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12 side悠貴
しおりを挟む「あんまり飲み過ぎないで下さいよ。アナタが酔うと面倒くさいんですから」
そう忠告したのが約2時間前。
「ゔー…」
「ほら、しっかり立って下さい。見た目の割に重いんですから」
「…るせー」
「はぁ…」
何度こうやって溜め息を吐いた事だろう。
今頃、同じようにこの人と酒を浴びるように飲んでいた親父さんも
咲羅さんに介抱されているのだろう。
酒臭い身体を引きずって、(一応)この組の若である螢さんの部屋へと運んだ。
「…よいっ、しょ」
ああ、重たかった。
前ほど苦労はしなくなったけれど、一応もうちょっと身体を鍛えておいた方が良いかもしれない。
「………」
「気が付きましたか?」
「…………」
「アナタの部屋ですよ。」
「そうか…」
無言で部屋を見る螢さんに補足しておく。
「ゆう…」
「はいはい。」
冷蔵庫から持ってきておいた水が入ったペットボトルを渡す。
のっそりと起き上がり、それを受け取ってゴクゴクと飲む様を見ながら気にしていた事を聞いた。
「どうしたんですか。アナタがこんなに早く酔うなんて。いつもならあんな飲み方しないでしょうに」
親父さんと螢さんはあまり酒に酔わない質だ。
だから、2人が酔う時はかなりの量を飲んだという事。つまりそれだけ酒が入った分、面倒くさいのだ。
それでも、翌日にはケロッとしているのだから羨ましい限りだ。
「…まぁ、どうせ瑠さんの事なんでしょう?」
「何で分かった。」
「螢さんの悩み事なんて知れてますからね。」
昔から。
「…瑠さんが心配なのは分かりますけど、もう高校生なんですよ?いつまでもベッタリじゃ、その内鬱陶しがられますよ?」
「~~~~! じゃあ何でお前はいつも頼られてるんだ!」
「その辺をちゃんと弁えてますから。」
「くっ…」
悔しそうにする螢さんにちょっとだけ笑いそうになった。
「…だってアイツ不器用だろ?只でさえ家が他とは違うんだ。せめてその辺は人一倍心配したって良いだろが…」
「………。」
それは、分からなくもない。
厚かましいかもしれないけれど、瑠さんは俺にとっても『弟』みたいなものだから。
「…大丈夫ですよ。瑠さん楽しそうですから。こちらが思っているより子供は成長しているものですよ。」
まだまだ世話のかかるものだと思っていても、いつの間にかそうじゃなくなっているものだ。
「そうは言ってもな…」
「そろそろ螢さんも『弟心配性』を治して、前に進んだらどうですか?」
やれやれと呆れながら、立ち上がって出て行こうとすると
ガクンと後ろから引っ張られた。
「? 何ですか」
見ると、腕を捕まれていた。
「…そうだな、『前に』進まないとなぁ?ユウ?」
そして、良いことを思い付いたと言わんばかりの
ニヤリとした悪魔のような笑みがそこには合った。
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その晩、悠貴は螢の介抱に行ったっきり朝まで戻って来なかったそうな。
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