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教育実習四週目

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 着替えを終えて手を洗い、リビングに向かう。部屋でしっかりと時間をかけて鼓動を鎮めてきた。もう大丈夫だ。その間にユウとリョウが帰ってきたようで、下から賑やかな声が聞こえてきていた。

「何でだよっ!」
「いいから、いいから。俺の部屋にまだ開けてない、良いワインがあるぜ? リョウのためにとっておいたんだ。」
「……ワイン?」

 キッチンのテーブルの上には、テイクアウトしてきたピザが、箱に入ったまま4枚重ねられていた。ユウは食器棚からワイングラスやタンブラーを取り出したり、冷蔵庫から飲み物を出したりと動き回っていた。「ワイン」の言葉で、リョウが上目遣いにユウを見ている。釣られたのが丸わかり。僕はテーブルの前に突っ立ったまま3人の様子を眺めていた。

「そっ、だから行こ。朝、今日一日はトモを一人にするって決めただろ?」
「…………。」

 トモはキッチンで、昼間使ったのであろう食器を洗っていた。2人のやり取りを聞きながら、「助かる。」とボソッと呟くのが聞こえた。

「……分かった。行く。」
「風呂は後から入ろうな? 2人で。」
「ば、ばかっ! 誰が2人で入るかっ!」

 一瞬で茹だこのようになったリョウに笑いかけながら、ユウがピザの箱を取りにくる。僕の顔を見ると軽くウィンクをして2つの箱を取り上げ、それをリョウに手渡して、2人でリビングを出て行ってしまった。

『えっ? ぼ、僕はどうするべき?』

 何かしらトモに事情があって、今日は独りにするべきらしい。じゃあ、僕もこのピザをもらって2階に上がるべきなのだろう。もらっても……いいよな?

「トモさん、あ、あ、あの、ピザをもらっていって……」
「カズはここにいて?」
「へっ?」

 自分の言葉を遮るように言われた言葉でトモを見る。トモは濡れた手をタオルで拭いて、こちらに歩いてきていた。

「もう少し、ここにいて欲しい。」
 目の前に立ったトモにすかさず抱きしめられた。僕の肩に顔を埋めて……。さっきと同じ。

「トモさん、何かあったんですか?」
 少しだけトモが震えているのがわかる。何か怖がっているような、それか我慢をしているような……。

「ずっと、こうしていたい。」
 耳元で囁かれた震える声に力が抜ける。こうしていることで、何か僕がトモの役に立つのなら……。

「良いですよ。」
 僕の返事を聞いて、トモが抱きしめる腕の力が強くなったことを感じながら、しばらくの間そのままでいた。

「……ありがとう。」
 顔を埋めたままで呟かれた言葉は、喜びというより、やっとのこと紡ぎ出されたもののように感じた。
 

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