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教育実習ニ週目

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「なかなか良かったじゃないか。まとめも要点を掴んでた。」
「ありがとうございます。」

 金曜日の放課後、指導教官の佐々木先生と話をしていた。来週はもう1時間授業をして、最後の週には仕上げの授業を数学科の先生方と校長先生に見てもらう。今日はどこの授業をするかと、指導案の書き方を教えてもらっていた。

 佐々木先生の良いところは、ダメ出しをするんじゃなくて、自分だったらこうするという意見で考えさせてくれるところだ。40代のベテラン教師。僕も20年ぐらい教えれば、佐々木先生のようになれるのだろうか?

「じゃあ、最後は二次関数で良いんだな? 授業をするのは水曜日だから、来週の金曜日には指導案を見せてくれ。途中までしか出来ていないとしてもだ。」
「はい。分かりました。」

 今日の反省と打ち合わせが終わり、実習の記録簿に印をもらって職員室を出る。今日で教育実習の半分が終了だ。明日と明後日は休日。でも、僕がやる授業の指導案に手をつけなくては。

『今日の夕飯、何かな?』
 だんだんとシェアハウスに帰るのが、楽しみになってきている僕がいる。月曜日にはユウがいなかったけど、翌日からは今まで通り、何事もなかったように4人で食卓を囲んだ。今日も当然そのはず。帰り支度を整えて外に出ると、途端に声をかけられた。

「わー先生。」
「おっ!? お前らまだいたのか!」
 自転車に跨った加納と菊池が校門の前でまっていた。もう7時近い。流石に家の人も心配するだろう。

「バス停まで。ね?」
「何が『ね?』だよっ! 家の人も心配するだろ?」
 加納に言って聞かせるが、ニヤニヤするばかりで効果がない。僕の歩調に合わせるように2人が両脇で自転車を漕ぎはじめた。

「大丈夫だって。俺ら近所なんだ。今日は遅くなるかもって言ってあるし。」
「でも、もうすぐ7時だぞ?」
「平気だって。」
 菊池の言葉に少しは安心したけど、やはりここはビシッと言ってやらないと。

「わー先生、結構人気あるよ。」
「へっ?」
 思わぬ加納の言葉に思わず変な声が出た。

「そうそう、彼女いるのかってもっぱらの噂。その真相を僕らが確かめる役。」
 そんな事で待ってたのか? 全く今時の中学生は……と考えて苦笑する。コイツらとは7つほどしか離れてない。いや、僕の誕生日は2月だから6つか?

「おっ! 笑ってる。彼女いるんだ?」
「ははっ、残念ながら今はいないよ。」
 今は。うん、今までいた事ないけど、ちょっとぐらい見栄を張ってもいいだろ? 僕の言葉で菊池が驚いたように声を張り上げた。

「えっ? じゃあチャンスじゃん! みんな狙うかもよ。」
「バカ。教え子と付き合うはずないだろ? そもそも未成年に興味はない。」
 そんな話をしながら程なくバス停に着き、バスが来るまで話したいという2人を家に帰るように何とか説得して帰らせることができた。


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