自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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 ー純ー

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 差し出した手を握る手が震えてるのが分かる。顔は真っ青だ。唇の色が無い。コイツは、やはり「女」なんだな。

「家は近いのか? 送るよ、一応な。」

 ゆっくりと歩いていく侑の後をついて行く。後ろを振り返っても誰も歩いてくる気配はなかった。ここは本当に人通りが少ないらしい。物騒な所だ。いつもコイツはこんな所を帰るのか。

 それにしても侑の歩き方が妙だ。少しふらついている。支えてやった方がいいのか? この場合はどうしたらいいんだ?

「おい、侑、大丈夫か。」

 声をかけた瞬間に、侑が線路沿いの草むらに向かって吐くのが分かった。慌てて抱え込む。吐き気が治るのを待って支えながら、侑が教えた家の方に歩いて行った。

「純……ありがとう。」

 途中呟いた声が弱々しい。コイツはこんなに弱い奴だったのか? そんなふうに思いながらも、俺が助けることになった経緯を話す。

 「……っておい、大丈夫か?」

 話の途中で侑の体の重みが腕に直接乗ってきた。鞄越しに支えて首に手をやる。……熱い。

「お前、熱あるぞ? えっ? ショックで熱が出たのか?」

 半分目が開いてない。意識を失いかけている。支えてどうにか歩かせながら、とにかくコイツの家まで送り届けなければ、と必死になっている俺がいた。

「このアパートだろ? 何号室だ?」
「……105。」

 アパートの郵便受けの名前を確認する。「SAKURAI」……コイツの苗字は桜井? そういえば侑としか聞いてない。桜井侑というのか。ほとんど侑の体を引きずるようにして105号と表示のあるドアへと近づく。

「鍵は?」
 俺の言葉に、後ろのグレーの鞄がずり落ちる。侑はそれを掴んで前に持ち、中を探ろうとしていた。

「中にあるんだな? 俺が探す。いいよな?」

 返事を待たずに、壁に取り付けてある街灯を頼りに探してみる。侑はドアに手をついて何とか立とうとしているようだった。デカい熊のぬいぐるみがついたキーが手に触る。迷わずにそのキーをシーリングに挿すと、すぐに解錠できた。

 明かりをつけると、小さな玄関に短い廊下。左手にはトイレや風呂場であろうドアが並んでいる。一番奥のドアを開けると、そこはダイニングキッチンになっているようで、対面式のキッチンにカウンターが付いていた。

『寝るとこはどこだ? こっちか?』

 いい加減、俺も侑を支える腕が疲れてきた。ダイニングにあるこんな小さなソファで寝てるとは考えられない。そこいら中の明かりをつけながら、ダイニングの奥にある部屋のドアを開けると、そこに寝室があった。

 作りつけなのであろう、茶色のクローゼット。同じ色の床。同じ色のシングルサイズのベッド。掛け布団の色まで茶色。

『茶色が好きな奴だな。』

 コイツの服の好みといい、シンプルな色に拘りがあるのかもしれない。普通、女だったらピンクとか赤とかが好きなんじゃないか?

 そんな事を考えながら掛け布団を上げ、中から出てきたクリーム色の毛布も剥いで、そこに侑を寝かせることにした。
 

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