平凡になりたい俺

ナポ

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卒業式が終わった数日後。

リレフは自室の書斎で茶をすすりながら、書類に目を通していた。

【王立騎士養成機関・特別入学推薦状】

「……なんだこれ。見覚えないぞ……」

「おお、それか」

入ってきたのは、父。
当たり前のように同席し、渋い顔で茶を啜りながら、あっさりと言った。

「出しておいたぞ。お前、戦えるし、それなりに護身術も必要だろうと思ってな」

「勝手に進路決めんなよ!?」

「どうせ冒険者になるんだろう? 騎士学校で学べば多少の信用にもなるし、お前は目立つ体質なんだからそれくらいの盾があっても損はない」

「盾じゃねぇよ……これ人生だぞ……!」

とはいえ、リレフ自身も思っていた。

ドラゴンの一件だって、俺が動かなきゃ誰も止められなかったしな……

あの時はビビったな。
 山で薬草採取してたら、ドラゴンが突っ込んできて山火事になるところだった。

幸い近くに誰もいなかったから良かったけど。

目立ちたくないって言ったって、身を守る手段がないとマジで死ぬ。

──そしてなにより、

騎士って……かっこいいし

こうして、リレフは王立騎士養成機関に入学することとなった。
そこでは厳格な訓練と共に、魔法と剣の複合戦技、作戦行動、部隊指揮、護衛任務など、多岐に渡る技術が求められた。

「……なんで俺、剣の構えで可愛いとか言われてんの?」

「いや、仕方ないだろ。小動物感があるんだって」

「ぶん殴るぞ、アッシュ」

久しぶりに再会した学園時代の友人アッシュにイジられながら、リレフはそれでも黙々と訓練を重ねていた。


「自分の人生を守るための力くらい、自分で持っておきたい」

それが、リレフがこの騎士学校で過ごした日々で得た一番大きなものだった。

訓練の合間、武器庫の裏で。

ラースが静かに声をかける。

「……お前、最近、目つき変わったな」

「そうか?」

「うん。何か目標でもあるのか?」

「特にないけど……」

「そうか?お前なら騎士団に入れば結構いい線行きそうだけどな」

(――それは)

リレフは何も言えずに、目を伏せた。

「そういえば……最近アネスといるところ見かけないけど。何かあったのか?」

「あぁ……ちょっとな」

アネスに言われた言葉がよぎる。
『 俺だけを見てくれ─』と言われたあの日から……俺たちの関係は少し変わった。簡単に言えば距離ができた。

「はぁ……どうすればいいんだろう」

「悩み事か?」

「んーー」

腕を組んで唸る。

ラースがそっと近付いてきたかと思うと、俺の頬に手を添えた。
ちゅっと音を立てて離れ、くすりと笑う。
日陰で少しくらい場所なのに、銀髪がキラキラと輝いた。

「お前な……誰もいないんだから、わざわざしなくていいだろ」

「念には念をね」

俺は男が恋愛対象……って訳じゃない、はずなのに、ラースに嫌悪感を感じない。
だから、こういうノリも受け入れてしまっている。

それでもやっぱり好きかと聞かれたらそれは、恋愛ではない……と思う。
こんな曖昧のままでいいのかな。



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