僕とオオカミどものシェアハウス

もこ

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教育実習一週目

13

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 ざっと片付けて掃除機をかけて、30分もかからずに部屋の掃除が終わった。何か甘いものが飲みたい。掃除機を一階の収納スペースに入れていると、キッチンからトモとユウのボソボソと話す声が聞こえてきた。

「…………だろ? ……のか?」
「大丈夫。」
「でも………では…………だろ?」
「大丈夫。」

 トモの低い声は聞こえてきたけど、ユウの声は聞き取りづらい。でも、何か深刻な話をしているような気がして、キッチンへ入るのは諦めて自分の部屋へ戻った。

 僕の部屋には机は無い。床に置いたテーブルは、冬にはコタツになる優れもの。ダメになるクッションを2つ並べて、時折その上で体を伸ばしつつ数学の教科書に取り組んだ。

 トントン

「はい。」
 2度目にクッションでゴロゴロしていた時にドアをノックされて慌てて体を起こす。

「お昼だよ。降りてきて。」
「は、はい! ありがとうございます。」

 ユウの声だ。スマホで時間を確認すると、もうすぐ1時。昼食を一緒にとることを期待していなかったといえば嘘になるけど、誘われるとやはり嬉しい。やはりトモが作ってくれたのだろうか? 手伝えばよかった、と少しだけ後悔した。

「お手伝いしなくてすみません。」
「いいって。座って。」

 キッチンへ降りて、もう僕の定位置になりつつあるトモの隣に座る。目の前には、結構渋い深緑色のランチョンマットに乗った冷やし中華が。僕はその上に載せてある赤い野菜に目が釘付けになった。

『うげっ! トマトだっ!』
 さっきの買い物では買わなかった。この6日間一度も食卓に上がってなかったのに……。

「はははっ。だから言ったろ? カズはトマトが苦手なんだって。」
「そうなのか?」
 僕の顔色を読んだに違いない。ユウが笑い声を上げる隣でトモが不思議そうな顔をした。

「このランチョンマット素敵ですね。買ったんですか?」
「いや、同僚に貰ったんだ。何か奥さんが手芸が得意とかで。あ、トマトもだろ?」
「ああ、さっき田崎さんから貰ってきた。」
 2人の言葉を聞きながら水色の皿に盛られた冷やし中華を見ているうちに、ふと気付いた。

「あ、僕が苦手だと知って小さくしてくれたんですか?」
 2人の皿に乗っているのは明らかに厚めのくし切りなのに、僕のものは1.5cmほど。明らかに薄めだ。

「ああ。このトマトはとても甘い。食べてみろ。」
 トモに促されて迷う。甘いと言われても、苦手なものには変わりない。けれど、せっかく苦手な自分のためを思って薄くしてくれたトモの気持ちと、どうせ食べるなら早く済ませた方がいいという気持ちが相まって、目の前の箸を取り上げた。

「……甘いっ! 本当に甘いです!」
 隣のトモを見る。一口齧って驚いた。酸っぱさが全然なくて中のドロっとした部分も平気だ。残りを一気に口に入れた。うん、平気。もう一つも一気に……完食だ!

「だろ? 食べづらい皮は剥いたし。」
「何だ、サービス満点だな。俺のには皮ついてるけど。」
 ユウの言葉に2人の皿を見る。まだ手をつけられてないトマトたちが皮がついたまま鎮座していた。

「ははっ。カズ、顔がトマトだ。」
 サービス満点……ユウの言葉に、どう返したらいいのか分からなかった。


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