45 / 62
45
しおりを挟む
ざわざわとパーティーの招待客たちが見ている中、通は気絶したまま連行されていった。
そして…
「それじゃあ、私ももう行くわね」
「ゆりえさん…」
「何て顔してるのよ。言ったでしょう。私も罪を償うわ」
「………」
警官が待つパトカーへと向かおうとしているゆりえさんを、雨月はただ静かに見ていた。
そんな雨月に、ゆりえさんが振り返る。
「雨月さん」
「………」
「これまで、本当にごめんなさい」
深々とゆりえさんが頭を下げる。
「彩子の事も、裕太郎さんの事も。謝って簡単に許される罪ではないけれど、それでもどうか…」
謝らせてほしい、と。
「…あなたがした事は正直、許せません。直接的ではなかったとしても、母を殺そうとしたのは事実ですから」
「…そうね。その通りだわ」
「だから…母の名誉を回復させると誓って下さい」
「! ええ、誓うわ」
それは、一生罪を忘れるなという事。
遠ざかっていくパトカーを、雨月は見えなくなるまで見ていた。
******
後日、冷泉院の社長と副社長が捕まった事は大々的に世間に報じられた。オレが撮った映像と毒酒、一部始終を録音していた音声、ゆりえさんの証言が決定的な証拠となった。
そして、それと同時に18年前の事件の真相も明るみになった。
「そうか…」
経緯を全て伝えると、その人──裕太郎さんはそう言ってベッドの上で遠い目をした。
実は、ゆりえさん達が連行されていったあの後、雨月に一本の電話が入った。それは雨月の伯父・裕太郎が入院している病院からのもので、目が覚めたという吉報だった。
そうして、漸く面会許可が下りた今日、こうして会いに来て事の経緯を全て話したのだ。
「本当に、これで全部終わったんだな…」
「裕太郎さん…」
「…三門くん、だったかな」
「はい」
「今回の事、巻き込んでしまって本当に済まなかった。でも…ありがとう。この子に協力してくれて、止めてくれて」
裕太郎がペコリと頭を下げる。
「いえ、自分のためにやった事ですから」
だから気にしなくていいと言外に伝えると、裕太郎は再び頭を下げた。
「そうだ。雨月、来月には退院できるそうだから、そろそろ戻る準備をしておきなさい」
「……そう、ですね」
…え?戻る?
思わず雨月を見る。目が合う。だが、それはふいっと逸らされてしまって
「…元々日本には長期休暇で来ていたんです。だから、そろそろ戻らないといけません」
それに、裕太郎に至っては日本での仕事が終わり次第フランスに戻るつもりだったが、予定外の入院で予想以上に滞在が長引いてしまったため、仕事が山ほど溜まっているという。
「何で言わなかった」
「…言おうとは思っていたんですが、タイミングを逃してしまって…すみません」
相変わらず目を逸らしたままこちらを向こうとしない雨月に、オレは心の中で舌打ちをした。
「…お前、戻って来ねぇつもりだろ」
僅かに雨月の肩が揺れたのを、オレは見逃さなかった。
「てめえの復讐が終わったらそれでもうオレはお払い箱ってか?」
「…っ、そんな訳──!」
「二人とも、落ち着きなさい」
静かな、けれど鋭い声。その声の主は、オレを見るとにこりと笑みを向けた。
「三門くん、少しこの子に考える時間を与えてやってはくれないか」
「………」
「君も、これから身の回りが騒がしくなるだろう。それが落ち着くまでの間だと思って。ね?」
優しい諭すような声。でも、そこには有無を言わさぬ圧力があった。
「…分かりました」
けど、言われた事は事実で。オレは承諾するしかなかった。
そして…
「それじゃあ、私ももう行くわね」
「ゆりえさん…」
「何て顔してるのよ。言ったでしょう。私も罪を償うわ」
「………」
警官が待つパトカーへと向かおうとしているゆりえさんを、雨月はただ静かに見ていた。
そんな雨月に、ゆりえさんが振り返る。
「雨月さん」
「………」
「これまで、本当にごめんなさい」
深々とゆりえさんが頭を下げる。
「彩子の事も、裕太郎さんの事も。謝って簡単に許される罪ではないけれど、それでもどうか…」
謝らせてほしい、と。
「…あなたがした事は正直、許せません。直接的ではなかったとしても、母を殺そうとしたのは事実ですから」
「…そうね。その通りだわ」
「だから…母の名誉を回復させると誓って下さい」
「! ええ、誓うわ」
それは、一生罪を忘れるなという事。
遠ざかっていくパトカーを、雨月は見えなくなるまで見ていた。
******
後日、冷泉院の社長と副社長が捕まった事は大々的に世間に報じられた。オレが撮った映像と毒酒、一部始終を録音していた音声、ゆりえさんの証言が決定的な証拠となった。
そして、それと同時に18年前の事件の真相も明るみになった。
「そうか…」
経緯を全て伝えると、その人──裕太郎さんはそう言ってベッドの上で遠い目をした。
実は、ゆりえさん達が連行されていったあの後、雨月に一本の電話が入った。それは雨月の伯父・裕太郎が入院している病院からのもので、目が覚めたという吉報だった。
そうして、漸く面会許可が下りた今日、こうして会いに来て事の経緯を全て話したのだ。
「本当に、これで全部終わったんだな…」
「裕太郎さん…」
「…三門くん、だったかな」
「はい」
「今回の事、巻き込んでしまって本当に済まなかった。でも…ありがとう。この子に協力してくれて、止めてくれて」
裕太郎がペコリと頭を下げる。
「いえ、自分のためにやった事ですから」
だから気にしなくていいと言外に伝えると、裕太郎は再び頭を下げた。
「そうだ。雨月、来月には退院できるそうだから、そろそろ戻る準備をしておきなさい」
「……そう、ですね」
…え?戻る?
思わず雨月を見る。目が合う。だが、それはふいっと逸らされてしまって
「…元々日本には長期休暇で来ていたんです。だから、そろそろ戻らないといけません」
それに、裕太郎に至っては日本での仕事が終わり次第フランスに戻るつもりだったが、予定外の入院で予想以上に滞在が長引いてしまったため、仕事が山ほど溜まっているという。
「何で言わなかった」
「…言おうとは思っていたんですが、タイミングを逃してしまって…すみません」
相変わらず目を逸らしたままこちらを向こうとしない雨月に、オレは心の中で舌打ちをした。
「…お前、戻って来ねぇつもりだろ」
僅かに雨月の肩が揺れたのを、オレは見逃さなかった。
「てめえの復讐が終わったらそれでもうオレはお払い箱ってか?」
「…っ、そんな訳──!」
「二人とも、落ち着きなさい」
静かな、けれど鋭い声。その声の主は、オレを見るとにこりと笑みを向けた。
「三門くん、少しこの子に考える時間を与えてやってはくれないか」
「………」
「君も、これから身の回りが騒がしくなるだろう。それが落ち着くまでの間だと思って。ね?」
優しい諭すような声。でも、そこには有無を言わさぬ圧力があった。
「…分かりました」
けど、言われた事は事実で。オレは承諾するしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる