪華な舞踏会会場に響いた。
「アンタなんなのよ、さっきから! ロフはなんにも悪くないんだから!」だそうだ。
貴族の皆さまは大騒ぎだ。
わたしがいったい何をしたというのだろう。ニッコリさんの婚活の手伝いで、ただ踊りに来ただけなのに、この騒ぎ……。
わたしにだって言いたいことはある。
このドレスにヴィルさんがいくら払ったと思っているのよー! のよー……のよー……!(※山びこですわっ。泣)
ヴィルさんとアレンさんがぴくっと反応したので二人を制止した。
アレンさんは相手が女性でも気にせず首根っこを掴むのかも知れない。でも、なんだか彼女に触ってほしくなかった。
代わりにオポンチンさんが慌てて彼女の口に手を押しつけて黙らせた。
ヴィルさんからは「直接話すな」と言われていたけれども、彼女の態度が悪すぎて、もはや自分で話して黙らせるか、不敬だと言って捕らえさせるかの二択しかない。後者はあまりにも雑で安易なやり方だ。
しかし、平民の女性を神薙様が叩き潰すのは、ただのパワハラだ。わたしが罰を与えたいのはオポンチン父とオポンチン嫡男の二人であって、平民の彼女ではない。
礼儀知らずなお嬢さんではあるものの、様子を見ているかぎり、オポンチンさんのことを好いているようだ。
ヴィルさんからの情報によれば、オポンチンさんと彼女の交際歴はわずか一か月半。知り合ってすぐにベッドを共にしたと言う。未来の侯爵に見初められたことで舞い上がったのか、彼女は周りにそれを言いふらしていた。
果たしてオポンチンさんは彼女に本気なのだろうか。もしも彼女が今日のためだけに選ばれた女性だったなら、用が済んだ時点で捨てられるのではないかしら。
むむ~~~、どうしたものか。
ポク、ポク、ポク……チーン☆
よし。
そういうことなら、オポンチンさんと幸せになれるように応援いたしましょう。わたしったら、なんてポジティブなのかしら。
でも、ある程度は事実を理解しておいてもらわなくてはね。
「クレアさんと仰いましたね。この場で悪いのはオポンチンさんとあなただけですのよ? ほかに舞踏会を台無しにした方はいらっしゃらないでしょう?」
口を押さえようとするオポンチンさんの手を払いながら彼女は噛みついてきた。
「アンタに彼の何が分かんのよ! あたし達は真剣なんだから!」
「やめろ、クレア!」
彼女の口を再びオポンチンさんが押さえつけた。
周りのお貴族様たちは「なんて下品な」とドン引きしている。
可哀想に……やはりこのお嬢さんは、侯爵嫡男の妻になることの意味すらも分かっていない。
「あなたの口の利き方と振る舞いには大きな問題がございますわ。そのせいでオポンチンさんに恥をかかせているのですよ? 結婚するつもりでいらっしゃるのなら、もう少しお勉強をしてから人前に出るべきでした」
彼女は口を押さえつけられたまま何だか分からない呻き声を発していた。その表情から、反発しているのは分かっている。
ヴァーゲンザイル侯の夫人が手を伸ばし、暴れる彼女の腕を押さえて動きを封じた。大人しそうな奥様だけど、もう我慢の限界といった表情だ。
「わたくしはあなたの愛を疑っているわけではありません。引き続き『真実の愛』を貫けばよろしいと思いますよ? ただ、もし彼が出会ってすぐに結婚をチラつかせながら甘い言葉を囁いたのであれば、念のため彼の愛を再確認しておいたほうがよろしいかと思いますわ」
彼女は「んうぅ?」と呻き声を発して首を傾げた。
「お金や贅沢をチラつかせ、思いどおり操れる女性を探す……こういう話はよくあります。世の中には悪いことを考える男性がたくさんおりますの。貴族だからと言って安心などできないのですよ? むしろ貴族のほうが危ないのです。何の罪もない女性が傷ついたら、わたくしも悲しいですから」
彼女は口を押さえられたまま「んう?」と言って、オポンチンさんを見た。
オポンチンさんはしっかりと彼女の口を押さえつけたまま、彼女からの視線に耐えられず目を逸らした。そして、そのまま俯いて何も言わなかった。
「オポンチンさん、彼女を安心させてあげてくださいませ?」と返事を促しても、なかなか口を開かない。
かんしゃく玉のようなクレアさんを静かにさせるには良かったけれども、この長い沈黙は、彼女が今日のために用意された当て馬だと肯定しているも同然だった。
「アンタなんなのよ、さっきから! ロフはなんにも悪くないんだから!」だそうだ。
貴族の皆さまは大騒ぎだ。
わたしがいったい何をしたというのだろう。ニッコリさんの婚活の手伝いで、ただ踊りに来ただけなのに、この騒ぎ……。
わたしにだって言いたいことはある。
このドレスにヴィルさんがいくら払ったと思っているのよー! のよー……のよー……!(※山びこですわっ。泣)
ヴィルさんとアレンさんがぴくっと反応したので二人を制止した。
アレンさんは相手が女性でも気にせず首根っこを掴むのかも知れない。でも、なんだか彼女に触ってほしくなかった。
代わりにオポンチンさんが慌てて彼女の口に手を押しつけて黙らせた。
ヴィルさんからは「直接話すな」と言われていたけれども、彼女の態度が悪すぎて、もはや自分で話して黙らせるか、不敬だと言って捕らえさせるかの二択しかない。後者はあまりにも雑で安易なやり方だ。
しかし、平民の女性を神薙様が叩き潰すのは、ただのパワハラだ。わたしが罰を与えたいのはオポンチン父とオポンチン嫡男の二人であって、平民の彼女ではない。
礼儀知らずなお嬢さんではあるものの、様子を見ているかぎり、オポンチンさんのことを好いているようだ。
ヴィルさんからの情報によれば、オポンチンさんと彼女の交際歴はわずか一か月半。知り合ってすぐにベッドを共にしたと言う。未来の侯爵に見初められたことで舞い上がったのか、彼女は周りにそれを言いふらしていた。
果たしてオポンチンさんは彼女に本気なのだろうか。もしも彼女が今日のためだけに選ばれた女性だったなら、用が済んだ時点で捨てられるのではないかしら。
むむ~~~、どうしたものか。
ポク、ポク、ポク……チーン☆
よし。
そういうことなら、オポンチンさんと幸せになれるように応援いたしましょう。わたしったら、なんてポジティブなのかしら。
でも、ある程度は事実を理解しておいてもらわなくてはね。
「クレアさんと仰いましたね。この場で悪いのはオポンチンさんとあなただけですのよ? ほかに舞踏会を台無しにした方はいらっしゃらないでしょう?」
口を押さえようとするオポンチンさんの手を払いながら彼女は噛みついてきた。
「アンタに彼の何が分かんのよ! あたし達は真剣なんだから!」
「やめろ、クレア!」
彼女の口を再びオポンチンさんが押さえつけた。
周りのお貴族様たちは「なんて下品な」とドン引きしている。
可哀想に……やはりこのお嬢さんは、侯爵嫡男の妻になることの意味すらも分かっていない。
「あなたの口の利き方と振る舞いには大きな問題がございますわ。そのせいでオポンチンさんに恥をかかせているのですよ? 結婚するつもりでいらっしゃるのなら、もう少しお勉強をしてから人前に出るべきでした」
彼女は口を押さえつけられたまま何だか分からない呻き声を発していた。その表情から、反発しているのは分かっている。
ヴァーゲンザイル侯の夫人が手を伸ばし、暴れる彼女の腕を押さえて動きを封じた。大人しそうな奥様だけど、もう我慢の限界といった表情だ。
「わたくしはあなたの愛を疑っているわけではありません。引き続き『真実の愛』を貫けばよろしいと思いますよ? ただ、もし彼が出会ってすぐに結婚をチラつかせながら甘い言葉を囁いたのであれば、念のため彼の愛を再確認しておいたほうがよろしいかと思いますわ」
彼女は「んうぅ?」と呻き声を発して首を傾げた。
「お金や贅沢をチラつかせ、思いどおり操れる女性を探す……こういう話はよくあります。世の中には悪いことを考える男性がたくさんおりますの。貴族だからと言って安心などできないのですよ? むしろ貴族のほうが危ないのです。何の罪もない女性が傷ついたら、わたくしも悲しいですから」
彼女は口を押さえられたまま「んう?」と言って、オポンチンさんを見た。
オポンチンさんはしっかりと彼女の口を押さえつけたまま、彼女からの視線に耐えられず目を逸らした。そして、そのまま俯いて何も言わなかった。
「オポンチンさん、彼女を安心させてあげてくださいませ?」と返事を促しても、なかなか口を開かない。
かんしゃく玉のようなクレアさんを静かにさせるには良かったけれども、この長い沈黙は、彼女が今日のために用意された当て馬だと肯定しているも同然だった。
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