自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

文字の大きさ
28 / 87
 ー純ー

2

しおりを挟む
『あれっ? ここにあった灰皿は?』

 確かにここに灰皿があった。ここは購買の裏。目の前には学内を横切る道路。その向こうはちょっとした林になっている。道の左はまた幾つかに分かれていて、奥にはカフェや図書館がある。

 俺がここに通っていた時には唯一の喫煙所だった。安いベンチも2つL字型に置かれていて、友だちとよく駄弁ったっけ。

『ちっとここで吹かすのは嫌だな。』

 カフェに向かう若者も多い。ここには目を向ける者などはいないだろうが、しかし……。

 俺は店に戻るように建物を周り、購買の向かって右側の壁の所で煙草を吹かすことにした。こちらは、グラウンドに向かっているから誰もいない。

『グラウンドなんて、一年の時の体育でサッカーをやった以来だな。』

 煙草に火をつけて煙を吸い込みながら考える。あの頃は俺も若かった。体を動かすのも好きだったから、結構サッカーには燃えてたような……。

『いや、サボってたな。』

 彼氏のアパートに入り浸り。あの頃は覚えたてだったから、とにかく夢中になってたっけ。

 購買や学食に入っていく賑やかな声が煩い。今時はどんな会話をしてるのやら。火のついた煙草を持ったまま、少しだけ建物の表に近づいた。

『ん? あれは……?』

 黒い帽子にブラックジーンズ。そして茶色のダウンジャケット。見覚えのある格好で1人歩いてくる奴がいた。髪の毛は見えないが、たぶんアレは侑だ。様子を見ていると、侑は購買に入っていったようだった。

『昼飯でも買うのか?』

 あの彼女、いや、友だちとは一緒じゃないのか? 他には友だちがいないのか。かわいそうな奴だな。一人で昼を買うとしたら、どこで食べるのだろう?

 そんなことを考えているうちに、侑が店から出てきた。とっくに火が消えていた煙草の吸い殻を携帯灰皿にしまい込む。何も考えずに歩き出して、声をかけている自分がいた。

「おい。……侑。」

 横を向いた侑は少しだけ驚いたようだったが、すぐに睨んできた。

「何? っていうか何でここに? 仕事?」

 1つに纏めた髪が帽子の後ろに突き出して揺れている。一見男のように見えるが、もう俺には女にしか見えん。

「何?」

 オイオイ、そんなに睨みつけることないだろ? そう言いたいところだったが、自分でも何で呼び止めたのかか分からない。

「飯、買ったのか。」
 俺の口から出た言葉は本当にどうでもいいような問いかけだった。

「うん。」
 少しだけ目元が和らぐ。警戒心が薄れたか? 少しだけホッとしている俺がいる。コイツの睨みは好みだが、マジ怖え。

「どこで食べるんだ。」
 俺の問いかけに、上目遣いに俺を見てきた。俺のことを値踏みしているように感じるのは自意識過剰か? 大丈夫、俺はお前は専門外だ。安心していいぞ?
 

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心

夏目萌
恋愛
潰れかけの危機に立たされている実家の店を救いたくて、試行錯誤する来栖 侑那が偶然見つけたのは——「財閥御曹司の専属メイド募集」という、夢のような高収入の仕事だった。 ダメ元で応募してみると、まさかの即採用&住み込み勤務。 だけど、そこで待っていたのは傲慢で俺様な御曹司・上澤 巴。 「金目当てで来たんだろ?」 なんて見下すような言葉にも侑那は屈しないどころか言い返され、“思い通りにならない女”との初めての出逢いに巴は戸惑いを隠せなくなる。 強気なメイドとツンデレ御曹司。 衝突するたび、距離が近づいていく二人だけど、ひとつの誤解が、二人の心をすれ違わせてしまい——。 俺様ツンデレ御曹司×強気なメイドのすれ違いラブ 他サイト様にも公開中

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

恋と首輪

山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。 絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。 地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。 冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。 「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」 イケメン財閥御曹司 東雲 蓮 × 「私はあなたが嫌いです。」 訳あり平凡女子 月宮 みゆ 愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。 訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

処理中です...