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オオカミは1人だけ
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行ってしまった。心にポッカリと穴が空いたような気分で窓を見つめていた。けれども直ぐに窓が暗くなって我に返った。
「さぁ、君たちの番だ。」
コウイチさんの低い声が響いて顔を向けると、コウイチさんがパソコンの電源を落として椅子から立ち上がるところだった。
「小池君はこれから『U』の部屋で仕事をすると言ったな?」
「はい。」
「という事は、ここの隣だろ?」
「ええ。」
2人の会話が続く。何を言っているのか分かるような分からないような……。2人の顔を交互に見ながら耳を澄ませていた。
「俺はこの部屋の向かい側に文字通り住んで仕事をしている。『過去の部屋』だ。」
「承知しています。」
「そうか……。これから頻繁に顔を合わせることになるかもしれないな。2人は住まないのか?」
「いいえ。少し離れた場所に住んで通うことになるかと思います。」
やはり、さっき見たキッチンのある部屋。ここは生活できるような設備が整っているに違いない。
「五十嵐君は若そうだが、どこで働いてるんだ?」
急に話を振られて慌てる。でも、コウイチさんの顔をまっすぐに見て答えた。
「僕は今、大学4年です。中学校の数学の教師になるために勉強中です。」
「そうか。」
僕を見ていたコウイチさんが少し厳しい表情を浮かべてトモを見た。
「小池君、五十嵐君にサインを貰うことになると思うが、大丈夫か?」
「ええ。問題ありません。明日にでも書類を預かった後で、説明をしておきます。」
「書類?」
何かしら僕に関係があるはずのことで、思わず口を挟まずにはいられなかった。トモがこちらを見て話し出す。
「言ったろ? 俺たちは国の秘密機関で働いている。カズには多くの情報を知られてしまった。それを口外しません、という契約の書類を提出しなければならないんだ。」
「君が安易に他の奴に漏らした一言で、未来が大きく変わってしまう可能性がある。12年後、あの2人に会うことも叶わなくなるほどの。」
あの2人に会うことも叶わない? トモに続いて言われたコウイチさんの言葉で全身に痺れが広がるような緊張が走った。
「だ、大丈夫だと思います。」
少し声が小さくなる。大丈夫だと思っても自信はない。トモの顔を見上げると、トモの腕が伸びてきて肩を抱かれ、引き寄せられた。
「大丈夫。俺がカズを見守っているし、疑問があったら何でも聞いていい。安心して?」
トモの一言で体が温かくなっていくような気がした。トモに任せていけば大丈夫だろう。これから2人で何でも話し合って、何事も分け合って……。
「じゃあ、これで解散だ。」
コウイチさんの声を聞いて、トモがスラックスのポケットを弄った。
「洸一さん、車のキーです。2台分。ありがとうございました。」
「帰りは大丈夫なのか?」
「いえ……バスを使おうかと。貸し出しは1か月という話でしたし。」
あ、あの黒のオフロード車はこの人のものだったんだ。じゃあ白のムーブもこの人の所有?
「まだ俺のは使っていていい。親父の車が眠ったままだから、俺はそれでしばらく代用できる。小池君が自分の車を手に入れたら返してくれ。」
「ありがとうございます。」
トモの手から1つだけキーを受け取って、洸一さんが僕を見た。
「あの2人がいなくなって今日は少し寂しくなるだろうな。」
「はい。」
その通りだ。あのシェアハウスにもうリョウやユウがいないだろうと想像しただけで、少しだけ寂しい気持ちになる。
「大丈夫。そんな思いはさせないから。」
頭にチュッとトモのリップ音が響いた。カッと顔が熱くなる。ちょっと待って? コウイチさんと今、真面目な話をしていただろ? 違う?
「ははははっ! 大丈夫そうだ。じゃあこれで。」
コウイチさんの笑い声に見送られるように、簡単にお礼と挨拶を済ませて、それから僕たちはその部屋を後にした。
「さぁ、君たちの番だ。」
コウイチさんの低い声が響いて顔を向けると、コウイチさんがパソコンの電源を落として椅子から立ち上がるところだった。
「小池君はこれから『U』の部屋で仕事をすると言ったな?」
「はい。」
「という事は、ここの隣だろ?」
「ええ。」
2人の会話が続く。何を言っているのか分かるような分からないような……。2人の顔を交互に見ながら耳を澄ませていた。
「俺はこの部屋の向かい側に文字通り住んで仕事をしている。『過去の部屋』だ。」
「承知しています。」
「そうか……。これから頻繁に顔を合わせることになるかもしれないな。2人は住まないのか?」
「いいえ。少し離れた場所に住んで通うことになるかと思います。」
やはり、さっき見たキッチンのある部屋。ここは生活できるような設備が整っているに違いない。
「五十嵐君は若そうだが、どこで働いてるんだ?」
急に話を振られて慌てる。でも、コウイチさんの顔をまっすぐに見て答えた。
「僕は今、大学4年です。中学校の数学の教師になるために勉強中です。」
「そうか。」
僕を見ていたコウイチさんが少し厳しい表情を浮かべてトモを見た。
「小池君、五十嵐君にサインを貰うことになると思うが、大丈夫か?」
「ええ。問題ありません。明日にでも書類を預かった後で、説明をしておきます。」
「書類?」
何かしら僕に関係があるはずのことで、思わず口を挟まずにはいられなかった。トモがこちらを見て話し出す。
「言ったろ? 俺たちは国の秘密機関で働いている。カズには多くの情報を知られてしまった。それを口外しません、という契約の書類を提出しなければならないんだ。」
「君が安易に他の奴に漏らした一言で、未来が大きく変わってしまう可能性がある。12年後、あの2人に会うことも叶わなくなるほどの。」
あの2人に会うことも叶わない? トモに続いて言われたコウイチさんの言葉で全身に痺れが広がるような緊張が走った。
「だ、大丈夫だと思います。」
少し声が小さくなる。大丈夫だと思っても自信はない。トモの顔を見上げると、トモの腕が伸びてきて肩を抱かれ、引き寄せられた。
「大丈夫。俺がカズを見守っているし、疑問があったら何でも聞いていい。安心して?」
トモの一言で体が温かくなっていくような気がした。トモに任せていけば大丈夫だろう。これから2人で何でも話し合って、何事も分け合って……。
「じゃあ、これで解散だ。」
コウイチさんの声を聞いて、トモがスラックスのポケットを弄った。
「洸一さん、車のキーです。2台分。ありがとうございました。」
「帰りは大丈夫なのか?」
「いえ……バスを使おうかと。貸し出しは1か月という話でしたし。」
あ、あの黒のオフロード車はこの人のものだったんだ。じゃあ白のムーブもこの人の所有?
「まだ俺のは使っていていい。親父の車が眠ったままだから、俺はそれでしばらく代用できる。小池君が自分の車を手に入れたら返してくれ。」
「ありがとうございます。」
トモの手から1つだけキーを受け取って、洸一さんが僕を見た。
「あの2人がいなくなって今日は少し寂しくなるだろうな。」
「はい。」
その通りだ。あのシェアハウスにもうリョウやユウがいないだろうと想像しただけで、少しだけ寂しい気持ちになる。
「大丈夫。そんな思いはさせないから。」
頭にチュッとトモのリップ音が響いた。カッと顔が熱くなる。ちょっと待って? コウイチさんと今、真面目な話をしていただろ? 違う?
「ははははっ! 大丈夫そうだ。じゃあこれで。」
コウイチさんの笑い声に見送られるように、簡単にお礼と挨拶を済ませて、それから僕たちはその部屋を後にした。
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