僕とオオカミどものシェアハウス

もこ

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教育実習三週目

9

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「はい、2人1組で柔軟!」

 加納の一言で、北と南を繋ぐ通路いっぱいに子どもたちが散らばり、柔軟運動が始まった。今日は雨。体育館を使えないバドミントン部は、校舎内の廊下や階段を使って走ったり筋トレをしたりしている。各階ごとに使う部活動が決まっている。バドミントン部は男子も女子も2階だった。

「先生、組んでもらってもいいですか?」
「あ? ああ、いいよ。」
 小池の言葉にハッとする。周りを見てみるともう2人1組になっていて、小池は余ってしまったらしい。小池と向かい合い、無言で足の方からのストレッチを始めた。

「小池、体柔らかいな。」
 小池を座らせて背中から押してやる。男にしては柔らかい方だと思う。伸ばした足に顔がもう少しで付きそうだ。

「毎日やってますから。」
「そうか。」
体を起こした小池が無言で座れと言ってくる。えっ? 僕もやるわけ? いつもは見守っているだけだから、自分一人でストレッチをすることがあっても、誰かと組んだことなどなかったんだ。

「いいよ、先生は。」
「いいですから。体が硬くなりますよ?」
 断ったものの、小池だけにやらせていては時間が余ってしまう。しょうがないなと諦めて、自分もやることにした。

「先生、昔から硬いからな? 力一杯押すなよ?」
「はい。」
 膝を揃えて足を真っ直ぐに伸ばして前に上半身を倒す。後ろから、小池の両手が背中に当てられてグーっと体重をかけられた。

「痛い痛い痛い!」
「えっ? もうですか?」
「だから、硬いんだって。もっとゆっくりやって。」
 若さの違いか、それとも僕が硬すぎるのか……。手加減を覚えた小池のお陰で、それからは無理なく動くことができたものの、何となく敗北感が漂ってきていた。

「な、腕を掴んで手伝って?」
足を広げて体を横に倒す。脇腹に手を置かれるのはくすぐったい。腕を掴んで足の爪先まで触れるように、小池に補助を頼んだ。

「いいですよ。」
 眼鏡の奥で笑われているような気がするのは気のせいだろうか? ちょっとだけムッとしながらも、小池に手伝ってもらい、柔軟を進めていった。

「うわー、絶対に明日、筋肉痛だわ。」
「明日出ればいいですけどね。先生、歳とってるから明後日とか。」
 なにっ? お前たちよりは歳は上だけど、まだ21だぞっ? 内心憤慨するけど、年上なのは間違いない。ここは大人の対応。小池と同じ土俵には立ってはダメだ。

「そ、そうだな。」
「ぷっ。」
 俺の言葉に何故だか小池が吹き出した。クツクツと声に出さないようにして笑う小池を見ながら赤面する。そんなに笑うことないじゃないか。

「ほらっ。明日は金曜日で体育館だし。じっくりとやる暇ないんだから続きをやるぞ?」
 笑いながら座った小池と交代をして、さっきよりも力を入れてやろうと小池の背後に回り込んだ。


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