自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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遭遇6 〜侑〜

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「純!」

 2人の間にある街灯が純の顔を照らし出し、心臓の鼓動が落ち着いてきた。ゆっくりと歩み寄る。純は会社の帰りなのか、スーツ姿に紺色の作業服を着ていた。

「会社帰り?」
「おう。お前、医者には行ったのか。」

 純の問いに首を振る。あの朝、微熱まで下がっていた体温は夕方には平熱になり、市販の風邪薬だけで治してしまった。それも純に助けられたおかげ。

「あの時、看病してくれたの純でしょ? ありがとね? 助かった。夕方には元気になって買い物まで行っちゃった。」
「土曜日だから、どこか病院も開いてただろうに。」

 純と向かい合うように立つ。左手に買い物袋を下げた純が呆れ果てたような顔をしていた。いつもの顔。この人の髪は癖毛なの? いやに大きなウェーブなんだけど。でもどんな顔であろうと、ここはキチンと挨拶すべき。

「先週は、ありがとうございました。お粥も美味しかったです。甘いお水も美味しかったです。」
 せっかく頭を下げてしっかりと挨拶したのに、返ってきた言葉は酷かった。

「ばーーか。あれは手作りの経口補水液。甘過ぎずにうまかっただろ?」
 でも、見下ろされた目は少しだけ優しそうに瞬くのが見えて嬉しくなった自分がいる。

「美味しかった。また飲みたい。」
「こら、贅沢言うな。」

 にっこり笑って言ったのに、今度は顰めっ面。何だろこの人。周りにいる男の子とはちょっと違う。何を考えているのか全く読めない。何となく視線を外すと、大きな買い物袋が目に入った。ネギと牛蒡がはみ出してる。

「その買い物袋は?」
「ああ、お前の家の冷蔵庫何もなかったからな。差し入れ。ほら。」

 差し出された袋を無意識に掴んで中を見た。大きな袋の中に、ネギや牛蒡の他に、ジャガイモや玉ねぎ、人参が見えた。それに魚、豚肉の小さなパック。ジュースもある。わざわざ、これを買って?

「えっ? 貰っていいの?」

 何なのこの人? と言う疑問とともに、嬉しい気持ちも湧き上がる。何だろう。親戚の叔父さんがお土産を持ってきてくれた、そんな感じ?

「ああ。じゃあな。」

 純が体の向きを変えようとした途端に、自分の口から一人でに言葉が飛び出ていた。

「一緒に夕飯食べない?」

 振り返った純の顔を見て吹き出す。口をあんぐりと開いていて、まるで漫画みたい。笑いながら、言葉を繋いだ。

「カレー作るよ。 ご飯はいっぱいあるし。ルーも買ってある。」

 自然と笑顔で言った自分に内心驚いたけど、純も相当びっくりした顔をしていた。

「お前、警戒心ゼロだな。」
「だって、自分は純の対象外でしょ?」

 純は男専門だって自分で言ってたじゃない。ゲイの友だちがいるのも、悪くないでしょ?


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