56 / 104
教育実習四週目
1
しおりを挟む
「おはようございます。」
「おはよう。」
「五十嵐君、あと一週間だね。」
職員室の扉を開いて中に入っていくと、あちこちから声が飛んできた。この学校の先生方は活気に満ち溢れている。佐々木先生もそうだ。僕が学校に到着する頃には、余裕でコーヒーを啜って教科書を眺めていたりする。焦っているような姿は一度も見たことがない。
『あ……小池。』
今日は職員室の奥、佐々木先生の机のそばに、小池が立っていた。近づくべきかどうか躊躇して、そんな自分に気づき苦笑する。これでは先生失格だ。
昨日色々考えて、小池には何もなかったように接しようと心に決めていた。もし小池が何か言ってきたら、その時は誠実に対応する。その時の本心をしっかりと伝える。そして最後にきちんと謝る。これから先、小池と僕が何かあろうはずがない……しっかりと伝えるんだ。
「佐々木先生、おはようございます。」
僕が近づくのに気づいた小池が驚いた顔を見せた。少しだけ、ほんの少しだけ心が痛む。けれどそんな気持ちも笑顔に変えて話しかけた。
「おはよう、小池。」
「五十嵐先生おはよう。小池、じゃあ頼むな? しっかりと纏めろよ?」
「はい、分かりました。」
何か指示を受けていた小池が答えて動き出す。こちらをチラリと見て会釈した姿からは、小池の感情は何も読み取ることはできなかった。僕が考えすぎたのだろうか? 土曜日に加納たちと来なかったのはただの偶然?
「五十嵐君、指導案できたか? もしできたんだったら朝のうちにここに出しておいてくれ。2時間目の空き時間に見てしまいたい。」
今朝は朝の学活に来なくていいとの指示を受けて、佐々木先生の机の上のパソコンを使って印刷を行った。今日は1時間目の3年2組の数学も学活に変えるから来なくていいと言われた。ということは、今日は3年生2クラスと1・2年生1クラスずつ……1時間目と5時間目に空きがある。水曜日の授業のプリント作りができるな。
2時間目の授業が終わり、2年生を担当している吉村先生と話しながら職員室へ戻った。連立方程式は僕が水曜日にやる二次方程式とは全然答えの出し方は違うけど、計算をいかにして多く解かせるのかというところが勉強になる。先生ごとに教え方が違うのがとても興味深い。職員室に入ると、奥の自分の机の前で電話対応していた佐々木先生に激しく手招きされた。
「はい、はい。それではお祖父様とお祖母様2人でいらっしゃるということですね? はい。わかりました。準備させておきます。……はい……。」
何だか深刻そうな表情の佐々木先生のそばに行くと、先生がメモに走り書きをしていた。
『小池すぐ連れてきて。帰り支度させて。』
何が何だか分からなかったけれど、話の終わらなそうな佐々木先生が早く行けという身振りをした事で我に返り、小池を呼ぶために3階の教室まで急いだ。
「おはよう。」
「五十嵐君、あと一週間だね。」
職員室の扉を開いて中に入っていくと、あちこちから声が飛んできた。この学校の先生方は活気に満ち溢れている。佐々木先生もそうだ。僕が学校に到着する頃には、余裕でコーヒーを啜って教科書を眺めていたりする。焦っているような姿は一度も見たことがない。
『あ……小池。』
今日は職員室の奥、佐々木先生の机のそばに、小池が立っていた。近づくべきかどうか躊躇して、そんな自分に気づき苦笑する。これでは先生失格だ。
昨日色々考えて、小池には何もなかったように接しようと心に決めていた。もし小池が何か言ってきたら、その時は誠実に対応する。その時の本心をしっかりと伝える。そして最後にきちんと謝る。これから先、小池と僕が何かあろうはずがない……しっかりと伝えるんだ。
「佐々木先生、おはようございます。」
僕が近づくのに気づいた小池が驚いた顔を見せた。少しだけ、ほんの少しだけ心が痛む。けれどそんな気持ちも笑顔に変えて話しかけた。
「おはよう、小池。」
「五十嵐先生おはよう。小池、じゃあ頼むな? しっかりと纏めろよ?」
「はい、分かりました。」
何か指示を受けていた小池が答えて動き出す。こちらをチラリと見て会釈した姿からは、小池の感情は何も読み取ることはできなかった。僕が考えすぎたのだろうか? 土曜日に加納たちと来なかったのはただの偶然?
「五十嵐君、指導案できたか? もしできたんだったら朝のうちにここに出しておいてくれ。2時間目の空き時間に見てしまいたい。」
今朝は朝の学活に来なくていいとの指示を受けて、佐々木先生の机の上のパソコンを使って印刷を行った。今日は1時間目の3年2組の数学も学活に変えるから来なくていいと言われた。ということは、今日は3年生2クラスと1・2年生1クラスずつ……1時間目と5時間目に空きがある。水曜日の授業のプリント作りができるな。
2時間目の授業が終わり、2年生を担当している吉村先生と話しながら職員室へ戻った。連立方程式は僕が水曜日にやる二次方程式とは全然答えの出し方は違うけど、計算をいかにして多く解かせるのかというところが勉強になる。先生ごとに教え方が違うのがとても興味深い。職員室に入ると、奥の自分の机の前で電話対応していた佐々木先生に激しく手招きされた。
「はい、はい。それではお祖父様とお祖母様2人でいらっしゃるということですね? はい。わかりました。準備させておきます。……はい……。」
何だか深刻そうな表情の佐々木先生のそばに行くと、先生がメモに走り書きをしていた。
『小池すぐ連れてきて。帰り支度させて。』
何が何だか分からなかったけれど、話の終わらなそうな佐々木先生が早く行けという身振りをした事で我に返り、小池を呼ぶために3階の教室まで急いだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる