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教育実習一週目
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「ねぇ先生、隣町のどこに住んでるの?」
「へっ?」
給食のメンチカツを口に入れた途端に目の前の上地が話しかけてきた。今日はバドミントン部の子どもたちに囲まれている。上地は1組でバドミントン部の部長。しっかりした性格で、顧問の佐々木先生も一目置いている。でも、僕の隣に座る加納が副部長だというんだから驚きだ。
「そうそう。この前バスで3つ分って言ってじゃん? あの大きな川の近く?」
『うっ! 失敗したっ!』
加納の言葉を聞いて焦った。3日前にバス停まで一緒に帰った時に何気なく言ってしまったんだ。加納の言う通り、僕の住むシェアハウスは川沿いにあった。川向かいまではこの中学校の学区になっている。近所の中学生のジャージ姿がここと違うことに安心をして、ついポロッと口にしていた。
「そ、そうかな? 川があったっけ?」
「ええっ? だって3つ目って言ったらあの橋のとこじゃん。僕、街に行く時は結構バス使うから知ってるよ?」
加納が牛乳を飲みながら畳み掛けてきた。こいつらには何故かバラしたくはない。けど……。
「そう……かもしれない。」
あそこは結構な住宅街だ。50件は超える住宅やアパートが立ち並び、中ほどには結構大きな公園もある。このぐらいは言っても大丈夫。別に遊びに来たいって言ってるわけじゃないし。
「あそこにアスレチックがあったよな。小さい頃よく行った。」
斜め前の三井が呟くと、他の奴らの思い出話に花が咲いた。
「あの滑り台、めちゃくちゃ滑らなかったよな?」
「それよりもあの丸太吊り橋! 全然怖くねぇよ。」
「俺、小さい頃落ちてあご打った。」
ちょっとしたロープで上に上がり、滑り台で下に落ちるアスレチック。僕の家の真後ろにある。
「今度行かね?」
「えっ?」
子どもたちの話を聞き流していたけど、突然上地の声が耳に飛び込んできて目を上げた。
「行く行く!」
「いつにする?」
「土曜の部活帰り。」
「コンビニ寄って弁当買お。」
「いいなっ、それ。小池は?」
さっきからずっと視線を感じていた学級委員長。三井の隣でずっと無言でみんなを見ていた。こいつもバドミントン部だった。
「……行く。」
視線を外して味噌汁を飲む。こいつも来るのか。
『土曜日は家に引きこもろう。』
間違ってこの子たちに遭遇して住処がバレたくはない。部活は9時から11時だったはず。僕は佐々木先生の手伝いをすると言っても行く必要はない。先生もそう言ってたし、副顧問の内村先生もいる。大丈夫、大丈夫だ。
土曜日1日を教材研究に当てるとして、ずっと引きこもる。計画を立てたら急に安心した。今日の給食にはトマトはない。残りを美味しく腹に収めた。
「へっ?」
給食のメンチカツを口に入れた途端に目の前の上地が話しかけてきた。今日はバドミントン部の子どもたちに囲まれている。上地は1組でバドミントン部の部長。しっかりした性格で、顧問の佐々木先生も一目置いている。でも、僕の隣に座る加納が副部長だというんだから驚きだ。
「そうそう。この前バスで3つ分って言ってじゃん? あの大きな川の近く?」
『うっ! 失敗したっ!』
加納の言葉を聞いて焦った。3日前にバス停まで一緒に帰った時に何気なく言ってしまったんだ。加納の言う通り、僕の住むシェアハウスは川沿いにあった。川向かいまではこの中学校の学区になっている。近所の中学生のジャージ姿がここと違うことに安心をして、ついポロッと口にしていた。
「そ、そうかな? 川があったっけ?」
「ええっ? だって3つ目って言ったらあの橋のとこじゃん。僕、街に行く時は結構バス使うから知ってるよ?」
加納が牛乳を飲みながら畳み掛けてきた。こいつらには何故かバラしたくはない。けど……。
「そう……かもしれない。」
あそこは結構な住宅街だ。50件は超える住宅やアパートが立ち並び、中ほどには結構大きな公園もある。このぐらいは言っても大丈夫。別に遊びに来たいって言ってるわけじゃないし。
「あそこにアスレチックがあったよな。小さい頃よく行った。」
斜め前の三井が呟くと、他の奴らの思い出話に花が咲いた。
「あの滑り台、めちゃくちゃ滑らなかったよな?」
「それよりもあの丸太吊り橋! 全然怖くねぇよ。」
「俺、小さい頃落ちてあご打った。」
ちょっとしたロープで上に上がり、滑り台で下に落ちるアスレチック。僕の家の真後ろにある。
「今度行かね?」
「えっ?」
子どもたちの話を聞き流していたけど、突然上地の声が耳に飛び込んできて目を上げた。
「行く行く!」
「いつにする?」
「土曜の部活帰り。」
「コンビニ寄って弁当買お。」
「いいなっ、それ。小池は?」
さっきからずっと視線を感じていた学級委員長。三井の隣でずっと無言でみんなを見ていた。こいつもバドミントン部だった。
「……行く。」
視線を外して味噌汁を飲む。こいつも来るのか。
『土曜日は家に引きこもろう。』
間違ってこの子たちに遭遇して住処がバレたくはない。部活は9時から11時だったはず。僕は佐々木先生の手伝いをすると言っても行く必要はない。先生もそう言ってたし、副顧問の内村先生もいる。大丈夫、大丈夫だ。
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