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58「後日談2」
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リアムは渋々といった体で話し始め……たかと思えば、何故か
「Ugetsu, will you be a little further away?(雨月、君は少し離れた場所にいてくれないか?)」
と言い出した。
「え?」
「Please…(お願いだ…)」
切実なリアムの声に雨月は困ったようにオレを見る。
「…車の中で待ってろ」
「でも…」
「大丈夫だ」
雨月の頭を撫で、車のキーを渡す。
「…分かりました」
まだ何か言いたげな表情をしていたが、オレが頷いてみせると雨月はこちらを気にしながらも車の中へと入っていった。
「…ほらよ、お望み通りにしてやったぜ?」
「You──」
「つーかお前、本当は日本語分かってるだろ」
「! ……いつから気付いてた」
「んなもん最初からに決まってんだろ」
こいつが開口一番にオレに英語で話しかけてきた時に雨月が終始不思議そうな顔をしてたし、確信を持ったのはストーカーの件の時だな。単語が単語なだけに思わず反応してしまったようだったが、あれでは日本語が分かりますと示したも同じ事だ。
「…お前、嫌な奴だ」
「目聡いと言え。それに、お前にだけは言われたくないね。このストーカー野郎」
「だからっ、俺はストーカーじゃない!」
「ハッ、ストーカーは皆そう答えるんだよ」
「~~~! やっぱりお前、嫌な奴だ!だからお前は雨月に似合わない!」
「はあ?馬鹿じゃねえの、お前」
「バ、バカとは何だ!」
「馬鹿も知らねえのかよ」
「それくらい知ってる!バカにするな!」
「あーそうかよ。それはそれは、よくお勉強してる事で。不純な動機でするお勉強はさぞかし身が入ったようだな?」
「…フジュンなドウキ?」
ああ、これは知らないのか。
…まあいい。この子供じみたやり取りにも飽きてきた所だ。そろそろ本題に入らせて貰おう。
「お前、雨月の事が好きなんだろ」
「!! な、ななな何を言って…!」
…動揺し過ぎだろ
その馬鹿正直な反応に、思わず溜め息が出る。
「じゃあ何か?お前は好きでも何でもない奴の行動を把握して、挙句の果てに付き合う相手にまで口出しすんのかよ?」
「それは……で、でもっ、俺は雨月の親友で──」
「There is also courtesy to close friends.(親しき仲にも礼儀あり)。って言葉知らねえのかよ」
そう言うと、リアムは黙った。
「分かったか。お前のそれは度を越してんだよ。いい加減自覚しねえとあいつに嫌われんぞ」
「それは……いやだ」
落ち込んだ犬のようにシュンとするリアム。どうやら自分のやっている事が行き過ぎているという自覚はあったらしい。
「…お前は、ズルい。地位も、名声も、全部持ってる。俺の方が先に好きだったのに、お前が攫っていった…っ」
ぼろりとリアムの青い眼から大粒の涙が零れる。
「ズルいのはお前の方だろ」
それにぎょっとはしたが、ここでオレがうろたえる訳にはいかない。オレはオレが言うべき事を言う。
「本当に好きだったのならオレより先に告白でも何でもしてれば良かっただろうが。出来なかった事をオレのせいにすんな」
「…っ、お前には俺の気持ちなんて分からない!」
「ああ分からねえよ。オレを貶めて自分を良く見せようとしてた奴の気持ちなんて分かりたくもない」
そう、こいつはわざとオレに英語で話し掛けてきたのだ。オレが英語も分からない話せない馬鹿だと。大方、雨月に通訳して貰わないと話についていけない状況でも作りたかったのだろう。
「…そうだ。俺はお前が許せなかった。雨月の嬉しそうな笑顔も、悲しそうな顔も、全部お前のためだ」
「………」
「本当は分かってる。今更こんな事をしても無駄だって」
「………」
「済まなかった」
リアムが頭を下げる。…こうして憎く思っていた奴にも悪いと思えば素直に謝れるあたり、根は悪い奴ではないのだろう。
「Ugetsu, will you be a little further away?(雨月、君は少し離れた場所にいてくれないか?)」
と言い出した。
「え?」
「Please…(お願いだ…)」
切実なリアムの声に雨月は困ったようにオレを見る。
「…車の中で待ってろ」
「でも…」
「大丈夫だ」
雨月の頭を撫で、車のキーを渡す。
「…分かりました」
まだ何か言いたげな表情をしていたが、オレが頷いてみせると雨月はこちらを気にしながらも車の中へと入っていった。
「…ほらよ、お望み通りにしてやったぜ?」
「You──」
「つーかお前、本当は日本語分かってるだろ」
「! ……いつから気付いてた」
「んなもん最初からに決まってんだろ」
こいつが開口一番にオレに英語で話しかけてきた時に雨月が終始不思議そうな顔をしてたし、確信を持ったのはストーカーの件の時だな。単語が単語なだけに思わず反応してしまったようだったが、あれでは日本語が分かりますと示したも同じ事だ。
「…お前、嫌な奴だ」
「目聡いと言え。それに、お前にだけは言われたくないね。このストーカー野郎」
「だからっ、俺はストーカーじゃない!」
「ハッ、ストーカーは皆そう答えるんだよ」
「~~~! やっぱりお前、嫌な奴だ!だからお前は雨月に似合わない!」
「はあ?馬鹿じゃねえの、お前」
「バ、バカとは何だ!」
「馬鹿も知らねえのかよ」
「それくらい知ってる!バカにするな!」
「あーそうかよ。それはそれは、よくお勉強してる事で。不純な動機でするお勉強はさぞかし身が入ったようだな?」
「…フジュンなドウキ?」
ああ、これは知らないのか。
…まあいい。この子供じみたやり取りにも飽きてきた所だ。そろそろ本題に入らせて貰おう。
「お前、雨月の事が好きなんだろ」
「!! な、ななな何を言って…!」
…動揺し過ぎだろ
その馬鹿正直な反応に、思わず溜め息が出る。
「じゃあ何か?お前は好きでも何でもない奴の行動を把握して、挙句の果てに付き合う相手にまで口出しすんのかよ?」
「それは……で、でもっ、俺は雨月の親友で──」
「There is also courtesy to close friends.(親しき仲にも礼儀あり)。って言葉知らねえのかよ」
そう言うと、リアムは黙った。
「分かったか。お前のそれは度を越してんだよ。いい加減自覚しねえとあいつに嫌われんぞ」
「それは……いやだ」
落ち込んだ犬のようにシュンとするリアム。どうやら自分のやっている事が行き過ぎているという自覚はあったらしい。
「…お前は、ズルい。地位も、名声も、全部持ってる。俺の方が先に好きだったのに、お前が攫っていった…っ」
ぼろりとリアムの青い眼から大粒の涙が零れる。
「ズルいのはお前の方だろ」
それにぎょっとはしたが、ここでオレがうろたえる訳にはいかない。オレはオレが言うべき事を言う。
「本当に好きだったのならオレより先に告白でも何でもしてれば良かっただろうが。出来なかった事をオレのせいにすんな」
「…っ、お前には俺の気持ちなんて分からない!」
「ああ分からねえよ。オレを貶めて自分を良く見せようとしてた奴の気持ちなんて分かりたくもない」
そう、こいつはわざとオレに英語で話し掛けてきたのだ。オレが英語も分からない話せない馬鹿だと。大方、雨月に通訳して貰わないと話についていけない状況でも作りたかったのだろう。
「…そうだ。俺はお前が許せなかった。雨月の嬉しそうな笑顔も、悲しそうな顔も、全部お前のためだ」
「………」
「本当は分かってる。今更こんな事をしても無駄だって」
「………」
「済まなかった」
リアムが頭を下げる。…こうして憎く思っていた奴にも悪いと思えば素直に謝れるあたり、根は悪い奴ではないのだろう。
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