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ー純ー
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途中男とぶつかって相手がよろめいたが、俺は坂の上に見えた車と侑しか目に入らなかった。夢中で侑をかかえて背後に倒れ込む。線路との間を仕切る柵が俺たちの体を受け止めてくれた。
目の前を車が通り過ぎる。『良かった。』と思う間もなく、近くに立っていた男が走り出すのが分かった。
『この野郎!』
侑を置いて追いかける。坂の上から自転車で降りてきた爺さんが怪訝な顔をしてこちらを見たが、構ってはいられなかった。坂の向こうの十字路で、どちらに行こうか奴が躊躇した隙に腕を掴む。
「……はっ、はっ、離せっ!」
『無理。』
なんだ、こんな短距離で息切れか? 興奮したようにはぁはぁ言っている男の腕を両方後ろに回し、そのまま道を戻る。奴も諦めたのか、それとも後ろ向きで歩かされるのが嫌だったのか、しばらくすると自分から方向変換をして前向きに歩き始めた。
コイツとはどこで会った? 少し俯き加減で歩く男のうなじを眺めながら考える。視界に侑が入った途端、パズルのピースが当てはまるように、侑とこの男が手を繋いで歩いていた情景が脳裏に映った。
『元カレか! 確か侑が別れたと言ってた奴だ。』
そう思った瞬間に奴の腕を掴んでいた腕に力が入り、さらに上に捻り上げていた。
「いてっ! いてててっ! は、離してっ!」
こちらを向いて情けない声を上げた瞬間、コイツも侑に気づいたらしい。俯いてそれっきり黙り込んでしまった。侑が驚いた顔でこちらを見ている。……無理もない。
「お前、侑の元カレだろ? 別れたんじゃなかったのか。何? 未練? 女々しい奴だな。」
「…………。」
侑の手前1メートルの所で止まって侑を見る。元々白い顔が、さらに真っ青になっているのが分かった。
「侑、どうする。俺が目撃者。コイツは駅からお前の後をつけて、わざと突き飛ばした。車が来るのを見計らって。……駅前の交番に突き出すか?」
侑が自分の体を抱き込むようにして首を振る。コチラを見ていられないかのように地面に視線を落とすのが見えた。……震えている。無理もない。
「お前な、今やった事は殺人未遂だぞ? 成人してんだろ? ムショ行きだ。それでもいいのか?」
視線をコイツのうなじに戻して語りかける。たぶん、コイツも学生だろう。侑と同じ大学か? そう思った瞬間に、さらに手に力が入った。
「侑は警察に突き出さなくていいとよ。よかったな。でも、もう侑には近づくなよ? どこででもだ。近づいたと聞いたら、俺が黙っちゃいない。……分かるな?」
頷いたのを確認して写真を撮る。コイツが2度と侑と関わろうとしないように。これで懲りればいいんだが。
腕を解放すると俺や侑には目もくれずに、駅に向かって一目散に坂を下っていった。あの様子じゃ大丈夫だと思うが……油断はできないな。男が視界から消えるまで見送り、視線を侑に向ける。
「侑、ほら、手。」
目の前を車が通り過ぎる。『良かった。』と思う間もなく、近くに立っていた男が走り出すのが分かった。
『この野郎!』
侑を置いて追いかける。坂の上から自転車で降りてきた爺さんが怪訝な顔をしてこちらを見たが、構ってはいられなかった。坂の向こうの十字路で、どちらに行こうか奴が躊躇した隙に腕を掴む。
「……はっ、はっ、離せっ!」
『無理。』
なんだ、こんな短距離で息切れか? 興奮したようにはぁはぁ言っている男の腕を両方後ろに回し、そのまま道を戻る。奴も諦めたのか、それとも後ろ向きで歩かされるのが嫌だったのか、しばらくすると自分から方向変換をして前向きに歩き始めた。
コイツとはどこで会った? 少し俯き加減で歩く男のうなじを眺めながら考える。視界に侑が入った途端、パズルのピースが当てはまるように、侑とこの男が手を繋いで歩いていた情景が脳裏に映った。
『元カレか! 確か侑が別れたと言ってた奴だ。』
そう思った瞬間に奴の腕を掴んでいた腕に力が入り、さらに上に捻り上げていた。
「いてっ! いてててっ! は、離してっ!」
こちらを向いて情けない声を上げた瞬間、コイツも侑に気づいたらしい。俯いてそれっきり黙り込んでしまった。侑が驚いた顔でこちらを見ている。……無理もない。
「お前、侑の元カレだろ? 別れたんじゃなかったのか。何? 未練? 女々しい奴だな。」
「…………。」
侑の手前1メートルの所で止まって侑を見る。元々白い顔が、さらに真っ青になっているのが分かった。
「侑、どうする。俺が目撃者。コイツは駅からお前の後をつけて、わざと突き飛ばした。車が来るのを見計らって。……駅前の交番に突き出すか?」
侑が自分の体を抱き込むようにして首を振る。コチラを見ていられないかのように地面に視線を落とすのが見えた。……震えている。無理もない。
「お前な、今やった事は殺人未遂だぞ? 成人してんだろ? ムショ行きだ。それでもいいのか?」
視線をコイツのうなじに戻して語りかける。たぶん、コイツも学生だろう。侑と同じ大学か? そう思った瞬間に、さらに手に力が入った。
「侑は警察に突き出さなくていいとよ。よかったな。でも、もう侑には近づくなよ? どこででもだ。近づいたと聞いたら、俺が黙っちゃいない。……分かるな?」
頷いたのを確認して写真を撮る。コイツが2度と侑と関わろうとしないように。これで懲りればいいんだが。
腕を解放すると俺や侑には目もくれずに、駅に向かって一目散に坂を下っていった。あの様子じゃ大丈夫だと思うが……油断はできないな。男が視界から消えるまで見送り、視線を侑に向ける。
「侑、ほら、手。」
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