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第二章 開かれる女の子への道(クリスティーナ編)

【第20話】 クリスティーナお嬢様の入学準備(1/15)

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 新しい朝が来た。

 クリスティーナが目を覚ましたのは、知らない部屋のふかふかのベッドの上だった。
 どれくらい眠っていたのだろう。体に力が入らない。ずっと意識が混とんとしていた気がする。

「んっ。あー」

 クリスティーナは右手を伸ばしてあくびをする。
 窓から入る木漏れ日が、閉じられた目の奥を優しくくすぐる。
 涼しい空気で肺が満たされて、身体に生気が戻ってくる。
 
「あれっ……ここはどこ?」

 おやっという表情で、首をかしげる。
 記憶があやふやだ。
 隣を見ると、見たことがない長身の女性が立っていた。
 白衣という服装から、お医者さんと思われる。

「おはよう、クリスティーナ。意識が戻ってよかったわ。あたしは主治医の速水早紀よ。初めまして」

 女医は流ちょうなアメリカ英語で挨拶した。
 笑顔を浮かべているのに、心が読めない不思議な女性だった。

「クリスティーナ? あれ? クリスティーナ?」

 寝起きで混乱している。
 クリスティーナと呼ばれて、それが自分の名前のような、そうでもないような不思議な感じがする。
 そもそもなぜ病院のベッドにいるのか定かではない。

「貴女はずっと眠っていたの。助け出した時は衰弱していて、もう少しで危なかったわ。でももう大丈夫よ」

 早紀は優しくほほ笑む。

 頭が少しずつ冴えてきて、クリスティーナは違和感の正体に気が付く。
 はだけたピンクのパジャマの隙間から、ナイトブラが見える。

「あれ? 女性の下着? どうして……」

「なぜって、ナイトブラをしていないと体に良くないからよ。せっかくこんなに可愛いのに、きれいなお胸が崩れたら嫌でしょ?」

 話がかみ合っていない。
 だが、胸に意識を向けると、おっぱいを包まれる感覚が湧いてくる。
 男にはないはずの双丘の感覚が、たしかに胸元にある。


「まっ、まさか」

 クリスティーナに、記憶がフラッシュバックする。

 アレックスに誘拐されたこと。
 不思議な部屋で、一晩中犯されたこと。
 コクーンの中で一生分の快楽を与えられて、ペニスを喪失したこと。

 あまりにも衝撃的な出来事の一つ一つが蘇る。

 ベッドの中で、恐る恐る股間に指を持っていく。
 その記憶が偽りであることを、願いながら。
 震える手で股の間のそれを触ろうとする。
 ショーツの中に細い指を滑らせる。

「あっ……やっぱり……」

 残念と言うべきか、当然と言うべきか。
 危惧していた現実がそこにあった。
 クリスティーナは悲嘆ともとれるため息をつく。

 そこにあったのは、生まれてから親しんできたおちんちんではなかった。

 代わりにあったのは、その成れの果て。
 とても敏感な、小さな突起物。
 男にはない、女性の象徴。

 クリトリスだった。
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