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2.妖精と王子様の契約
その日、チルドはいつもより遅れてやってきた。服の裾に泥がついていて、肩には重そうな袋を担いでいる。
「おーい、ソムニ!これなーんだ!」
チルドは不思議な袋を手に、自慢げに話しかける。
「えっ、ついに白馬の王子様が迎えに!?」
ソムニはキラキラと希望に満ちた瞳でチルドを見つめた。
「違う。……いや、ある意味あってる。ほら、これ」
袋の中から取り出されたのは、ひときわ淡く光る、まるで水晶玉のような卵だった。
「……なにこれ!すっごい……きれい……」
掌サイズの卵は、透きとおった薄紫に淡く輝いている。
中にはうっすらと、小さな人影のような影が浮かんでいた。
「森の奥で拾った。つーか、見つけたって方が正しいかな。なんかこう……呼ばれた感じがしたんだよな」
ソムニの手に渡った途端、卵はぴくんと震えた。
「チルド?いま、これ動いた……!?」
「気のせい……じゃ、ないよな?」
ソムニがそっと胸元に抱きしめた瞬間——
卵はまばゆい光を放ち、ぱきん、と小さな音を立ててひび割れた。
「え、ま、まって!?私まだお世話の準備とか名前とか!えっえっ……!?」
光が弾ける。
ぱたぱた、と床に舞い降りる羽のような光。
そして、そこに現れたのは——
「……ここが、人間界……か」
白銀の髪に、透きとおる青い瞳。繊細で中性的な美貌の、裸の少年。
ソムニは叫んだ。
「わああああああああああ!?!?!?!?///」
「わっ、布布!タオル!毛布!これ着て!!何かっ!何かっ!!!」
「静かに。騒がしいな、人間というのは」
その少年は、まったく羞恥のかけらも見せず、すらりとした身体をすっくと立たせ、ソムニの前に歩み寄る。
「おまえが……呼んだのか?」
「え、僕?えっ、はい!?……いやえっ、えっ??」
チルドが慌てて布をかけながら遮る。
「待て待て!まずこいつ誰だよ!?妖精なのか!?人間じゃないだろ!?」
「……ぼくの名は、フィリオ・エルヴァリス。妖精国第七王子。契約により、一定期間主に仕える義務がある。……君がその主か?」
「あ、主ぃぃぃ!?あの、僕そんなつもりじゃ……いやでも、えぇぇ……!!」
フィリオはソムニの瞳をまっすぐ見つめた。
「おまえの魔力に、反応したんだ。想いに呼ばれた。それが契約の証。逃れられない」
「そ……そんなぁ……!!」
うそでしょ。まさか、まさか、白馬じゃなくて、卵で来るパターンだったなんて!?これ、運命!?契約!?このまま恋に落ちて、妖精の王子様と……!!
~脳内劇場・開幕~
妖精王子「この出会いは運命だ。おまえを迎えに来た」
ソムニ「きゃあっ!!!」
現実──
「……とりあえず、服着ろ。な?」
「お湯沸かしてくるね!?毛布!お風呂!」
ドタバタとお風呂場へ向かうソムニを見送り、チルドはソファーへと腰掛ける。
腕を組んで佇むフィリオ。
妖精は自分を呼び出した主が気に入らなければ、それに答えることは無い。だが、ソムニの面白そうな思いに惹かれ召喚に応じたのである。
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