54 / 62
54
しおりを挟む「……はあぁ」
思わず深い溜め息を零す。
「何をうじうじ悩んでんのかと思えば、そんな事かよ」
「な、そんな事って…!おれは真剣に、」
「真剣に、オレとの未来を考えたんだろ?」
考えた上で、オレのためを想って身を引こうと決めた。
正直、そんないじらしい事を言われて嬉しく思わない奴はいないと思う。
だってそうだろう?それほどまでに自分との未来を真剣に考えてくれたという事なのだから。
「確かにオレは今の地位に甘んじる気はねぇ。…だがな、お前を手放す気も毛頭ねぇんだよ」
「…っ、でもおれは──」
「3年だ」
「え…?」
「3年後、オレはこの世界で大成してみせる。だからお前も、オレに釣り合う人間になって待ってろ」
雨月の不安は分からなくもない。だが、そんなのオレが誰にも文句のつけようがないくらいの人間になれば良いだけの話だ。
「…それでも、誰も認めてくれなかったら?」
「んなもん、鼻で笑い飛ばしてやりゃいいだろ」
時代遅れだってな。
「雨月、オレはお前が好きだ。この先どんな事が起きても、お前だけは一生手放さねぇって誓ってやるよ」
「…っ」
雨月の左手を取って、その薬指に口付ける。
「必ず迎えに行く。『ここ』はそれまであけとけ」
今はまだ何も贈れやしないが、その時が来たら必ずオレの想いを。
「約束だ」
そう言って顔を上げると、雨月はくしゃっと顔を歪めて泣いていた。
「…本当に?」
「ああ」
「…おれは、期待しても…良いんですか?」
「っ、当たり前だろ」
「ん、」
その切なげな声に、オレは噛み付くように唇を重ねた。
「み、かど…三門…っ」
キスの合間に縋るようにオレの名を繰り返し呼ぶ声は、まるで子供が母親を呼んでいるようで。
絶え間なく流れる雨月の涙を唇で拭いながら、言い聞かせるように囁く。
「…期待しろ、雨月」
────オレとお前の、未来に。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる