19 / 45
ゆびわ
5
しおりを挟む
「俺、ここから出るの久しぶり。」
新しいメンバーを迎えた1日の勤務を無事に終え、着替えてバックヤードの従業員の出入り口に向かい、受付に社員証をかざして1年ぶりに外に出た。洸一も一緒。モールの裏手にあるバス停を目指していた。
「ああ。そうだろうな。」
最後にここに降り立ったのは7年前のポストに手紙を投函した時…。こうやってみると、辺りは全然違って見える。でも、歩いているうちに過去と現在が整理されてきた。
「ここいらへんだよね?出口。」
あたりをキョロキョロ見渡す。建物の位置からいって巌城さんの会社のビルがあったあたりはこの辺なはず。そこはモールの大きな駐車場の外れで、小さな物置が建っていた。
「今は物置にカモフラージュしてある。このモールとともに造られた。中に入ると駐車場で使うコーンなんかが置いてあるはずだ。」
へぇ…あまり目立たないように工夫されてんだ。木々に遮られた出入り口を眺めながら、歩みを進めた。
俺たちは、もう慣れてしまったバス停までの道に足を向けた。バス停の後ろにある公園の桜はもう散り始めていて、時折吹く暖かな風に花びらを舞い散らせている。もう既に葉桜になった木もある。
「残念。…今年も花見できなかったな。」
去年は就職のことでバタバタしていて花見どころじゃなかった。俺の言葉に洸一が何か考えているようだったが、
「いい所がある。」
と呟いた。
7年前に行ったのと同じ道順で巌城さんの家に着く。でもそこは、7年前とは別の家が建っていた。
「洸一っ!家…家が新しくなってるっ!」
「ははっ。5年前に親父が建て直したんだ。前の家の傷みがひどくなったから…。行くぞ。」
車のキーを取ってくるという洸一の後ろに続いて、大きな二階建ての家の門をくぐった。
「お帰り、洸一。あら?…小野寺さん……?相変わらず若いわあ!」
広い玄関でおばあさんが出迎えてくれた。
「ご無沙汰していました。お元気でしたか?」
無言で上がって行った洸一に取り残されて、おばあさんと向き直った。もう80歳前後のはずだが、洸一のおばあさんの方が若々しかった。60代にしか見えない。
「元気よー!おじいちゃんも。2人で変わらず畑仕事を楽しんでるから。」
そんな話を聞いている間に、2階に上っていった洸一があっという間に戻ってきた。
「ばあちゃん、車持っていくから。…行こう。」
慌てておばあさんにいとまを告げ、洸一の後を追いかけた。
車庫のシャッターを開けると、二台の車が並んでいた。グレーのワンボックスカーと黒のオフロード車。どちらもピカピカにみがいてある。
「カッコいいっ!これ、洸一の車?」
黒のオフロード車に目が奪われる。ゴツゴツしたボディがとてもカッコいい。あまり最近は見かけないタイプかも。
「黒の方だ。中古だけどな。」
そういいながら、洸一は車のロックを解除した。
車の中は座席の位置が高く、とても見晴らしがいい。車のライトに照らされた道がよく見える。動き出した車を楽しんでいると、すぐに車が停車した。
「花見をしよう。」
洸一と降り立ったそこは、笹元公園だった。
新しいメンバーを迎えた1日の勤務を無事に終え、着替えてバックヤードの従業員の出入り口に向かい、受付に社員証をかざして1年ぶりに外に出た。洸一も一緒。モールの裏手にあるバス停を目指していた。
「ああ。そうだろうな。」
最後にここに降り立ったのは7年前のポストに手紙を投函した時…。こうやってみると、辺りは全然違って見える。でも、歩いているうちに過去と現在が整理されてきた。
「ここいらへんだよね?出口。」
あたりをキョロキョロ見渡す。建物の位置からいって巌城さんの会社のビルがあったあたりはこの辺なはず。そこはモールの大きな駐車場の外れで、小さな物置が建っていた。
「今は物置にカモフラージュしてある。このモールとともに造られた。中に入ると駐車場で使うコーンなんかが置いてあるはずだ。」
へぇ…あまり目立たないように工夫されてんだ。木々に遮られた出入り口を眺めながら、歩みを進めた。
俺たちは、もう慣れてしまったバス停までの道に足を向けた。バス停の後ろにある公園の桜はもう散り始めていて、時折吹く暖かな風に花びらを舞い散らせている。もう既に葉桜になった木もある。
「残念。…今年も花見できなかったな。」
去年は就職のことでバタバタしていて花見どころじゃなかった。俺の言葉に洸一が何か考えているようだったが、
「いい所がある。」
と呟いた。
7年前に行ったのと同じ道順で巌城さんの家に着く。でもそこは、7年前とは別の家が建っていた。
「洸一っ!家…家が新しくなってるっ!」
「ははっ。5年前に親父が建て直したんだ。前の家の傷みがひどくなったから…。行くぞ。」
車のキーを取ってくるという洸一の後ろに続いて、大きな二階建ての家の門をくぐった。
「お帰り、洸一。あら?…小野寺さん……?相変わらず若いわあ!」
広い玄関でおばあさんが出迎えてくれた。
「ご無沙汰していました。お元気でしたか?」
無言で上がって行った洸一に取り残されて、おばあさんと向き直った。もう80歳前後のはずだが、洸一のおばあさんの方が若々しかった。60代にしか見えない。
「元気よー!おじいちゃんも。2人で変わらず畑仕事を楽しんでるから。」
そんな話を聞いている間に、2階に上っていった洸一があっという間に戻ってきた。
「ばあちゃん、車持っていくから。…行こう。」
慌てておばあさんにいとまを告げ、洸一の後を追いかけた。
車庫のシャッターを開けると、二台の車が並んでいた。グレーのワンボックスカーと黒のオフロード車。どちらもピカピカにみがいてある。
「カッコいいっ!これ、洸一の車?」
黒のオフロード車に目が奪われる。ゴツゴツしたボディがとてもカッコいい。あまり最近は見かけないタイプかも。
「黒の方だ。中古だけどな。」
そういいながら、洸一は車のロックを解除した。
車の中は座席の位置が高く、とても見晴らしがいい。車のライトに照らされた道がよく見える。動き出した車を楽しんでいると、すぐに車が停車した。
「花見をしよう。」
洸一と降り立ったそこは、笹元公園だった。
0
あなたにおすすめの小説
【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。
キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、
ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。
国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚――
だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。
顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。
過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、
気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。
「それでも俺は、あなたがいいんです」
だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。
切なさとすれ違い、
それでも惹かれ合う二人の、
優しくて不器用な恋の物語。
全8話。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
俺の婚約者は小さな王子さま?!
大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」
そう言い放ったのはこの国の王子さま?!
パミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。
今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。
「年の差12歳なんてありえない!」
初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。
※不定期更新です
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない
綿毛ぽぽ
BL
アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。
━━━━━━━━━━━
現役人気アイドル×脱落モブ男
表紙はくま様からお借りしました
https://www.pixiv.net/artworks/84182395
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる