シスルの花束を

碧月 晶

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53 side雨月

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総会が終わり、おれは一人縁側でぼうっと満開に咲き誇る桜の庭園を眺めていた。

「雨月」
「父さん…」

おれの隣りに座ると、父さんも同じように庭に視線を向けた。

「…何か悩んでる事があるんじゃないのか?」
「え?」
「俺も、昔何か悩み事がある度にここからよく庭を眺めてたよ」

知らず父さんと同じ行動を取っていた事に嬉しさを覚える。

「…もしかして『三門くん』とやらが関係してるのか?」
「っ、なんで、」
「あの時、少しだけお前と裕太郎さんが話しているのが聞こえてな。それで?彼に応えてやらないのか?」
「…反対しないんですか?」
「どうして?」
「だって…おれと三門は…」
「男同士だから?」
「………」
「別に良いんじゃないか?俺は気にしないよ。…でも、今悩んでるのはそういう事じゃないんじゃないか?」
「!」

心の内を言い当てられ、思わず父さんを見る。

「…お前は本当に俺によく似ているんだな」
「え?」
「顔もだけど、悩み方まで似るものなんだな」
「?」

どういう意味だろう?

首を傾げるおれに、父さんは笑ってみせた。

「父さんはな、お前に後悔だけはしてほしくないんだ」
「………」
「俺は、お前たちに何一つしてやれなかった。大事な時に傍にいてやれなかった。この後悔はこの先一生消えないだろう。…でも、お前は違う。まだ間に合う」

彼もお前も生きているのだから、と。

「さて、そろそろ交代の時間かな」
「?」

交代?

一体何の事だと立ち上がった父さんを見上げると、父さんはにこりと笑っておれの頭を撫でた。
それと同時に襖が開いて、

「───!」

予想だにしていなかったその人物の登場に、おれは目を見開く。

「それじゃあまた後で」
「え、父さ──」

引き止める間もなく、父さんは部屋を出て行ってしまった。

「………」
「………」

二人きりの空間に沈黙が落ちる。

何か言わなければと思うのに、何て言ったらいいのか分からない。

「…はあ」

そんなおれに痺れを切らしたのか、その人──三門は一つ大きな溜め息を吐いた。

「言いたい事があんならはっきり言えっつったろ」

そう言うと、三門はおれの隣りに腰を下ろした。

「…どうして、」

三門がここにいるのか。

「お前の伯父から連絡があったんだよ。今日この時間にここに来るようにってな」
「え…」

裕太郎さんが…?

いつの間に連絡先を交換していたのだろうと疑問に思ったが、そういえば裕太郎さんが退院する前日に三門が訪ねてきたと言っていた事を思い出す。恐らくその時にしたのだろう。

「で?お前は何をそんなに悩んでる訳?」

言外に告白の返事の事を言っているのだと分かり、思わず顔を逸らす。

「…君は、太陽のような人です。だからこそ、一点も陰りがあってはいけないんです」
「……どういう意味だよ」

問われ、唇をぎゅっと引き結ぶ。

「おれも、君の事が好きです」
「!!」
「でも、おれは君のかせにはなりたくない。君はきっと今よりも凄い人になる。その時、おれが傍にいたら邪魔になるだけです」

だから、おれは君に相応しくない。

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