シスルの花束を

碧月 晶

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21 side雨月

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日記は、そこで終わっていた。

「この日付…」

最後の日付は母さんが亡くなった日の前日だった。

怪しい。確実に何かあると悟った。
そして、同時に知った。自分の本当の父親が誰であったのか。

この事実に裕太郎さんはおれに変な気は起こすなと釘を刺した。

その時は胸に生まれた感情を証拠も無いのだしと押し止める事ができた。…けれど、あの日『あいつ』を見た瞬間、その感情は制御を失い一気に溢れ出した。

その日は世界中のモデルたちが一堂に会するパリの一大イベントで。
裕太郎さんの仕事の関係でそれに訪れていたおれは、関係者たちが噂しているのを聞いた。

『ねえねえ、あの人格好良くない?誰だろ?』
『日本の有名なモデルらしいよ』
『モデル?じゃあ隣りの男の人は?あの人もハンサムよね』
『日本の企業の社長だって。えっと確か…トオル・レイゼンインだったかな?』

その名を聞いた瞬間、凍りついた。

『何でもあのモデルを凄く気に入ってるらしくて、わざわざ今日連れてきたんだって。しかも、息子だって噂よ』
『へぇー、期待されてるのね』

彼女たちの声が遠ざかっていく。

あいつが、おれの父親。
あいつが、母さんを苦しませていた元凶。

息子?お気に入りのモデル?

母さんを苦しめておいて、なに自分だけ幸せそうにしているんだ。

…ふざけるな!

母さんはお前のせいで不幸になったんだ。
あの事故も、あいつらが何かしたに違いない。

「……してやる」

許さない。絶対に許さない。
奪ってやる。何もかも、あいつから奪ってやる。

「復讐してやる…っ」

そのためなら手段は選ばない。

そうして、13年ぶりにおれは日本へ帰ってきた。
記憶の中の故郷の景色はすっかり様変わりしていて、帰ってきたという実感は湧かなかった。

でも、おれの頭の中はそんな事よりも復讐する事でいっぱいで。

どうやってあいつらに近付こうかと頭を悩ませていた時、週刊誌に載ったとあるニュースを目にした。

───『あの人気モデル・氷室三門が枕営業!?』
───『氷室と女プロデューサーとの密会現場を激写!』

「この人…」

そこに写っていたのは、パリであいつと一緒にいたモデルだった。

使えるか…?

この出来事を何かに使えないだろうか。そう思案していたある日、その機会は唐突に訪れた。

神様の悪戯か、それとも運命が味方してくれたのか。

どちらでも構わない。あいつらに近づくためなら。



彼を───三門を利用しよう。

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